転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

447.闇の勢力2

「ふう、どうやら諦めたようだ」

「アル、どうしたの？」

シエンナの言葉にようやく反応した誠一だった。

「3者とも不躾に鑑定眼を使って来たから、抵抗していたのさ。
かなり高レベルの鑑定眼だけど、学院長には遥か及ばなかったら
何とかなったよ」
誠一は汗を拭った。

「逆に彼らを鑑定できたの？」

「まあ、かなり集中しなければならないけど、恐らく可能かな。
でもまあ、話す前から不快にさせてもしょうがないしね」

突然、幾人かの倒れる音がした。
どさりどさりと聞えると、そのまま道案内の盗賊たちは動かなくなった。

「なっ、一体なぜ」
駆け引きのない素の言葉を発する誠一であった。

「しれたことよ。こいつらは所属して日が浅い。
甘言に惑わされて、この砦の存在を敵対勢力に売るかもしれぬ」

その理屈で言えば、自分たちも殺されるはず
と内心、誠一は思った。
恐らく今後の話の主導権を握るための奴らの
示威行動の犠牲者だなと判断した。

誠一は、人が目の前で倒れても眉一つ動かさずに
物事を考察する自分に驚いていた。
この世界に馴染んできたのだろうか、
そして、人の命の軽さに慣れて来たのだろうか。
誠一の心を様々な思いが逡巡していた。

「アルフレート君、物思いに耽るもいいが、
今は目の前のことに集中だ」
ロジェに叱咤されて、我に返る誠一だった。

「アル、ぼんやりするな。交渉も戦いだぞ。気合入れろ」
ヴェルが勇み、暗殺者たちを見据えていた。

「ふひゃひゃひゃ。小僧、面白い物言いだな。交渉などない。
おまえらは質問に応えれば、いいのだ。それで終いだ。
男どもの奴隷と慰みモノに女どもは慰みモノにするだけ」

「くきゃきゃきゃ。小僧、選択肢を違えたのだよ。
おまえさんの選択肢の積み重ねで今、ここにおる。
今後は選択をすることも考えることもない
気楽な人生が待っておろう」

「ぴきょきょきょ。小僧、威勢だけでは何も起きぬ。
内心の焦りと恐怖が手に取るようにわかるぞい。
恐れ慄いていることが手に取るようにわかろうぞ」

誠一はヴェルを見て、感心してしまった。
まったく気圧されていなかった。
不思議そうな表情で暗殺者を見つめていた。
理解した上でのことなのか、全く彼らの言葉が頭に
入っていない上でのことか誠一には判断つかなかった。

「ヴェル、彼等の言っていること、理解できた？」
ヴェルは誠一の言葉に我が意を得たりと笑った。

「そうか、アル、おまえもか。
ほんと何が言いたいのかよくわからん。
結局、どうしたいの？」
少しヴェルの理解力を心配する誠一であった。

「ほんと、ヴェルのこの態度には癪だけど、助かるわ」
言葉とは裏腹にシエンナはため息をついていた。
暗殺者たちのおどろおどろしい雰囲気は、
喜劇の１幕のようになり果ててしまった。