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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか53
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「イエルノ様、あのお願いがあります」
「なんです?」
いつものお茶会。
私はヒーナと共に、テーブルを囲んでいた。
ヒーナはこの前、デル兄様の事を好きになったと口にして以来、そのことに触れることはなかった。卒業まで待ってほしいといった私の言葉に驚いていたようだが、私が言うことを望んでいないことが分かるからか、理由を聞くことはなかった。
ヒーナはデル兄様と関わるのは、本当に必要最低限だ。その距離は、ただの同級生でしかない。
だけれどただの同級生である二人の距離よりも婚約者であるデル兄様とお兄様の距離の方が遠い事だろう。その事には正直何とも言えない事になる。
「……私も、参加させてください」
「参加? 何に?」
「アクノール様への催しにです」
どこからか、お姉様へのざまぁ計画がヒーナに漏れているらしい。……まぁ、ヒーナはお姉様から一番迷惑をこうむっているから、その関係で誰かがそのことを溢したのかもしれない。もしくはデル兄様から洩れたのか。
どちらなのかは分からない。
けれど――私はその言葉にどうしたほうがいいのか分からなかった。もちろん、お姉様をざまぁするためにはヒーナを催しに参加させた方がいい。
そうしたほうが、乙女げぇむの通りになるだろう。ヒーナがデル兄様の傍に居てくれるだけで効果的なのだ。
とはいえ、それだとヒーナに対する負担が大きいかもしれない。
「イエルノ様、私はイエルノ様のこともデルデ殿下のことも大切に思ってます。恐れ多くも……友達だと思ってます。いえ、デルデ殿下にはそれ以上に感情もありますけれど――。とにかく私は力になりたいんです。そしてアクノール様とも、友達になりたい。イエルノ様が大切にしている方と、ちゃんと話したいんです」
ヒーナはやっぱり真っ直ぐだと思う。
私やデル兄様の事を大切に思ってくれていて、お姉様とも仲よくしたいと思ってくれていて――、だからこそこういう言葉をかけてくれる。
ヒーナは決意に満ちた表情を浮かべている。
――でも確かに私もウーログやデル兄様が私の知らない所で何かをやっているのならば、力になりたいと思うだろう。
ヒーナの力になりたいという気持ちもよく分かる。
「でも、ヒーナ。もしかしたらお姉様は……貴方が居たら貴方に突撃していくかもしれないわ。お姉様は夢を見ているの。私たちの事を見ていなくて……。そんなお姉様は現実の事を知らしめたら暴走する事があるの。だから貴方がその場にいれば真っ先に狙われるのはヒーナだわ。
もちろん、私たちはヒーナに手を出さないように対処はするけれども――それでもお姉様がヒーナにとびかからないとは限らないの。だから……怖い思いをするかもしれないわ」
真っ先にお姉様がとびかかるとしたらヒーナや、デル兄様だと思う。それこそ、乙女げぇむの象徴である登場人物たちだから。私はお姉様の眼中にない存在だし……そんなに来ないと思う。いや、もしかしたら味方だと思い込まれて縋ってくるとかはあるのかもしれないかもだけど。
乙女げぇむの世界では最後まで妹である私はお姉様の味方であったっぽいし。お姉様のノートにそれらしいことは書かれていた。でも本当に私を味方にしたいのならば、私の事をちゃんと見なければ駄目だよ、お姉様。
私は私自身を見てくれない存在の事を、そこまで愛せない。
お姉様に対する愛情は、残っている。でもそれがただ私が縋っているだけの、ただあると信じているだけのものなのかどうかは分からない。
……嫌いというその感情の方が強いかもしれない。それでも私はお姉様が好きだという、残っている欠片に縋っている。だからこそ、お姉様を切り捨てることなど私には出来ない。
お姉様は変わってしまったけれど、私の大好きだったころのお姉様の面影はあるから。お姉様がお姉様ではなくなってしまったわけではないと、ずっと見ていて知っているから。ふとした瞬間に、お姉様を感じるから。
だから私はお姉様が暴走したとしても受け入れる。暴走されたとしても、それがお姉様のためだと思うならそのくらいなんとでもない。
でもヒーナは違うから。
私はお姉様の妹だし、デル兄様はお姉様の幼馴染で婚約者で――だからこそ、そういう目にあってもお姉様と向き合おうとしているけど、ヒーナはお姉様にそこまでする必要はないから。
だけど、ヒーナは私がそんな言葉を告げても、
「大丈夫です!! 覚悟の上です。何故かアクノール様は私を目の敵にしてますから、私がいた方がいいんじゃないかって思いますし。それにそういう目に遭ったとしても私はイエルノ様やデルデ殿下の力になりたいですから。それにちゃんと私とお話ししてくれるアクノール様に私も会いたいんですよ。イエルノ様やデルデ殿下が大切に思っているアクノール様のために何かしたいですし」
そう言って笑顔を浮かべる。
真っ直ぐで、まるで太陽のような明るい笑み。
その笑みに抗えなくて――私は結局ヒーナがざまぁに参加する事を了承した。
「なんです?」
いつものお茶会。
私はヒーナと共に、テーブルを囲んでいた。
ヒーナはこの前、デル兄様の事を好きになったと口にして以来、そのことに触れることはなかった。卒業まで待ってほしいといった私の言葉に驚いていたようだが、私が言うことを望んでいないことが分かるからか、理由を聞くことはなかった。
ヒーナはデル兄様と関わるのは、本当に必要最低限だ。その距離は、ただの同級生でしかない。
だけれどただの同級生である二人の距離よりも婚約者であるデル兄様とお兄様の距離の方が遠い事だろう。その事には正直何とも言えない事になる。
「……私も、参加させてください」
「参加? 何に?」
「アクノール様への催しにです」
どこからか、お姉様へのざまぁ計画がヒーナに漏れているらしい。……まぁ、ヒーナはお姉様から一番迷惑をこうむっているから、その関係で誰かがそのことを溢したのかもしれない。もしくはデル兄様から洩れたのか。
どちらなのかは分からない。
けれど――私はその言葉にどうしたほうがいいのか分からなかった。もちろん、お姉様をざまぁするためにはヒーナを催しに参加させた方がいい。
そうしたほうが、乙女げぇむの通りになるだろう。ヒーナがデル兄様の傍に居てくれるだけで効果的なのだ。
とはいえ、それだとヒーナに対する負担が大きいかもしれない。
「イエルノ様、私はイエルノ様のこともデルデ殿下のことも大切に思ってます。恐れ多くも……友達だと思ってます。いえ、デルデ殿下にはそれ以上に感情もありますけれど――。とにかく私は力になりたいんです。そしてアクノール様とも、友達になりたい。イエルノ様が大切にしている方と、ちゃんと話したいんです」
ヒーナはやっぱり真っ直ぐだと思う。
私やデル兄様の事を大切に思ってくれていて、お姉様とも仲よくしたいと思ってくれていて――、だからこそこういう言葉をかけてくれる。
ヒーナは決意に満ちた表情を浮かべている。
――でも確かに私もウーログやデル兄様が私の知らない所で何かをやっているのならば、力になりたいと思うだろう。
ヒーナの力になりたいという気持ちもよく分かる。
「でも、ヒーナ。もしかしたらお姉様は……貴方が居たら貴方に突撃していくかもしれないわ。お姉様は夢を見ているの。私たちの事を見ていなくて……。そんなお姉様は現実の事を知らしめたら暴走する事があるの。だから貴方がその場にいれば真っ先に狙われるのはヒーナだわ。
もちろん、私たちはヒーナに手を出さないように対処はするけれども――それでもお姉様がヒーナにとびかからないとは限らないの。だから……怖い思いをするかもしれないわ」
真っ先にお姉様がとびかかるとしたらヒーナや、デル兄様だと思う。それこそ、乙女げぇむの象徴である登場人物たちだから。私はお姉様の眼中にない存在だし……そんなに来ないと思う。いや、もしかしたら味方だと思い込まれて縋ってくるとかはあるのかもしれないかもだけど。
乙女げぇむの世界では最後まで妹である私はお姉様の味方であったっぽいし。お姉様のノートにそれらしいことは書かれていた。でも本当に私を味方にしたいのならば、私の事をちゃんと見なければ駄目だよ、お姉様。
私は私自身を見てくれない存在の事を、そこまで愛せない。
お姉様に対する愛情は、残っている。でもそれがただ私が縋っているだけの、ただあると信じているだけのものなのかどうかは分からない。
……嫌いというその感情の方が強いかもしれない。それでも私はお姉様が好きだという、残っている欠片に縋っている。だからこそ、お姉様を切り捨てることなど私には出来ない。
お姉様は変わってしまったけれど、私の大好きだったころのお姉様の面影はあるから。お姉様がお姉様ではなくなってしまったわけではないと、ずっと見ていて知っているから。ふとした瞬間に、お姉様を感じるから。
だから私はお姉様が暴走したとしても受け入れる。暴走されたとしても、それがお姉様のためだと思うならそのくらいなんとでもない。
でもヒーナは違うから。
私はお姉様の妹だし、デル兄様はお姉様の幼馴染で婚約者で――だからこそ、そういう目にあってもお姉様と向き合おうとしているけど、ヒーナはお姉様にそこまでする必要はないから。
だけど、ヒーナは私がそんな言葉を告げても、
「大丈夫です!! 覚悟の上です。何故かアクノール様は私を目の敵にしてますから、私がいた方がいいんじゃないかって思いますし。それにそういう目に遭ったとしても私はイエルノ様やデルデ殿下の力になりたいですから。それにちゃんと私とお話ししてくれるアクノール様に私も会いたいんですよ。イエルノ様やデルデ殿下が大切に思っているアクノール様のために何かしたいですし」
そう言って笑顔を浮かべる。
真っ直ぐで、まるで太陽のような明るい笑み。
その笑みに抗えなくて――私は結局ヒーナがざまぁに参加する事を了承した。
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