転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

100.乾いた感情1

エスターライヒ家のエントランスホールでは
多くの使用人が右往左往していた。
この街に常勤しているエスターライヒ家の騎士が
武装して、物々しい雰囲気を醸し出していた。

誠一は、使用人の1人を捕まえて、事情を問うた。

「元侯爵のダンブル様が反乱を起こしました。
どうやら失敗に終わったようですが、
加担した者やダンブル様の私兵が逃亡を試みて、
街中が大混乱です。
混乱に乗じて無頼の徒も暴れ回っているようです。
屋敷の防衛に我々も走り回っております」

そう言い残して、使用人は走り去っていった。

眼下の喧騒に冷ややかな視線を送り、冷笑する誠一。
そして、現在、屋敷を統括し、指揮する男の元に向かった。

　誠一は、ノックもせずに執務室の扉を開けた。

「無礼者」

「廃嫡者の出る幕はない。私室に戻っていろ」

「魔術師風情の指示を受けるいわれはない」

ミシャの両脇に控える騎士たちが一斉に非難の声をあげた。

「アルフレート様、ここにいる者たちは、皆、
あなたの領地での醜聞を存じております。
ただ長子というだけで、あなたを敬う者は皆無です。
お部屋に戻って大人しくしていなさい」
まるで領主のような尊大な態度で誠一に命令を
下すミシャであった。

物言わぬ誠一に更に言葉を重ねた。
「あなたの人となりを観察していると、
到底、醜聞のようなことを犯すようには思えません。
悪しき神に誑かされたのでしょう。
しかし、今は非常事態。
再びおかしな啓示を受けて、いたずらに混乱を
招くことは避けたのです」

誠一は心の中でせせら笑った。
やっと、先ほどから心にわだかまっていたことが
理解できた。

プレーヤーと接触したことで、この世界が
「ヴェルトゥール王国戦記」という
架空の世界であると明確に認識することができた。
NPCが何かごちゃごちゃと言っているが
所詮は造り物がほざいているだけにしか聞こえなかった。

「うるさい、黙れ。
死のうが生きようが大したことないだろ。
それより何人か護衛をつけろ。
魔術院に向かう。
ファウスティノに会う必要がある」

一同、誠一の酷薄な表情と言葉に押し黙ってしまった。

「おい、聞こえているだろう。さっさと人選をしろ」
NPCの名前を呼んだとろで
如何ほどの意味があろうか、そう思うと、
ミシャの名前すら呼ぶ気にならなかった。

「3人ほど護衛をつけます。
それでこの屋敷から出て行って貰えるのですね」
ミシャは誠一の言動から屋敷に居ない方が
プラスになると思い、護衛を付けて魔術院に
行って貰うことにした。
そして、道中で死のうがどうなろうとも
ミシャにとって、不利に働くことは無いと、
瞬時に判断した。