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113.帰郷5

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「宿に迷惑をかける訳にはいきませんね。
ちょっと表に出てきます」
誠一はそう言って、立ち上がって、
7面メイスを右手で掴んだ。

「よしっ!俺も行く。背中は任せろ」
勢いよく立ち上がると、愛用のハルバートを掴んだ。

「ってかアルの背中は宿になるでしょ。
宿と向き合って、ヴェルは何をするつもりなのよ」
鋭いつっこみをヴェルに送るシエンナであったが、
補助魔術を4人に展開していた。

ロジェとキャロリーヌも各々、武器を取った。

「うるせー雰囲気だよ、雰囲気。
シエンナ、あんまし前に出るなよ。
こいつを振り回す邪魔になる」

はいはいという感じを身振りで
示すシエンナであった。

「シエンナとキャロリーヌさんは、
出来る限り後方に控えていてください。
どうも嫌な予感がします。
ヴェル、最初に僕が話すから、
それまで手を出さないようにね、頼むよ」
どうにも緊張感のない面々に誠一が釘を刺した。

「さて、話はその位にして、そろそろ、表にでるぞ」
ロジェが場を締めて、動きだした。誠一たちも後に続いた。

「おう、出てきやがったか!」
誠一を見ると、ベイスが威嚇するように
剣を振り回していた。

「リゲルに会うから、
そこをどいてくれないか?」
ベイスを一瞥すると、
威嚇に怯む様子もなく誠一は言った。

「『さまー』リゲル様っーだろう、
言葉遣いに気を付けろよ。
現当主代理に対する口の利き方から
教えてやろうか。
長男ってだけでイキってんじゃねよ」
ベイスの取り巻きの連中が喝采をあげて、
侮蔑の言葉を誠一に送った。

ヴェルは誠一の隣で呆れていた。
そして、誠一を後押しするかのように
誠一の真後ろに立つロジェが誠一の肩を
軽く叩いた。

「こそこそと馬車に隠れている
リゲル本人から聞きましょう。
路を開けて、解散しないなら、少々痛い目に
遭って貰いますが、どうしますか?」

誠一の言葉は何の感銘も与えず、
ベイスたちを逆撫でするだけであった。

馬車の方から二度ほど、鈴がなった。

「当主代理のご了解がでたぞ。
野郎ども叩き潰せ!
奴らをひっ捕まえて、市中の晒し者にしろ」
ベイスたちは得物を振り上げて、
誠一たちに襲いかかった。

「アルフレート君、ヴェル。
技は禁止だ。昏倒させるに留めておけ。
後々が面倒だ」

誠一とヴェルは頷き、武器を構えた。

「おおおうぅ、一番槍は俺様、ベイスだ。
死ね、アルフレート!」
多少の怪我は当たり前、そんな気分でベイスは
剣を誠一に向かって、振り下ろした。
振り下ろされた剣を誠一は事も無げに躱すと、
ベイスの剣をメイスで叩き折った。

ベイスは、苦悶の表情でみっともなく呻き出した。
「ぐげげげぇ、ぐぼう、ぐぼっ、ぐぶぶぅぃ、げろぅ」
メイスの一撃を鳩尾に受けたようだった。
地面に倒れ、げろを辺り一面に吐いていた。

「アル、お前、容赦ないな。
じゃっ、俺も雑魚狩りしますか」
ヴェルのハルバートが呆然とする連中の足を薙ぎ、
派手に倒し、更に一撃を加えて、昏倒させた。

「なんだ、こりゃ、まるっきり張り合いがないじゃん」
一応、得物を構えて、応戦するような雰囲気であったが、
ベイスの醜態を見て、積極的に攻撃を加えようとする者は
皆無であった。

4、5人を昏倒させたところで、ロジェが止めた。
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