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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか⑦

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 ウーログと交流を深めていく。私はウーログに惹かれている。でも怖さを感じるからこそ、自分から好きだという気持ちを口にする事は出来ない。それでもにこにこと笑って、私を優しく見つめるウーログと過ごすのは楽しかった。
 お姉様の事を考えて悩んでいた私にとって、ウーログと過ごすことで心に余裕が生まれた。お姉様が私を見ない事はつらいけれども、ウーログという私をまっすぐに見てくれる人が居るというのが本当に嬉しかったのだ。
 私はお姉様を元に戻したいという思いを抱えながら、その日も、お姉様に笑顔で話しかけていた。お姉様は笑みを零しているけれど、やっぱり、私の事をちゃんと見ていないのだ。私を、表面上大切にしている態度をしている。でも、きちんと私を見ていないのだ。それでも私は、お姉様に話しかける。お姉様は私がこういう思いを抱えている事をもしかしたら分かっていないかもしれない。ううん、そこまで私に対して興味はないように見える。私が何を考えていても、お姉様はそこまで関心がないように見えた。
「お姉様、あのね」
「ええ、そうね」
「お姉様……」
 お姉様、お姉様と私は笑みを作って、お姉様に話しかける。
 お姉様は表面上優しい笑みで私に応えている。
 その様子を侍女達は見守っている。
 表面上、とても穏やかな光景。だけど、そこにお姉様の心が入っていなければ何の意味もない張りぼての穏やかな光景でしかないのだ。
 そうして、お姉様に一生懸命話しかけていた時に、この家に仕えている執事の一人が私とお姉様に声をかけた。
 ――お父様が、私達姉妹の事を呼んでいるのだと言った。
 お父様が私達二人を呼ぶなんて珍しい事で、私はなんだろうと思った。
 お姉様と共にお父様の元へと向かった先で、私は初めて見る男の子を見た。お父様の隣に私達と同じ年ぐらいの男の子がいる。綺麗な顔立ちをしていて、美しい銀色の髪を持つ男の子。どこか冷たい瞳を浮かべている少年が誰なのか、私にはさっぱり分からなかった。ただ、隣に立っているお姉様はその少年を見て表情を変えた。
 ああ、何だかお母様が亡くなった時と同じように見える。お姉様は倒れはしなかったけれど、顔色がおかしくなったのが分かった。
 お姉様はこの男の子の事を知っている?
 でも、お姉様が会った事があって私が会った事がない人ってそんなにいないと思うのだけど。
「――アクノール、イエルノ。この子は、ラスタ。カプラッド公爵家の遠縁にあたる子だ。今回、私の養子にすることにしたのだ」
「養子?」
 私は驚いて、お父様に対して問いかける。
 お姉様は何もしゃべらない。ただ、様子がおかしいだけだ。
「ああ。私に縁談が来ている事は知っているだろう? 私は……新しい妻はいらない。なので、養子という形でラスタを迎える事で納得してもらおうと思ってな。アクノールの弟で、イエルノの兄になる存在だ。仲良くしてやってくれ」
 お父様はそう言った。
 ラスタ。
 カプラッド公爵家の遠縁にあたる存在。
 そして、お父様が養子にする男の子。
 お姉様にとっての弟で、私にとっての兄になる存在。
 そうか。お父様はお母様が亡くなってから、新しい奥さんをと周りの人に沢山言われていたはずだ。
 お父様はお母様を愛していて、それ以外の奥さんはいらないとそのための策として、息子を作ったってことなのだろう。私は……嬉しかった。お母様の代わりのお母様なんて私は欲しいと思ってなかったから。
 私はお父様がお母様だけ愛してくれている事が嬉しかった。
 兄になるラスタという男の子は、どこか憂いを帯びているけれど……仲良くなれたらいいなって、私はそんな嬉しさ以外わいていなかった。
 でも隣のお姉様は何だかおかしい。嬉しいとかではなくて、何かを思案しているような表情。
 私はお姉様が何をそんな風に考えているのか分からなかった。
 でもそれはともかくとして、私は嬉しい。
「まぁ、そうなのですね。私はイエルノ・カプラッド。ラス兄様とお呼びしても?」
「……ああ」
「ほら、お姉様も挨拶しましょう。新しい家族ですわよ?」
 自分で挨拶をした後に、固まったままのお姉様の方を振り向いて、私はそう言った。お姉様ははっとなったような表情をしてから、優雅に挨拶をする。
「私はアクノール・カプラッドですわ。よろしくお願いします。ラスタ。何か困ったことがあったら私に言ってね」
 そう言ってにこやかに笑うお姉様はどこか、わざとらしかった。なんていうか、デル兄様と一緒に居る時の態度みたいな感じがする。私に対するのとは違うけれども、きちんと、その人自身を見ていないようなそんな態度。
 どうしてだろう。
 私は分からない。
 そしてその日からまた、お姉様は益々おかしい様子を見せるようになっていた。


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