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504.使節団17
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使節団は兵が襲いかかって来ない幸運に
若干の疑問を持ちつつも全速で駆け抜けよとした。
使節団の団員達の前には、兵の見当たらない地平線が広がっていた。
あと少しあと少しでジェイコブ軍を抜けることができる。
絶体絶命の状況から一転、生きて帰れる。
その時、突然、先頭を走る団員が落馬した。
そして、次々に団員が落馬し始めた。
混乱の極致にあったジェイコブ軍から少ないながらも矢が放たれた。
それを見たジェイコブは叫んだ。
「矢だ。矢を放て。持っていないものは石でも拾って投げろ」
それは安全を確保された状態からの一方的な射殺であった。
そうなると、ジェイコブ率いる兵は、強気を前面に
押し出して攻撃し始めた。
無秩序な攻撃であったが、大半の使節団員を射殺した。
ジェイコブ軍の囲いを抜け出した使節団員に無傷な者はなく、
酷い怪我を負っていた。
王都に着く前に息絶えるだろうと思い、
ジェイコブは追撃せずに軍を留めた。
兵は息絶えた使節団員の鎧や剣、持ち物に群がり取り合っていた。
結果、戦闘より仲間同士での諍いで怪我した者の方が
圧倒的に多くなってしまった。
「アルフレートは確実にあの群れにいなかったよな」
ジェイコブは左右の者に確認した。
「はっ、王ヨ、彼奴はいませんでした。
恐らく北関近くのゾンビどもに囲まれているかと」
「そうかそうか、それなら、奴の事だ。抜けてくるだろうよ。
今の作戦でアルフレートを生け捕りにする。
確か陛下からの情報では、キャロリーヌとシエンナが同行しているはずだ。
女二人は生け捕りだ。アルフレートともう一人の男の生死は問わん」
ジェイコブは不敵な笑い声を上げて、兵たちに指示を与えた。
「ジェイコブ様、恐れながら申し上げます。
アルフレートは生け捕れとの陛下のお言葉です。
他の者は生死を問わずであったかと」
ダンブルからのお目付け役として、
バラムがジェイコブに随行していた。
先ほどの最初の矢による攻撃は
バラム配下の者たちによるものであった。
「分かっている。ノリだよノリ!
女がいないとなるとどうにも士気が上がらない。
見ろ、女の生け捕りを伝えたら、歓声があがっているだろ」
バラムは御意と頭を下げると兵たちの中に紛れ込んでいった。
「王ヨ、何故あのような小うるさい男の生かしておくのですか!」
「王ヨ、あのような監軍は全員、殺してから我らの力を示しましょう」
「王ヨ、我々はダンブルの対等な立場の同盟者です。
目にモノを見せてやりましょう」
使節団殲滅で意気揚々として、大言壮語を吐く取り巻き達を
ジェイコブは慌てて窘めた。
バラムに聞かれてはまずいと焦り、周囲を注視した。
幸にバラムの姿は見えなかった。
「おまえたち黙れ。皇帝陛下は王の上に立つお方だ。
王が陛下に従うのは当然の事」
聞き慣れない皇帝と言う言葉にいまいち取り巻き達の反応が悪かった。
彼らにとって皇帝という新語がどの程度の重みがあるか理解できなかった。
慣れ親しんだ王という言葉の重みは彼らにとって分かりやすく、
王を冠するジェイコブに付き従っていた。
ジェイコブの真剣な表情に一応、取り巻き達は納得したようで、
それ以上に騒ぎ立てることを止めた。
王の逆鱗に触れることだけは避けたいようであった。
ジェイコブの残忍さは誰しもが知るところであった。
若干の疑問を持ちつつも全速で駆け抜けよとした。
使節団の団員達の前には、兵の見当たらない地平線が広がっていた。
あと少しあと少しでジェイコブ軍を抜けることができる。
絶体絶命の状況から一転、生きて帰れる。
その時、突然、先頭を走る団員が落馬した。
そして、次々に団員が落馬し始めた。
混乱の極致にあったジェイコブ軍から少ないながらも矢が放たれた。
それを見たジェイコブは叫んだ。
「矢だ。矢を放て。持っていないものは石でも拾って投げろ」
それは安全を確保された状態からの一方的な射殺であった。
そうなると、ジェイコブ率いる兵は、強気を前面に
押し出して攻撃し始めた。
無秩序な攻撃であったが、大半の使節団員を射殺した。
ジェイコブ軍の囲いを抜け出した使節団員に無傷な者はなく、
酷い怪我を負っていた。
王都に着く前に息絶えるだろうと思い、
ジェイコブは追撃せずに軍を留めた。
兵は息絶えた使節団員の鎧や剣、持ち物に群がり取り合っていた。
結果、戦闘より仲間同士での諍いで怪我した者の方が
圧倒的に多くなってしまった。
「アルフレートは確実にあの群れにいなかったよな」
ジェイコブは左右の者に確認した。
「はっ、王ヨ、彼奴はいませんでした。
恐らく北関近くのゾンビどもに囲まれているかと」
「そうかそうか、それなら、奴の事だ。抜けてくるだろうよ。
今の作戦でアルフレートを生け捕りにする。
確か陛下からの情報では、キャロリーヌとシエンナが同行しているはずだ。
女二人は生け捕りだ。アルフレートともう一人の男の生死は問わん」
ジェイコブは不敵な笑い声を上げて、兵たちに指示を与えた。
「ジェイコブ様、恐れながら申し上げます。
アルフレートは生け捕れとの陛下のお言葉です。
他の者は生死を問わずであったかと」
ダンブルからのお目付け役として、
バラムがジェイコブに随行していた。
先ほどの最初の矢による攻撃は
バラム配下の者たちによるものであった。
「分かっている。ノリだよノリ!
女がいないとなるとどうにも士気が上がらない。
見ろ、女の生け捕りを伝えたら、歓声があがっているだろ」
バラムは御意と頭を下げると兵たちの中に紛れ込んでいった。
「王ヨ、何故あのような小うるさい男の生かしておくのですか!」
「王ヨ、あのような監軍は全員、殺してから我らの力を示しましょう」
「王ヨ、我々はダンブルの対等な立場の同盟者です。
目にモノを見せてやりましょう」
使節団殲滅で意気揚々として、大言壮語を吐く取り巻き達を
ジェイコブは慌てて窘めた。
バラムに聞かれてはまずいと焦り、周囲を注視した。
幸にバラムの姿は見えなかった。
「おまえたち黙れ。皇帝陛下は王の上に立つお方だ。
王が陛下に従うのは当然の事」
聞き慣れない皇帝と言う言葉にいまいち取り巻き達の反応が悪かった。
彼らにとって皇帝という新語がどの程度の重みがあるか理解できなかった。
慣れ親しんだ王という言葉の重みは彼らにとって分かりやすく、
王を冠するジェイコブに付き従っていた。
ジェイコブの真剣な表情に一応、取り巻き達は納得したようで、
それ以上に騒ぎ立てることを止めた。
王の逆鱗に触れることだけは避けたいようであった。
ジェイコブの残忍さは誰しもが知るところであった。
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