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184.中等部昇格試験5
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シエンナは順位表を食い入るように見ていた。
歯を食いしばって、その結果を受け入れようと
自分を言い聞かせていた。
どんなに努力しても誠一を超えることができない。
今回は、会心の出来で、確実に首席を取れたと
思っていたが、蓋を開けてみれば、
依然、大きな差があった。
確実に差は縮まっていたが、卒業までに
彼を追い越せるのか不安であった。
各国の魔術師、在野の魔術師を問わず、
賢者と称される者たちの多くは、
学生時代よりその才を周囲に示していた。
無論、ある方面のみへ尖がった才能を
示す者もいたが、大半は圧倒的な才能と実力で
同期を圧倒していた。
賢者を目指すシエンナにとって、
誠一の人となりは好ましかったが、
首席である誠一の存在は疎ましかった。
誠一がどうやら、課題の内容を写して来て、
戻ってきたようだった。
彼に今の心情と表情を悟られまいと、
ぎこちなく声をかけた。
どうしても小さな声の震えだけは、
隠すことが出来なかった。
無論、それに気づかない誠一ではなかった。
「シエンナ、大丈夫?」
誠一の声は、やさしい声だった。
しかし、今のシエンナにとって、
彼の声は疎ましかった。
毎年、この時期、どうしても同じ感情に
覆われていた。
その才能で同世代を圧倒したリシェーヌ無き後ですら、
首席になれない。
その焦りと誠一に対する思いが上手く整理できず、
ついつい、邪険にしてしまった。
「なんともないよ。
私だって、いらっとすることくらいあるでしょ。
何よ!それが悪いの?
いつも大人ぶって、上から言わないでよ」
「あっ、ごめん」
誠一は、慌てて、謝った。
本当に申し訳なさそうであった。
シエンナはその表情を見て、感情に任せて、
自分のイラつきをぶつけてしまったことを
後悔してしまった。
彼にも首席を譲れない理由があることを
話してくれた。
そして、努力と実力でそれを維持している。
妬みや陰口などを意にも返さずに
邁進している結果だった。
堂々たる勝負の結果だと思ったが、
この結果は受け入れ難かった。
彼は困ったような表情でシエンナを
見つめていた。
そして、落ち着いたら、探索の件を
打ち合わせしようと言い残して、
この場を後にした。
あっ待って、その一言が言えなくて、
シエンナは去り行く誠一の背中を
ぼーっと見つめていた。
もっと、彼と話したい、一緒に居たい、
そう思う気持ちに素直になりたいと
思っても何でか、喉がカラカラで声がでなかった。
何だか涙をこぼしそうで歯を食いしばった。
突然、誠一がシエンナの方を振り向いた。
シエンナは今の顔を見られたくなく、慌てて、
両手の袖で顔を拭った。
後ろから、廊下にデカい声が響いた。
歯を食いしばって、その結果を受け入れようと
自分を言い聞かせていた。
どんなに努力しても誠一を超えることができない。
今回は、会心の出来で、確実に首席を取れたと
思っていたが、蓋を開けてみれば、
依然、大きな差があった。
確実に差は縮まっていたが、卒業までに
彼を追い越せるのか不安であった。
各国の魔術師、在野の魔術師を問わず、
賢者と称される者たちの多くは、
学生時代よりその才を周囲に示していた。
無論、ある方面のみへ尖がった才能を
示す者もいたが、大半は圧倒的な才能と実力で
同期を圧倒していた。
賢者を目指すシエンナにとって、
誠一の人となりは好ましかったが、
首席である誠一の存在は疎ましかった。
誠一がどうやら、課題の内容を写して来て、
戻ってきたようだった。
彼に今の心情と表情を悟られまいと、
ぎこちなく声をかけた。
どうしても小さな声の震えだけは、
隠すことが出来なかった。
無論、それに気づかない誠一ではなかった。
「シエンナ、大丈夫?」
誠一の声は、やさしい声だった。
しかし、今のシエンナにとって、
彼の声は疎ましかった。
毎年、この時期、どうしても同じ感情に
覆われていた。
その才能で同世代を圧倒したリシェーヌ無き後ですら、
首席になれない。
その焦りと誠一に対する思いが上手く整理できず、
ついつい、邪険にしてしまった。
「なんともないよ。
私だって、いらっとすることくらいあるでしょ。
何よ!それが悪いの?
いつも大人ぶって、上から言わないでよ」
「あっ、ごめん」
誠一は、慌てて、謝った。
本当に申し訳なさそうであった。
シエンナはその表情を見て、感情に任せて、
自分のイラつきをぶつけてしまったことを
後悔してしまった。
彼にも首席を譲れない理由があることを
話してくれた。
そして、努力と実力でそれを維持している。
妬みや陰口などを意にも返さずに
邁進している結果だった。
堂々たる勝負の結果だと思ったが、
この結果は受け入れ難かった。
彼は困ったような表情でシエンナを
見つめていた。
そして、落ち着いたら、探索の件を
打ち合わせしようと言い残して、
この場を後にした。
あっ待って、その一言が言えなくて、
シエンナは去り行く誠一の背中を
ぼーっと見つめていた。
もっと、彼と話したい、一緒に居たい、
そう思う気持ちに素直になりたいと
思っても何でか、喉がカラカラで声がでなかった。
何だか涙をこぼしそうで歯を食いしばった。
突然、誠一がシエンナの方を振り向いた。
シエンナは今の顔を見られたくなく、慌てて、
両手の袖で顔を拭った。
後ろから、廊下にデカい声が響いた。
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