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3 お慶
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部屋で土方が監察方山崎の報告を受けていると、
総司が部屋へ行ってきた。
「近藤さんから、あの場所を聞きましたよ」
土方が厳しい顔で言った。
「山崎君から別件の報告を受けている。後にしろ」
総司、山崎に頭を下げて部屋を出た。
「失礼」
土方は話に戻った。
「五条通りの京松阪へ、新選組と称する男二人が御用金を要求に行った。
おかしいと思った番頭が手代を屯所へ走らせた、と言うことだな」
「はい、調べたところ、
隊士で京松阪へ御用金で行ったものはないとわかりました」
「うむ、それで斎藤ら五名を店へ走らせたのか」
「男たちは女将を人質に離れへ閉じ籠り、千両を要求しています」」
「悪い例を作る。突入を強行して二人を斬れ」」
「その場合、女将は無事ではありませんが」
「仕方あるまい!新選組を騙る者の末路だ」
頭を下げる山崎。
「斎藤たちにそう指示します」
立ち上がろうとする山崎に言う土方。
「待て!」
山崎、座りなおす。
「京松阪屋と言ったな!」
「はい」
「俺が行く」
兼定を手に部屋を出て行く土方。
山崎が後を追う。
総司が廊下の壁に寄りかかって、それを見送る。
「土方さん、なんか忙しくなっちまったな」
五条通りに面した京松坂屋に着くと、
店は閉められ周囲を奉行所の捕り方たちが見張っいていた。
斎藤と富山、宮川、越智の四人が中庭越しに離れを見張っていた。
土方を見るなり斎藤が言った。
「山崎から聞いた話と、だいぶ違いますよ」
「どう言うことだ」
「離れに潜むのは三人で、首謀者は緒方城介という店が雇った用心棒です」
「なにィ!堅気の大店がなぜ用心棒を!」
「最近流行りの御用金対策です。彼らが睨みを利かせていれば、
押し借りの不逞浪士は近づかない」
「うむ、何百両とたかられる御用金からすれば、用心棒代などたかが知れてる」
「その用心棒が、なぜ女将を人質に離れへこもる!」
「彼らは江戸へ戻るので、手切れ金を店の主人に要求した。その額が一千両!」
「吹っかけたもんだな!」
「番頭が新選組に助けを求め、こんな騒ぎになつた」
「では隊士はいないのか」
「いないです」
「立花城介というのは何者だ」
「ここの女将お慶の兄貴です」
土方、目を見張る。
「お慶だと!!お慶がここの女将なのか!」
「ええ、主人総右衛門の嫁です」
「ここの主人は、確か六十過ぎだったな」
「お慶は三十前です」
土方、離れへ向かって歩き出す。
斎藤が叫ぶ。
「三人は相手です!俺たちも行きます」
「来るな!俺一人でいい」
見事な日本庭園を横切り、奥の離れへ向かう土方。
離れの入口の戸を開け、無言で中へ入って行く。
隠居所として贅を尽くした建物で、
中にはいくつも部屋がある。
廊下を奥へ進む土方。
いきなり左手の部屋から、侍が斬りかかって来る。
土方、腰を沈め刀の柄で水月へ当て身をする。
呻いて倒れる侍。
土方の背後から上背のある侍が、斬り込んで来る。
歩きながら素早く抜刀し、侍の胴を抜く土方。
侍が音もなく崩れる。
正面の居間らしい部屋にお慶と立花がいる。
お慶が土方を見て叫ぶ。
「歳三さん!!」
立花が言う。
「知り合いか」
「江戸の上野松坂屋で一緒だった」
せせら笑う立花。
「丁稚か!丁稚小僧が、なぜ京にいる」
土方、立花に言う。
「新選組の土方だ!」
驚愕して青ざめる立花。
「新選組!!」
「妹のことを思うなら、この場で腹を切れ!
そうすれば、まだお慶は店の女将でいられる」
「何が女将だ!耄碌亭主の下の世話してるだけじゃねぇか!」
立花、喚く。
「散々こき使っといて、江戸へ戻ると言ったらそのまま放りだそうとしやがった!手切れ金千両は当然だ!」
「お前が腹を切らなければ、残されたお慶がここに居られなくなる!介錯してやる。この場で腹を切れ!」
たまらなくなって言うお慶。
「歳三さん!!許してあげて!」
「いや、少なくとも兄は武士の格好をした二本差しだ!
武士として腹を斬り、筋を通せば店は許す!」
蒼白になる立花。
総司が部屋へ行ってきた。
「近藤さんから、あの場所を聞きましたよ」
土方が厳しい顔で言った。
「山崎君から別件の報告を受けている。後にしろ」
総司、山崎に頭を下げて部屋を出た。
「失礼」
土方は話に戻った。
「五条通りの京松阪へ、新選組と称する男二人が御用金を要求に行った。
おかしいと思った番頭が手代を屯所へ走らせた、と言うことだな」
「はい、調べたところ、
隊士で京松阪へ御用金で行ったものはないとわかりました」
「うむ、それで斎藤ら五名を店へ走らせたのか」
「男たちは女将を人質に離れへ閉じ籠り、千両を要求しています」」
「悪い例を作る。突入を強行して二人を斬れ」」
「その場合、女将は無事ではありませんが」
「仕方あるまい!新選組を騙る者の末路だ」
頭を下げる山崎。
「斎藤たちにそう指示します」
立ち上がろうとする山崎に言う土方。
「待て!」
山崎、座りなおす。
「京松阪屋と言ったな!」
「はい」
「俺が行く」
兼定を手に部屋を出て行く土方。
山崎が後を追う。
総司が廊下の壁に寄りかかって、それを見送る。
「土方さん、なんか忙しくなっちまったな」
五条通りに面した京松坂屋に着くと、
店は閉められ周囲を奉行所の捕り方たちが見張っいていた。
斎藤と富山、宮川、越智の四人が中庭越しに離れを見張っていた。
土方を見るなり斎藤が言った。
「山崎から聞いた話と、だいぶ違いますよ」
「どう言うことだ」
「離れに潜むのは三人で、首謀者は緒方城介という店が雇った用心棒です」
「なにィ!堅気の大店がなぜ用心棒を!」
「最近流行りの御用金対策です。彼らが睨みを利かせていれば、
押し借りの不逞浪士は近づかない」
「うむ、何百両とたかられる御用金からすれば、用心棒代などたかが知れてる」
「その用心棒が、なぜ女将を人質に離れへこもる!」
「彼らは江戸へ戻るので、手切れ金を店の主人に要求した。その額が一千両!」
「吹っかけたもんだな!」
「番頭が新選組に助けを求め、こんな騒ぎになつた」
「では隊士はいないのか」
「いないです」
「立花城介というのは何者だ」
「ここの女将お慶の兄貴です」
土方、目を見張る。
「お慶だと!!お慶がここの女将なのか!」
「ええ、主人総右衛門の嫁です」
「ここの主人は、確か六十過ぎだったな」
「お慶は三十前です」
土方、離れへ向かって歩き出す。
斎藤が叫ぶ。
「三人は相手です!俺たちも行きます」
「来るな!俺一人でいい」
見事な日本庭園を横切り、奥の離れへ向かう土方。
離れの入口の戸を開け、無言で中へ入って行く。
隠居所として贅を尽くした建物で、
中にはいくつも部屋がある。
廊下を奥へ進む土方。
いきなり左手の部屋から、侍が斬りかかって来る。
土方、腰を沈め刀の柄で水月へ当て身をする。
呻いて倒れる侍。
土方の背後から上背のある侍が、斬り込んで来る。
歩きながら素早く抜刀し、侍の胴を抜く土方。
侍が音もなく崩れる。
正面の居間らしい部屋にお慶と立花がいる。
お慶が土方を見て叫ぶ。
「歳三さん!!」
立花が言う。
「知り合いか」
「江戸の上野松坂屋で一緒だった」
せせら笑う立花。
「丁稚か!丁稚小僧が、なぜ京にいる」
土方、立花に言う。
「新選組の土方だ!」
驚愕して青ざめる立花。
「新選組!!」
「妹のことを思うなら、この場で腹を切れ!
そうすれば、まだお慶は店の女将でいられる」
「何が女将だ!耄碌亭主の下の世話してるだけじゃねぇか!」
立花、喚く。
「散々こき使っといて、江戸へ戻ると言ったらそのまま放りだそうとしやがった!手切れ金千両は当然だ!」
「お前が腹を切らなければ、残されたお慶がここに居られなくなる!介錯してやる。この場で腹を切れ!」
たまらなくなって言うお慶。
「歳三さん!!許してあげて!」
「いや、少なくとも兄は武士の格好をした二本差しだ!
武士として腹を斬り、筋を通せば店は許す!」
蒼白になる立花。
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