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2 池田屋騒動報償金
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土方は賄い方が用意してくれた遅い夕飯を、自室で食べていた。
前に総司が寝転んでいる。
総司の食事の速度は他の隊士より、二倍は早い。
とっくに大部屋で平隊士たちと食事を終えて、ここへ来ているのだ。
土方は食事中の目の前で、彼が寝転んでいるのが気にくわない。
「俺たちの給金は、会津経由で幕府から出ているんでしたよね」
月に隊士一人三両(約三十万円)。
独り身の総司が普通に任務をすれば、これは十分な額だ。
飯も寝るところも隊が提供してくれる。
他の隊士たちに大金の御用金が要るのは、島原で遊ぶためだ。
御用金として得た金のほとんどが島原で消える。
芹沢亡き後、特に近藤が派手に島原へ通いだした。
京へ来て近藤は人が激変した、と総司は思う。。
四、五人の女を囲っていて、江戸にもいると聞く。
江戸に女おいて、いつ会うんだよ!
「近藤さんて本当は、こんなやつだったんだ!見損なった!俺は女郎買いに京へ着たんじゃない!」
「じゃ、何しに来た」
黙り込む総司。
「どうした ? 」
「目的なんてない!土方さんや近藤さんたちが来たから、ついて来た」
「池田屋で近藤さんは長州浪士の二十人斬りをやった。彼には派手に遊ぶ権利がある」
「人を斬って女を抱いて、また人を斬って女を抱いて!いやですよ、俺そんな生き方!」
土方、飯に茶をかけて湯漬けで食う。
「たまにはお前も島原へ行って見ろ。いいもんだぞ」
「土方さんの本音は分かってる。御用金で、隊士の頭数だけスナイドル銃を揃えるつもりですよね」
笑っていた土方が真顔になる。
「それが新選組の生命線だからだ!ところが、いざ武器を買うとなると売ってくれるやつがいない!刀剣屋は山ほどあるってのに!」
「そりゃそうだ。街中でおおっぴらに新式鉄砲売ってるわけがない」
「京大坂には一軒もない。新式銃は密売でしか手に入らんのか!」
「武器商人てやつでしょう」
「戦さは金だ。薩摩、長州、肥後、佐賀を見ろ。抜け荷で溜め込んだ法外な金で、密売屋からスナイドルやアームストロング砲を買っている」
「長崎か長州まで行かなきゃ、ダメじゃないですか」
「新選組がそんなとこまでスナイドルを買いに行ったら、生きちゃ戻れん」
「そうですよね!西国では新選組は目の敵だ」
近藤が襖を開けて廊下から入って来る。
驚く二人。
「近藤さん・・・!」
土方に言う近藤。
「話がある」
「じゃ、俺はこれで・・・」
近藤、逃げるように腰を浮かせる総司にいう。
「お前もいろ!」
総司、仕方なくつぶやいて座り直す。
「さっきの、聞こえたのかな」
土方の前の箱膳を脇へ退け、そこへあぐらをかく近藤。
「今日、二条城で土佐の後藤象二郎と会った。彼から妙な依頼を受けた。歳さんの意見が聞きたい」
「伺います」
「土佐の元浪士で坂本竜馬というのがいる」
「知ってます。最近、いろいろ話題の多い男ですよ」
「大政奉還、薩長連合を画策しているという噂のある男だ」
「で、その竜馬がどうしました」
「命を狙われている!今夜にも危ないと言うのだ」
驚く総司。
「新選組で護ってくれてんですか!」
「そうだ。相手は薩摩、長州、土佐、肥後、肥前・・・要するに勤王攘夷を叫ぶ藩すべてだ」
仰天する土方と総司。
「なんでですか!彼はやつらが先頭に押し立てた、いわば英雄ですよ!」
思わず土方が叫ぶ。
「彼は武器商人グラバーの代理人として、いま述べたすべての西国諸国へ最新兵器を供給した男だ!」
「西国諸国の英雄が、なぜ命を狙われるんです!」
「ただ一つ、彼がやつらと決定的に違うところがある。それを西郷も木戸も大久保も公家の岩倉も許せんのだ!」
「なんですか!違いとは!」
「佐幕だ!徳川家を潰さず、公武合体で新政府に徳川も参加させろと言うのが、竜馬の狙いだ!」
「そりゃ、西郷などは顔色を変えて怒るでしょう!長州、薩摩は江戸を焼き払うつもりですから」
総司が言う。
「新選組が助けなくても、彼は海援隊とい強力な部隊を持ってるはずだ!」
「配下すべてが、竜馬と反対意見だったら・・・!」
「いまや竜馬は四面楚歌だ!あれだけの見識と実行力をもちながら、周囲に味方が一人もいない!命さえ危ない!」
張り切る総司。
「やりましょう!敵の真っ只中で、公儀を擁護してる!俺、そう言う男好きです。俺と土方さんだけでやります。他の隊士は要らない」
「よし、話は決まった」
近藤、腰をあげる。
「やつの隠れ家を、後で教えてやる」
近藤を引き止める土方。
「総司は外せ。俺は近藤さんと話がある」
総司、上機嫌で部屋を出て行く。
「やつ、竜馬と会うのが嬉しいのか」
「らしいですね」
吐き捨てるように言う近藤。
「おかしなやつだ!」
「近藤さん、話ってのは先日の池田屋事件で受けた報奨金のことなんですが」
「報奨金がどうした!」
「恩賞金と薬種料合わせて六百料が幕府と会津、朝廷から出ている」
「お前も含めて、隊士全員に分配したはずだ」
「その半分を、いや三分の一でもいい新式武器の購入に出してもらいたい」
近藤の顔色が変わる。
「俺は敵を斬って女を抱く。いい女を抱けなければ、幕府・会津のために命懸けて斬り合いなどせん!」
「しかし・・・」
言いかける土方に向かって、手にした虎徹を抜く近藤。
「問答無用!戦さとは昔からそうしたものだ!戦国時代は領地をもらえたが、今は金と女だ!それを返せというのか!武器など会津から来るのを使え!!」
近藤が人が変わったように激怒する
唇を噛む土方。
「この虎徹は、今宵も女を抱くために敵の血を吸う!お前は知らんが、他の隊士は全員そうだ!だから、報奨金のことなど忘れろ!」
近藤、虎徹を鞘に収め、部屋を出て行く。
憮然と腕組みする土方。
「やはり、ダメか!」
しかし、思い直す。
「竜馬か!新式武器をやつに頼める。その前に薩摩、長州より新しい強力な武器の知識をやつから得る」
立ち上がる土方。
「これで新選組の最新式銃武装化の道が見えて来た!金はなんとからなる!」
前に総司が寝転んでいる。
総司の食事の速度は他の隊士より、二倍は早い。
とっくに大部屋で平隊士たちと食事を終えて、ここへ来ているのだ。
土方は食事中の目の前で、彼が寝転んでいるのが気にくわない。
「俺たちの給金は、会津経由で幕府から出ているんでしたよね」
月に隊士一人三両(約三十万円)。
独り身の総司が普通に任務をすれば、これは十分な額だ。
飯も寝るところも隊が提供してくれる。
他の隊士たちに大金の御用金が要るのは、島原で遊ぶためだ。
御用金として得た金のほとんどが島原で消える。
芹沢亡き後、特に近藤が派手に島原へ通いだした。
京へ来て近藤は人が激変した、と総司は思う。。
四、五人の女を囲っていて、江戸にもいると聞く。
江戸に女おいて、いつ会うんだよ!
「近藤さんて本当は、こんなやつだったんだ!見損なった!俺は女郎買いに京へ着たんじゃない!」
「じゃ、何しに来た」
黙り込む総司。
「どうした ? 」
「目的なんてない!土方さんや近藤さんたちが来たから、ついて来た」
「池田屋で近藤さんは長州浪士の二十人斬りをやった。彼には派手に遊ぶ権利がある」
「人を斬って女を抱いて、また人を斬って女を抱いて!いやですよ、俺そんな生き方!」
土方、飯に茶をかけて湯漬けで食う。
「たまにはお前も島原へ行って見ろ。いいもんだぞ」
「土方さんの本音は分かってる。御用金で、隊士の頭数だけスナイドル銃を揃えるつもりですよね」
笑っていた土方が真顔になる。
「それが新選組の生命線だからだ!ところが、いざ武器を買うとなると売ってくれるやつがいない!刀剣屋は山ほどあるってのに!」
「そりゃそうだ。街中でおおっぴらに新式鉄砲売ってるわけがない」
「京大坂には一軒もない。新式銃は密売でしか手に入らんのか!」
「武器商人てやつでしょう」
「戦さは金だ。薩摩、長州、肥後、佐賀を見ろ。抜け荷で溜め込んだ法外な金で、密売屋からスナイドルやアームストロング砲を買っている」
「長崎か長州まで行かなきゃ、ダメじゃないですか」
「新選組がそんなとこまでスナイドルを買いに行ったら、生きちゃ戻れん」
「そうですよね!西国では新選組は目の敵だ」
近藤が襖を開けて廊下から入って来る。
驚く二人。
「近藤さん・・・!」
土方に言う近藤。
「話がある」
「じゃ、俺はこれで・・・」
近藤、逃げるように腰を浮かせる総司にいう。
「お前もいろ!」
総司、仕方なくつぶやいて座り直す。
「さっきの、聞こえたのかな」
土方の前の箱膳を脇へ退け、そこへあぐらをかく近藤。
「今日、二条城で土佐の後藤象二郎と会った。彼から妙な依頼を受けた。歳さんの意見が聞きたい」
「伺います」
「土佐の元浪士で坂本竜馬というのがいる」
「知ってます。最近、いろいろ話題の多い男ですよ」
「大政奉還、薩長連合を画策しているという噂のある男だ」
「で、その竜馬がどうしました」
「命を狙われている!今夜にも危ないと言うのだ」
驚く総司。
「新選組で護ってくれてんですか!」
「そうだ。相手は薩摩、長州、土佐、肥後、肥前・・・要するに勤王攘夷を叫ぶ藩すべてだ」
仰天する土方と総司。
「なんでですか!彼はやつらが先頭に押し立てた、いわば英雄ですよ!」
思わず土方が叫ぶ。
「彼は武器商人グラバーの代理人として、いま述べたすべての西国諸国へ最新兵器を供給した男だ!」
「西国諸国の英雄が、なぜ命を狙われるんです!」
「ただ一つ、彼がやつらと決定的に違うところがある。それを西郷も木戸も大久保も公家の岩倉も許せんのだ!」
「なんですか!違いとは!」
「佐幕だ!徳川家を潰さず、公武合体で新政府に徳川も参加させろと言うのが、竜馬の狙いだ!」
「そりゃ、西郷などは顔色を変えて怒るでしょう!長州、薩摩は江戸を焼き払うつもりですから」
総司が言う。
「新選組が助けなくても、彼は海援隊とい強力な部隊を持ってるはずだ!」
「配下すべてが、竜馬と反対意見だったら・・・!」
「いまや竜馬は四面楚歌だ!あれだけの見識と実行力をもちながら、周囲に味方が一人もいない!命さえ危ない!」
張り切る総司。
「やりましょう!敵の真っ只中で、公儀を擁護してる!俺、そう言う男好きです。俺と土方さんだけでやります。他の隊士は要らない」
「よし、話は決まった」
近藤、腰をあげる。
「やつの隠れ家を、後で教えてやる」
近藤を引き止める土方。
「総司は外せ。俺は近藤さんと話がある」
総司、上機嫌で部屋を出て行く。
「やつ、竜馬と会うのが嬉しいのか」
「らしいですね」
吐き捨てるように言う近藤。
「おかしなやつだ!」
「近藤さん、話ってのは先日の池田屋事件で受けた報奨金のことなんですが」
「報奨金がどうした!」
「恩賞金と薬種料合わせて六百料が幕府と会津、朝廷から出ている」
「お前も含めて、隊士全員に分配したはずだ」
「その半分を、いや三分の一でもいい新式武器の購入に出してもらいたい」
近藤の顔色が変わる。
「俺は敵を斬って女を抱く。いい女を抱けなければ、幕府・会津のために命懸けて斬り合いなどせん!」
「しかし・・・」
言いかける土方に向かって、手にした虎徹を抜く近藤。
「問答無用!戦さとは昔からそうしたものだ!戦国時代は領地をもらえたが、今は金と女だ!それを返せというのか!武器など会津から来るのを使え!!」
近藤が人が変わったように激怒する
唇を噛む土方。
「この虎徹は、今宵も女を抱くために敵の血を吸う!お前は知らんが、他の隊士は全員そうだ!だから、報奨金のことなど忘れろ!」
近藤、虎徹を鞘に収め、部屋を出て行く。
憮然と腕組みする土方。
「やはり、ダメか!」
しかし、思い直す。
「竜馬か!新式武器をやつに頼める。その前に薩摩、長州より新しい強力な武器の知識をやつから得る」
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「これで新選組の最新式銃武装化の道が見えて来た!金はなんとからなる!」
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