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15 開戦
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近藤が宣言した通り一行は出発したが、
どう言うわけか兵の人数は百五十二人しかいない。
別に近藤は点呼とるわけでもなく、足りない人数の理由を確認するわけでもない。
近藤らしいといえばまさに近藤らしい大雑把なやり方だ。
だが、ここは新選組ではない。
寄せ集めの部隊だ。
戦闘を目的とする集団だ!
中隊を定め、その隊長に責任を持たせなければ、
兵力の正確な数の把握はできなくなってしまう。
先頭に白馬に跨った近藤が進み、最後尾を栗毛に乗った土方が行く。
第一日目はに内藤新宿泊まり、近藤はあろうことか、
丸々遊郭一軒を借り切って、兵たちに女を抱かせたのだ。
近藤にしてみれば京の新選組で日常茶飯的にやってきたことで、別に珍しいことではない。
内藤新宿は大騒ぎになった。なにせ百五十名を超える男たちである。
土方は苦虫を噛み潰したような顔で、裏の茶屋で一人酒を飲んでいた。
近藤にしてみれば懐に大金はあるし、
これからの戦闘を考えれば兵たちに女を抱かせて、勇を鼓舞したかったのだろう。
しかし、新選組のようにまだ仲間の結束が強くなく、
局中法度のような死を賭した縛りが無い場合、事態は裏目に出る。
「近藤さんは人が良過ぎる」
土方は酒を飲みながら何度か呟いた。
その心配は早速翌日から現れた。
八王子、日野、小仏峠、日を追って兵が減っていくのだ。
勇を鼓舞するために内藤新宿では女を抱かせ、日当も出して来たのになぜだ。
近藤は苛立った。
おそらく明日か明後日には戦闘が始まる。
手柄を立てる好機だろう、なのになぜ逃げる!
土方は思った。それは逃げるだろう。
進むほど死が近づいてくるのだ。隙さえあれば逃げたくなる。
戦闘経験のない素人ならなおさらだ。
殿坂宿まで来た時には、人数は百二十人を切っていた。
土方には近藤が焦っているのが、手に取るようにわかる。
近藤さん、これが人間なんだよ。死に向かうのが怖いんだ!
東山道軍の板垣隊は二千だ。百人を切ったら隊として機能しなくなる。
堪えきれず近藤は土方に相談した。
「なぜこんなに兵が減る!」
「ここには局中法度がないからですよ!」
土方の冗談は近藤には通じなかった。
「なら急いで作れ!」
無理に決まってる!
弾左衛門の配下などは、自分らで勝手に隊長を決めている。
他に志願して来た兵たちも同じだ。
戦う前に、統制が取れていないのだ。
これが戦闘になったらどうなる。
アームストロング砲の榴弾が雨あられと降って来る。
逃げようとすればスナイドル銃で狙撃される。
だが土方はこの戦さは近藤さんの戦さだと思ったから、口を出さないようにして来た。
勝沼まで来た時、馬で戻ってくる大石と遭遇した。
板垣隊が甲府城へ入り、隊の一千を割いてこちらへ進軍してくるのだという。
近藤はすぐに柏尾の観音坂に本陣をおいた。
そして日川にかかる橋を落とし、そこに関門を置いた.
その辺はさすがに近藤である。本領発揮だ!
さらに虎の子の大砲二門を据え、原田と兵二十名を護りに置いた。
日川の南北の山に永倉と斎藤に兵三十づつを預けて、横からの攻撃に敵に備えた。
近藤は土方に言った。
「急いで江戸へ戻り、大樹院の新選組隊士百名を連れて来てくれんか!」
それをするには時間がなさ過ぎる!
確かに護りに八十名を割いたら、近藤の本陣には五十名も残らない。
だが、いくらなんでもそれは無理だ!
ついに日川の対岸に板垣隊が姿を見せた。
戦闘が始まった。
板垣隊のスナイドルが一斉射撃するが、対応するには永倉と斎藤隊の火力が少ない。
五百対三十!
圧倒的火力の前に、さすがの連発スペンサー銃も真価を発揮できない。
どう言うわけか兵の人数は百五十二人しかいない。
別に近藤は点呼とるわけでもなく、足りない人数の理由を確認するわけでもない。
近藤らしいといえばまさに近藤らしい大雑把なやり方だ。
だが、ここは新選組ではない。
寄せ集めの部隊だ。
戦闘を目的とする集団だ!
中隊を定め、その隊長に責任を持たせなければ、
兵力の正確な数の把握はできなくなってしまう。
先頭に白馬に跨った近藤が進み、最後尾を栗毛に乗った土方が行く。
第一日目はに内藤新宿泊まり、近藤はあろうことか、
丸々遊郭一軒を借り切って、兵たちに女を抱かせたのだ。
近藤にしてみれば京の新選組で日常茶飯的にやってきたことで、別に珍しいことではない。
内藤新宿は大騒ぎになった。なにせ百五十名を超える男たちである。
土方は苦虫を噛み潰したような顔で、裏の茶屋で一人酒を飲んでいた。
近藤にしてみれば懐に大金はあるし、
これからの戦闘を考えれば兵たちに女を抱かせて、勇を鼓舞したかったのだろう。
しかし、新選組のようにまだ仲間の結束が強くなく、
局中法度のような死を賭した縛りが無い場合、事態は裏目に出る。
「近藤さんは人が良過ぎる」
土方は酒を飲みながら何度か呟いた。
その心配は早速翌日から現れた。
八王子、日野、小仏峠、日を追って兵が減っていくのだ。
勇を鼓舞するために内藤新宿では女を抱かせ、日当も出して来たのになぜだ。
近藤は苛立った。
おそらく明日か明後日には戦闘が始まる。
手柄を立てる好機だろう、なのになぜ逃げる!
土方は思った。それは逃げるだろう。
進むほど死が近づいてくるのだ。隙さえあれば逃げたくなる。
戦闘経験のない素人ならなおさらだ。
殿坂宿まで来た時には、人数は百二十人を切っていた。
土方には近藤が焦っているのが、手に取るようにわかる。
近藤さん、これが人間なんだよ。死に向かうのが怖いんだ!
東山道軍の板垣隊は二千だ。百人を切ったら隊として機能しなくなる。
堪えきれず近藤は土方に相談した。
「なぜこんなに兵が減る!」
「ここには局中法度がないからですよ!」
土方の冗談は近藤には通じなかった。
「なら急いで作れ!」
無理に決まってる!
弾左衛門の配下などは、自分らで勝手に隊長を決めている。
他に志願して来た兵たちも同じだ。
戦う前に、統制が取れていないのだ。
これが戦闘になったらどうなる。
アームストロング砲の榴弾が雨あられと降って来る。
逃げようとすればスナイドル銃で狙撃される。
だが土方はこの戦さは近藤さんの戦さだと思ったから、口を出さないようにして来た。
勝沼まで来た時、馬で戻ってくる大石と遭遇した。
板垣隊が甲府城へ入り、隊の一千を割いてこちらへ進軍してくるのだという。
近藤はすぐに柏尾の観音坂に本陣をおいた。
そして日川にかかる橋を落とし、そこに関門を置いた.
その辺はさすがに近藤である。本領発揮だ!
さらに虎の子の大砲二門を据え、原田と兵二十名を護りに置いた。
日川の南北の山に永倉と斎藤に兵三十づつを預けて、横からの攻撃に敵に備えた。
近藤は土方に言った。
「急いで江戸へ戻り、大樹院の新選組隊士百名を連れて来てくれんか!」
それをするには時間がなさ過ぎる!
確かに護りに八十名を割いたら、近藤の本陣には五十名も残らない。
だが、いくらなんでもそれは無理だ!
ついに日川の対岸に板垣隊が姿を見せた。
戦闘が始まった。
板垣隊のスナイドルが一斉射撃するが、対応するには永倉と斎藤隊の火力が少ない。
五百対三十!
圧倒的火力の前に、さすがの連発スペンサー銃も真価を発揮できない。
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