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16 狙撃手土方
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文字通り展開は最悪の様相を呈していた。
これは副長である俺にも、大半の責任がある。
しかし、もはや陣容の立て直しようがない。
敵には地理に詳しい土地の農民も加わっているから、
撤退戦も容易ならざるものになる。
全ての要因は、近藤さんの日野の挨拶回りにある。
あれがなかったら一日の差で、
わが方が甲府城を落としていた。
しかし、あれが近藤さんなのだ。
故郷へ戻ったらたとえ戦闘中であろうと、挨拶回りを欠かさない。
俺のように戦闘となったら、
勝つことだけに集中することができない性分なのだ。
俺にないだけにそんな近藤さんを愛する。
だが、問題は起きつつある事態をどう収束するかだ。
もはや勝利は望めない。
俺の考えていた、先に城を落として和睦に持ち込んで撤退という策は崩れた。
近藤さんは右肩を砕かれ、虎徹が使えない。
白兵戦は絶対避けなければならない。
でないと、兵全てが近藤さんを逃がすために戦わなければならなくなる。
俺がやる!
そのためにここに俺はいる。
本陣にいた俺は、それとなく隊から離れた。
左翼の山の永倉隊も、右翼の山頂の斎藤隊も圧倒的な板垣軍に押されつつある。
崩れるのは時間の問題だ。
俺は本陣背後に繋いである栗毛へ走った。
その鞍の横にはスペンサーを一挺を、常に携帯している。
ボロ布に来るんだスペンサーを手に、
背後の山へ走った。
本陣の真裏に当たる山だ。
ここは布陣した時から、俺は目をつけていた。
万一撤退する時は、ここで敵を食い止めようと思っていた。
敵が本陣を攻めようとすれば、背後の山から弾が飛んで来る。
自然と本陣を援護する形となる。
今こそ、それを実行する時だ!
味方が総崩れになってからでは遅い。
俺はスペンサーを片手に、急坂を駆け上った。
敵のアームストロング砲が火を吹き始めた。
ダメ押しの砲撃だ。
アームストロング砲まで距離四百メートル。
ここからは射程外だが、いざとなったらやってやる。
山頂近くの森の木陰から、本陣へ射撃している板垣隊を狙う。
一人、二人、三人・・・。
本陣へ迫る敵を倒していく。
近藤さん、逃げろ!今だ!
敵はどこから弾が飛んで来るのかわからない。
俺は移動してさらに撃ちまくる。
明らかに敵の射撃が少なくなった。
弾は五十発ある。射程ギリギリだが、面白いくらい当たる。
矢継ぎ早に撃たれる連射に、
敵は複数の狙撃隊がいると思っているのだ。
敵の射撃が止んだ間隙を縫って、本陣の近藤たちが撤退を始めた。
俺は思い切って、アームストロング砲の射手に狙いを付けた。
スペンサーの有効射程の倍近くもある。
銃身の仰角を思いきって上げ、一発撃った。
射手の横にいた則行手が音もなく崩れた。
スペンサー銃の弾は四百メートル近く飛んでも、敵を倒す威力があるのだ。
同じ仰角で続けて二発、三発撃った。
四発目にアームストロング砲の射手が倒れた。
やった!!
瞬間、板垣軍全ての射撃が止んだ。
敵は明らかに動揺したのだ。
味方の山砲は、アームストロング砲の半分も弾は飛ばない。
小銃が射手を倒したことは明らかだ。
戦闘の様相が変わった。
アームストロング砲の射手が代わり、小銃弾の飛んで
来た方向に砲身の角度を変えた。
俺は移動しながら、近藤本陣前の敵を掃討した。
近藤を護って本陣の兵たちが撤退を始めた。
追いすがる板垣隊。
俺は次々とその敵兵たちを狙い撃ちした。
四人、五人、六人・・・。
バタバタと敵兵が倒れる。
アームストロング砲が火を吹き、
俺が元いた場所へ砲弾を撃ち込んだ。
俺はすでに、はるか離れた場所に移動している。
近藤たちが安全圏まで戻ったのを確かめて、
俺は栗毛のいる場所へ戻った。
永倉隊、斎藤隊も近藤たちに合流したが、兵の半数を失っていた。
隊は八王子を目指して退却した。
敵は追って来ない。
アームストロング砲の射手が狙撃されたのが、
それほど衝撃だったのだ。
スナイドルだったら、もっと簡単に倒せたろう。
しかし、野戦を想定して小銃を選択していなかった。
スペンサーはあくまで京での市街戦用だった。
スペンサーをボロ布に来るんで栗毛の鞍脇に装着し、近藤たちを追った。
俺が撤退の援護をしたなどと、味方の誰も知るまい。
板垣軍は追って来ない。
俺はひたすら近藤たちに追いつくべく、馬を飛ばした。
これは副長である俺にも、大半の責任がある。
しかし、もはや陣容の立て直しようがない。
敵には地理に詳しい土地の農民も加わっているから、
撤退戦も容易ならざるものになる。
全ての要因は、近藤さんの日野の挨拶回りにある。
あれがなかったら一日の差で、
わが方が甲府城を落としていた。
しかし、あれが近藤さんなのだ。
故郷へ戻ったらたとえ戦闘中であろうと、挨拶回りを欠かさない。
俺のように戦闘となったら、
勝つことだけに集中することができない性分なのだ。
俺にないだけにそんな近藤さんを愛する。
だが、問題は起きつつある事態をどう収束するかだ。
もはや勝利は望めない。
俺の考えていた、先に城を落として和睦に持ち込んで撤退という策は崩れた。
近藤さんは右肩を砕かれ、虎徹が使えない。
白兵戦は絶対避けなければならない。
でないと、兵全てが近藤さんを逃がすために戦わなければならなくなる。
俺がやる!
そのためにここに俺はいる。
本陣にいた俺は、それとなく隊から離れた。
左翼の山の永倉隊も、右翼の山頂の斎藤隊も圧倒的な板垣軍に押されつつある。
崩れるのは時間の問題だ。
俺は本陣背後に繋いである栗毛へ走った。
その鞍の横にはスペンサーを一挺を、常に携帯している。
ボロ布に来るんだスペンサーを手に、
背後の山へ走った。
本陣の真裏に当たる山だ。
ここは布陣した時から、俺は目をつけていた。
万一撤退する時は、ここで敵を食い止めようと思っていた。
敵が本陣を攻めようとすれば、背後の山から弾が飛んで来る。
自然と本陣を援護する形となる。
今こそ、それを実行する時だ!
味方が総崩れになってからでは遅い。
俺はスペンサーを片手に、急坂を駆け上った。
敵のアームストロング砲が火を吹き始めた。
ダメ押しの砲撃だ。
アームストロング砲まで距離四百メートル。
ここからは射程外だが、いざとなったらやってやる。
山頂近くの森の木陰から、本陣へ射撃している板垣隊を狙う。
一人、二人、三人・・・。
本陣へ迫る敵を倒していく。
近藤さん、逃げろ!今だ!
敵はどこから弾が飛んで来るのかわからない。
俺は移動してさらに撃ちまくる。
明らかに敵の射撃が少なくなった。
弾は五十発ある。射程ギリギリだが、面白いくらい当たる。
矢継ぎ早に撃たれる連射に、
敵は複数の狙撃隊がいると思っているのだ。
敵の射撃が止んだ間隙を縫って、本陣の近藤たちが撤退を始めた。
俺は思い切って、アームストロング砲の射手に狙いを付けた。
スペンサーの有効射程の倍近くもある。
銃身の仰角を思いきって上げ、一発撃った。
射手の横にいた則行手が音もなく崩れた。
スペンサー銃の弾は四百メートル近く飛んでも、敵を倒す威力があるのだ。
同じ仰角で続けて二発、三発撃った。
四発目にアームストロング砲の射手が倒れた。
やった!!
瞬間、板垣軍全ての射撃が止んだ。
敵は明らかに動揺したのだ。
味方の山砲は、アームストロング砲の半分も弾は飛ばない。
小銃が射手を倒したことは明らかだ。
戦闘の様相が変わった。
アームストロング砲の射手が代わり、小銃弾の飛んで
来た方向に砲身の角度を変えた。
俺は移動しながら、近藤本陣前の敵を掃討した。
近藤を護って本陣の兵たちが撤退を始めた。
追いすがる板垣隊。
俺は次々とその敵兵たちを狙い撃ちした。
四人、五人、六人・・・。
バタバタと敵兵が倒れる。
アームストロング砲が火を吹き、
俺が元いた場所へ砲弾を撃ち込んだ。
俺はすでに、はるか離れた場所に移動している。
近藤たちが安全圏まで戻ったのを確かめて、
俺は栗毛のいる場所へ戻った。
永倉隊、斎藤隊も近藤たちに合流したが、兵の半数を失っていた。
隊は八王子を目指して退却した。
敵は追って来ない。
アームストロング砲の射手が狙撃されたのが、
それほど衝撃だったのだ。
スナイドルだったら、もっと簡単に倒せたろう。
しかし、野戦を想定して小銃を選択していなかった。
スペンサーはあくまで京での市街戦用だった。
スペンサーをボロ布に来るんで栗毛の鞍脇に装着し、近藤たちを追った。
俺が撤退の援護をしたなどと、味方の誰も知るまい。
板垣軍は追って来ない。
俺はひたすら近藤たちに追いつくべく、馬を飛ばした。
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