爆裂令嬢(ボンバーガール)は、あきらめない~科学チートで乙女ゲームを攻略するの! アタシを追放した悪徳貴族は後悔しても、もう遅い!!~

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第3章 エルフ大公国を襲う悪意!

第23話(累計・第104話) クーリャ96:ファンがいっぱいできちゃったわたし。少し怖くなるの!

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「もう何もかも今更だよね。クーリャ、君には落ち着くという言葉は無いのかい?」

「ごめんなさい、お父様。わたくし、衝動が止まりませんですの」

 毎度ながら、お父様達からの遠距離通信叱責を受けるわたし。
 同じ事では叱られていないのだけれども、どんどん叱られる事案のスケールが大きくなっている気がしているのは、気のせい……では無いだろう。

「男爵様、このくらいにして上げて下され。こちらは助かる事はあれど、困った事は何も……」

「モスラヴィナ子爵様、こうやって言い聞かせてやっと現状なのです。まったく鉄砲玉暴走娘は何をしでかすか分からないので当方も困っております、はい」

「まあ、ウチの兵や側仕えの中でクーリャ様人気が大上昇なのはしょうがないです。幼き身で、あれだけの武勲を上げて、被害者に優しく寄り添い共に泣くお姿を見せては、アイドルになるのも間違いない。正直、私もあと50歳は若かったら、お付き合いを申し込んでいましたよ。ははは!」

 なんか凄い事になっているのを実感するわたし。
 泣いちゃってしまった昨日から、側仕えの方々やメイドさんがわたしを見る目が、すっかりアイドルを見る目になっている。
 今晩の夕食もコックが気合入れてデザートを作ったと、美味しいケーキを作ってくれていた。

「はぁ。クーリャ、君が至るところでファンを作るのはどうした事なのかなぁ。もはや僕がコントロール出来そうも無いよ。ただ、人気があるということは、逆にアンチ、恨みを買いやすくなるのは理解しておいてくれ」

「はい、お父様。注意いたします」

 ……前世のアイドルの悲劇とかで、わたしも十分理解しているの。ただでさえ、アントニーには恨まれているのに、これ以上恨みは買いたくないわ。

「では、子爵様。ウチのバカ娘を宜しくお願い致します」

「クーリャ、優しいわたくしの娘。もう心配させないでくださいませ」

「お父様、お母様。わたくし、かならず無事に帰ります!」

  ◆ ◇ ◆ ◇

 通信が終わった後、わたしはもう一度子爵様に謝った。

「わたくし、やりすぎてしまう事が多くて失敗ばかりです。今回も、もう少し大人しく行動をしていれば、こんな事にはなりませんでしたのに、申し訳ありません」

「いやいや。ゴブリン退治の報告を受けて、久方ぶりに私は血肉湧き上がりましたし、昨日の被害者慰問も感動しました。先ほどのプロポーズも本心。私には直系の孫が居ません。もし居たら、早速婚約させていましたよ」

「子爵様。申し訳ありませんが、クーリャちゃんの婚約者にはボクが立候補しています! なので、クーリャちゃん、ボクと……。痛い!」

 どさくさに紛れて、わたしに抱きつこうとするエル君に、わたしとダニエラは蹴りを容赦なく叩き込む。

「エル、いい加減空気読めよ。ホント、アンタは懲りないよなぁ」

「ボクが落ち着くには後100年は必要さ。だから、それまではキミ達が僕の……痛いから、蹴らないでよぉ!!」

 わたしとダニエラは、おバカな事を更に言うエル君を蹴りまくった。

「君たち、いつまでも仲良くできたら良いね」

 子爵様は、わたし達がふざけあうのを楽しそうに見ていた。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「では、色々とありがとう存じました。また、帰りに寄らさせていただきます!」

「はい、気を付けて行ってくださいね。この先の国境地域にもゴブリンの集団が居たとの報告もありますから……」

「クーリャおねーちゃん、またねぇ!」

「クーリャ様。お気をつけて!」

 わたし達は最初の予定からは5日程遅れて、子爵様のお屋敷を出発した。
 お見送りの子爵様や他の側仕えさん、兵士さん方。
 アリサちゃんやリーザさん達に見送られて、わたしは向かう。
 次なる目的地、西方エルフ大公国へと。

「しかし、だいぶ最初の予定からは遅れてしまいましたの。もう山々の木々が紅葉を始めてしまいました。なんとしても本格的に冬になるまでに、大公国も救いますの!」

「はい!」

  ◆ ◇ ◆ ◇

「この辺りからが大公国ですわね。エル君、どうですか?」

「うーん。今のところは周囲に悪意は無いね。けど、妙に静かなのも確かだね。この時期なら鳥や小動物は冬前に活動を活発にしているはずなのに、森が静かだよ」

 深い森の中の街道を進むわたし達。
 敵の位置が分かるエル君にレーダー代わりをしてもらいつつ、この先にある集落を目指す。

「確か、次の中継点はウーマンヤルでしたわね」

「うん、王国との中継点の集落さ。だから只人も住んでいるし、只人の建物も多いよ」

 エルフの街は基本樹上にある。
 神樹とも呼ばれる種類の巨木を使い、それを中心として樹上や木のうろに家屋を作る。
 そして、比較的他種族と交流を持たずに彼ら独自の文化体形を作る。

「そういえば、エル君は肉類も好き嫌いしませんですわね。普通、エルフ族は生臭い物は苦手とも聞きますが?」

「ボクは変わり種かもね。元々好き嫌いはしないし、食物として出されたのなら、残しちゃうのは奪われた命に対する冒涜。積極的に肉を取るために殺しはしないけれども、やむをえず奪った命を食するのはエルフでも行うよ」

 エルフ族は、只人やドワーフ族などとは違い、神様を信仰せず自然そのものを信仰して、自然の営みを守る傾向がある。

 ……どっちかというと、前世世界、日本の神道っぽいかもね。

「その考え、わたくしも同じですの。神様は糧を与えるとは言いますが、わたくし達は奪った命を食することで命を繋いでいます。失われた命に感謝し、美味しく頂くのが当然と思いますの」

「そのお考えは神殿とは異なりますわね。神殿では、神はヒトに糧として動植物を作ったのですから、奪う命ではなく神に感謝しなさいと教えられます。もちろん、クーリャ様やエルロンド様のお考えも素晴らしいです」

 わたしは、前世からずっと思っている考えを言うと、先生は神殿の教えとは反するが素晴らしいと言ってくれる。

 ……命に良いも悪いも上も下も無いの。だから、奪うのなら覚悟して奪うべきなの。

 わたしは、助けた命、奪った命に関して更に考えをめぐらして、アクセルを踏んだ。
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