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743.領土防衛戦12
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「そのあの皆様の代表の方はいませんか?
そっそう、村長的な立場の方はいませんか?」
民は互いに顔を見合わせていた。
他の住民たちに押し出されるように一人の老人が
誠一たちの前に現れた。
誠一を盗み見る様に老人は、おずおずと顔を上げた。
どう対処していいか誠一は分からなかった。
取り敢えず誠一は出来る限り自然な笑みを浮かべる様に
努力して、話し掛けた。
「何かお困りのことはありませんか?」
「ひいっ、お許しを。
私たちは決して王国を裏切った訳ではないのです。
あの男に従わないと何をされるか
分かったものではなかったのです」
額を土に擦り付けて、必死に懇願していた。
誠一は本当にどうしていいか分からずに困惑してしまった。
シエンナやヴェルも同じようだった。
サリナが誠一の隣に立って、耳打ちした。
誠一はサリナの助言に頷いた。
「王国はあなた方を罰することはありません。
王を僭称するジェイコブ・ジェルミラから
解放するために我々は派遣されたのです。
しかし、我々の兵力は過少。みなさんの協力が必要です」
眉目秀麗な誠一が自信満々に宣誓すると、
多くの村人が誠一を仰ぎ見た。
一部、 不貞腐れたような表情をする村人も見受けられた。
恐らくデュプレに協力して、甘い汁を啜っていた者たちだろうと
誠一は思った。素早くその連中を把握して、誠一は続けた。
「見た限りデュプレの搾取は非常に惨いものですね。
これでは今年の収穫を得るまで生きることが
難しく感じられます。取り急ぎ王国より食料を提供します。
それとまずは、デュプレの屋敷まで案内して貰えないでしょうか?」
村長らしき老人が立ち上がり、
誠一を案内するために歩き始めた。
村人たちはすぐさま道を譲り、
誠一たちに向かって頭を下げた。
誠一は老人がふらつく度に支えた。
老人は恐縮しきりだった。
あまりにも危なっかしいために誠一は老人を背負った。
しかし、この場では何も言わなかったが、
シエンナとサリナは眉を顰めた。
ヴェルとアミラは、道案内が終わった後で老人を
迎えるための村人を呼びに戻った。
「ここがデュプレの館か」
誠一は嘆息した。
無論、テルトリアに建てられているエスターライヒ家の居城と
比べる術はないが、少領のデュプレには豪華すぎる造りに
誠一は感じた。
館は蛻の殻であった。荒らされた形跡もなかった。
誠一の気分を察したのか背負われる老人が話し出した。
「デュプレ様には近親縁者はございませんでした。
愛人も囲っておらずにお一人で住んでおられました」
一体何の目的をもって一人でここに住んでいたのか
誠一にはさっぱり想像できなかった。
「ありがとう。ここまでで大丈夫です。
後ほどヴェルとアミラが村の住人を
連れてくるかと思いますので一緒に戻ってください」
老人は頭を下げると近くの木陰に腰を下ろした。
そして、誠一に向かって頭を下げ続けた。
そっそう、村長的な立場の方はいませんか?」
民は互いに顔を見合わせていた。
他の住民たちに押し出されるように一人の老人が
誠一たちの前に現れた。
誠一を盗み見る様に老人は、おずおずと顔を上げた。
どう対処していいか誠一は分からなかった。
取り敢えず誠一は出来る限り自然な笑みを浮かべる様に
努力して、話し掛けた。
「何かお困りのことはありませんか?」
「ひいっ、お許しを。
私たちは決して王国を裏切った訳ではないのです。
あの男に従わないと何をされるか
分かったものではなかったのです」
額を土に擦り付けて、必死に懇願していた。
誠一は本当にどうしていいか分からずに困惑してしまった。
シエンナやヴェルも同じようだった。
サリナが誠一の隣に立って、耳打ちした。
誠一はサリナの助言に頷いた。
「王国はあなた方を罰することはありません。
王を僭称するジェイコブ・ジェルミラから
解放するために我々は派遣されたのです。
しかし、我々の兵力は過少。みなさんの協力が必要です」
眉目秀麗な誠一が自信満々に宣誓すると、
多くの村人が誠一を仰ぎ見た。
一部、 不貞腐れたような表情をする村人も見受けられた。
恐らくデュプレに協力して、甘い汁を啜っていた者たちだろうと
誠一は思った。素早くその連中を把握して、誠一は続けた。
「見た限りデュプレの搾取は非常に惨いものですね。
これでは今年の収穫を得るまで生きることが
難しく感じられます。取り急ぎ王国より食料を提供します。
それとまずは、デュプレの屋敷まで案内して貰えないでしょうか?」
村長らしき老人が立ち上がり、
誠一を案内するために歩き始めた。
村人たちはすぐさま道を譲り、
誠一たちに向かって頭を下げた。
誠一は老人がふらつく度に支えた。
老人は恐縮しきりだった。
あまりにも危なっかしいために誠一は老人を背負った。
しかし、この場では何も言わなかったが、
シエンナとサリナは眉を顰めた。
ヴェルとアミラは、道案内が終わった後で老人を
迎えるための村人を呼びに戻った。
「ここがデュプレの館か」
誠一は嘆息した。
無論、テルトリアに建てられているエスターライヒ家の居城と
比べる術はないが、少領のデュプレには豪華すぎる造りに
誠一は感じた。
館は蛻の殻であった。荒らされた形跡もなかった。
誠一の気分を察したのか背負われる老人が話し出した。
「デュプレ様には近親縁者はございませんでした。
愛人も囲っておらずにお一人で住んでおられました」
一体何の目的をもって一人でここに住んでいたのか
誠一にはさっぱり想像できなかった。
「ありがとう。ここまでで大丈夫です。
後ほどヴェルとアミラが村の住人を
連れてくるかと思いますので一緒に戻ってください」
老人は頭を下げると近くの木陰に腰を下ろした。
そして、誠一に向かって頭を下げ続けた。
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