転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

153.遠征12

「アル、どうすんだこれ！
全く攻撃が通じないじゃんかよ」
立ち上がらずコロコロと転がりながら、
ヴェルが叫んだ。

誠一はヴェルが寒くないのだろうかと
しょうもないことを考えてしまった。

ほぼ啓示による能力向上以外の
魔術や狂化が解けてしまい、
力で圧倒することも難しいと判断していた。
のそりのそりと鈍重な動きで近づく魔人を
観察するも妙案は浮かびそうになかった。
スターリッジの暗殺術や猛毒が塗布されている短剣では、
恐らく誠一たちと同じ結果の焼き直しになるだろうと思った。

キャロリーヌの方を見ると、
大きく両手で×を作っていた。
どうやら体力と気力の限界のようだった。

先生の方を見ると、魔獣の核を漁ることに
夢中になっていた。確かにかなりの価値のある魔石が
手に入るが、今はそれどころでは
無さそうな気がしたが、あまりの真剣さに
声を失った誠一だった。

「アル、どうやら先生は、自分たちで
何とかしなさいということよ。
逆に言えば、何かしらの活路を見出しなさい、
それができると言うことよ」
シエンナも魔人を気にしながら先生の方に
目を向けていた。

「ヴェル、ラムデール。
こっちに来い！一旦、距離を取るぞ」
誠一たちは、一旦、魔人から距離を置いた。
「アル、こうなったら、先生の方へ誘導するぞ！
それしか手はない」
ヴェルが開口一番、叫んだ。

「うーん、現実的にそれが一番な気がするわ。
ヴェルに賛成」
シエンナがヴェルに賛成した。

「俺も賛成だ！さっさと行動に移すぞ。
アルフレート、いいだろ！」
ラムデールが誠一を急かした。

誠一は鈍重な魔人を良く観察した。
斬る、殴る、突くといった攻撃に
異常な耐性がある魔人に対して
果たして先生の技が有効なのだろうか。

片目の潰れた魔人は、もう一つの目で
誠一たちを捉えているようだった。
魔人の目は誠一たちの瞳と交錯することはなかった。
黒い瞳は全く動かずにいた。
どこを見ているのか誠一には全く理解が
及ばなかった。

正直、昆虫の目のようで気味が悪かった。
気味の悪いモノであったが、目があり、
鼻があり、口がある。

それは視界があり、臭いを感じ、
呼吸をすることであった。
そして、あの鈍重な動きであった。

「いや、先生の助けは借りない。僕らで倒す」
誠一は自信に満ちた声で3人に語り掛けた。

「おっっおう！いいぞ」
「何か策がありそうね、アル」

「御託はいい！アルフレート、さっさと話せ」

「シエンナの水魔術で窒息死させる。
水球であの魔人の顔を覆えば、それで終わりだ」
誠一にはその他に煙に巻く、口内に毒を
打ち込む等々を考えたが、一番、確実と思える方法を
選択した。