転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

文字の大きさ
892 / 978

884. 新たな展開7

しおりを挟む
キャロリーヌは依頼表を受け取り、目を通した。
そして気づかわしげに誠一を見た。
それに気づいた誠一はできるだけキャロリーヌの
心配を除こうと笑みを浮かべた。

「キャロ、大丈夫だよ。
生涯、慣れることはなかもれしない。
まあ、でもそれなりに経験を積んでいるし、
あれより酷い状況でも大丈夫だったから。
それにさ、キャロが夜に慰めてくれるしね」

「うっうん、アルが大丈夫っていうなら」
まだ心配そうなキャロリーヌの頭を
誠一がわしゃわしゃと撫でた。
ようやくキャロリーヌの顔に笑顔が戻った。
キャロリーヌは左手の薬指の指輪に右手を添えていた。

「むっむむ、分かったわよ。もう、ペットじゃないんだから!
それにちょっと周りの人たちも見ているから恥ずかしいよ」
周囲の視線は、興味津々から温かなものに変わっていた。

2人は並んで歩き始めた。

「バルドロね。癒し手としての実力は申し分ないわ。
でも冒険者となると難しいかもでしょ。
クランの所属が大きくなると事務職も
必要になるけど、バルドロじゃそれも難しい。
もちろん、事務処理能力は申し分ないわ。
でもあの愛想となるとクランの雰囲気がでしょ」
キャロリーヌは誠一の意見を待った。
暫く無言で二人は歩いた。

「要は使いどころかな。
アルがそこをどう考えているかだと思うけど」
沈黙に耐えかねたキャロリーヌは、
言葉を付け加えた。

「キャロの言う事は最もだよ。
あの受付の態度を見ると、流石にクランで
事務管理をお願いするに気が引ける」
誠一が悩まし気に腕を組んだ。

「ぷっ。アル、そんな悩んでいるような雰囲気を
出してからに、全くもう。
どうせ何か案があるんでしょ」

「彷徨う光銀の騎士」
誠一がぽつりと呟いた。

キャロリーヌの眉間に皺が寄った。
「光銀の欠片は、所有者の知識を吸収し、一つに集う。
伝えられる昔話は、確かそんな話だったよね。
その辺の伝説は魔術院で学んでるんだっけ?」

光銀の欠片は、欠損した身体の一部を
補う事ができるが、じわりじわりと所有者の身体を侵食し、
知識と経験を貪り奪い取り、騎士の元へ
帰還すると伝承で言い伝えられていた。

眉唾な話だったが、吟遊詩人によって
語り伝えられている太古の物語の一つであった。
歴史書にも幾度となく現れる魔道具の一種であった。
しかしその製法・能力・製作された意図、
製作者に関してはほとんど伝わっていなかった。
誠一は誰かが有料ガチャで得たアイテムか
ゲームの運営会社が企図した何かしらの
イベントのクリア報酬だろう程度に考えていた。

「キャロ、あくまで伝承だから。
大森林に魔物を狩りに行くことになれば、
古代帝国の遺跡についでに行けるから。
そこで光銀の騎士へ遭遇した時に
左脚を奪うだけだよ。
それに推測だけど、真っ当でない魔術師や
闇の勢力に潜む連中は、光銀の特性を
利用しようと一部を持ち帰って、
実験を重ねていると思うよ。
光銀自体の目撃情報は、探すと結構、
見つかるしね」

「まーアルに任せるわ。
あの偏屈者の実力は確かに折り紙付きだし。
良いと思うわ」

誠一は内心、反対されると
思ってためにホッとした。
「ありがとう、キャロ。
クランのみんなを説得する時、手伝って欲しい」

「大丈夫大丈夫。
反対するメンバーはいないと思うよ。
難色を示すとしたら、バルドロを
あまり知らないメンバーかなあ。
あっ、そうなるとバルドロに会ったら、
反対するかもね」
誠一とキャロリーヌは顔を見合わせて、
互いに笑った。
二人の笑う表情は、一層周囲の注目を集める事となった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

処理中です...