異質な彼と冷たい彼女の話【リメイク版】

池中織奈

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彼が私を見つめている事に気づいた。

 私はシュアに自分の気持ちを伝えた後も、いつも通り、過ごしていた。
 私は彼に幸せになって欲しいとそればかり考えている。だからこそ、私は彼に話しかけようなどと思わない。周りに私は優しいといわれるけれど、私は私自身が決してやさしくない事をちゃんと知っている。私という存在は冷たいと私は理解している。
 優しいね、といわれると複雑な気持ちになる。私がそれに素直に喜べるような性格だったら、彼に話しかけていたかもしれない。ううん、もしそういう性格だったのならば、彼をただ見ているだけではなく彼にもっと前から話しかけていただろう。もしかしたら幼馴染と言えるだけの距離になっていたかもしれない。でも、私はそういう性格ではない。来るものは受け入れるけれど、自分から来る事は全然しない。そう考えると、私は社交的だといわれているけれどそういうのとは違う気がした。
 
 今日も、彼を見てる。

 彼をどうして私は好きだと思ったのだろうか。考えても正直、分からない。好きだとは気づいた。でも何故だろうと考えるととても不思議だ。何故かという理由が私自身の事なのに、分からない。自分の事なのに分からない事に不思議な気持ちになる。
 前世で私の友達とされていた人達や、現世の友達とされている人達が皆言っていたっけ。恋とは落ちるものなのだと。
 恋は気づかないうちに落ちてしまうものなのだと。そしてそれに何故かなどという理由はないのだ。理由がなくても、只好きだと思ってしまうものだと。私は最初、その言葉を聞いた時、気持ちがさっぱり分からなかった。前世で、地球で生きていた時は誰の事も好きだと思っていなかった。誰かに好意を抱く気持ちも、誰かを大切にする気持ちも、私は分かっていなかった。
 だけど、今は——好きなんだろうなって相手が居る。それだけで私は不思議だ。私が誰かを好いている。字bンで不思議で、意味が分からない気持ちになる。彼を好いている。彼の事が好きである。うん……恥ずかしいけれど、それは事実。
 やっぱり、何故好きなのかは分からない。でも好きである。
 ずっと見ていたいから。只、理由はないけど惹かれているから。
「リサ様、最近何かいい事がありましたか?」
「少しね」
 いい事があったのか、そう聞かれてしまうぐらいに私は少し機嫌が良かったらしかった。私は、誰の事も好きにならないだろう、ううん、なれないだろうと思っていた。私がそういう人間だから。前世での20年、今の十数年。それを経過してようやく気付いた誰かを大切に思う気持ち。
 誰かを大切になれる自分が居るという事が不思議と同時に、少しだけ心が温かくなった。
 私が彼に幸せになってほしいと願うのも、全てそういう気持ちがあるからだ。
 あのヒロインのような少女——ヒメ・メシープさんは彼を救う事は出来なかった。でもいつか、彼に笑って欲しい。心から大切な人を傍に置いて笑ったとしたら彼はどのような表情を浮かべるだろうか。私は——遠目からでもいいからそれを見たい。一瞬でもいいから、彼が笑う所を見たい。
 彼を好きだという気持ちに気づいて、そんな風に思ってしまう。
 そう、ただ幸せになった彼をいつか見れたらいい。見たいなとそういう願望が沸いている。そんな風に私が誰かに感じる事が、まず奇跡だと思う。私がそのような感情を持つとさえ思わなかったから。

 だから、好きだと気付いてから彼を見るのが余計にむず痒い気持ちにある。嬉しい、という感情に似ているかもしれない。

 彼を見る。
 彼が過ごしている。
 いつも通りに、学園の中で注目されながら過ごしている。
 誰にも気づかれないように、ひっそりとただ私は彼を見つめる。
 それだけでも、何だか嬉しい。
 彼の事を見つめて、彼の事を知っていく。ずっと見ていたから彼の癖や、彼がどうやって過ごしてきたか、それを知っている。でも、もっと違う彼を知っていく。一日一日、少しでも彼について知っていけること。ただ、彼を見つめていけるのが嬉しかった。彼の事を、何でも知れる事が嬉しかった。
 彼は傷ついていて、壊れかけている。
 そんな彼が、誰かと寄り添う事を私はただ望んでいる。彼が誰かと寄り添って、彼が誰よりも安心できる場所を作ってくれること、それを私は求めている。
 他力本願な考えだけど、誰かが彼の、壊れかけの硝子のような心を誰かが包んでくれる事。それを私は望んでいる。誰か、彼の事を包み込んでくれたらいい。――そんな、人任せな感情。自分勝手な感情。
 それを抱いていた私は、気づいた。
 何時頃からか、彼が、何故か、私を時々、見ている事を。



 ―――彼が私を見つめている事に気づいた。
 (彼が、私を見つめている。そのことに気づいてしまった)

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