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152.遠征11

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「ぐぐう、死ねば同じか。貴様ら全員、道連れだ」
ぼこぼこ、魔人の身体が内側から、膨らみ始めた。
ぼこぼこ、絶え間なく膨らみ、体躯は段々と
大きくなっていたそして、
転がる魔人はトロルのようになった。

そこには魔人の面影は全くなかった。
焦点は定かでなく、虚空を見つめているようだった。
のそりと立ち上がると、潰れた筈の右腕を
振り上げ、誠一に向かって振り下ろした。
速さ自体はさほどでもなく、誠一は、難なく躱した。
魔人の拳は地面を叩きつけた。
凄まじい爆音と舞い上がる土煙、
地面には小さな穴が開いていた。

魔人の動きはとろく、誠一はメイスで
打撃を加えたが、顔を向けただけで、
また、拳を振り下ろした。

「なっ」
誠一は再度、打撃を加えるが、
鉄板でも殴りつけたような衝撃を感じ、
逆にメイスを弾き返された。

遠方から矢が飛来し、魔人の右目を潰した。
魔人は大して気にした様子もなく、矢を引き抜いて、
そこら辺に放り投げた。

「アル、離れて!魔術で攻撃するわ」
シエンナの声で誠一は大きく後退した。
どうやら魔物たちを倒したようだった。

「穿て、氷結の槍」
シエンナの周りに4本ほどの氷の槍が
創成されていた。
4本の槍は魔人に向かって飛来したが、
魔人にぶつかって、粉々に砕け散った。

「ちょっとぉ。どいうこと。アル、あれは何なのよ」

「さあ?上位魔人の本来の姿じゃないかな」
慌てるシエンナに対して、冷静に答える誠一だった。

「アル、シエンナ。どけぇー。
氷が駄目なら、火だ!
火なんだよぉーフレイムチャージぃー」
ヴェルが青空へかざしたハルバートの先端には、
灼熱の太陽の様な巨大な火球が魔術により発現していた。
周囲の冷たい空気は、熱き夏の様な温度に上昇していた。

誠一やシエンナは汗をかくほどであった。

「うおおおっー」
ヴェルは魔人に向かって突撃した。

「おっおい!」
誠一はあのまま、強大な火球を魔人に
ぶつけると思っていたため、ヴェルの突撃を
止めようとした。

あの技は、炎の力を振りまいてしまうため、
見かけほどの炎でのダメージは与えられなかった。
案の定、軽く魔人の体表を薄く焼いただけで、
誠一と同じような衝撃を受けて転がっていた。

魔人は、ヴェルに向けて拳を振り下ろそうとした。

「この馬鹿が。後先考えずに行動するな。
くそおぅー間に合え、パワーシフト」
ラムデールが両手で盾を持ち、魔人に向かって
体当たりをかました。

ヴェルの様に無様に転がりはしなかったが、
完全に勢いは止められた。
魔人は振り下ろそうとした腕を大きく横なぎに
振り回して、ラムデールを吹き飛ばした。

その隙にヴェルは、コロコロと転がり、危地を脱した。
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