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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか57
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「イエルノ……、どうして」
「お姉様は馬鹿ですね。馬鹿なお姉様……。私はお姉様のこと、大好きよ。でも――大嫌いよ」
「……イ、イエルノ?」
ああ、もう馬鹿なお姉様。
まったく此処まで来ても私の言葉を理解出来ないといった様子のお姉様に私は笑ってしまう。
「――ねぇ、お姉様。お姉様は私の事を全く見ていないでしょう。私が何を好きか、私が何を思っていたか。私が……どうしてお姉様を大嫌いなのか。それも全く考えてこなかったでしょう。――だから、お姉様、お話しましょう」
「え……えっと」
お姉様はうろたえている。
お姉様は乙女げぇむという思い込みが崩れてきている。ざまぁという衝撃で、私がまさかこんなことをするなんて思っていなかったからこそ――お姉様は私をようやく見てくれている。
「……いいから行きましょう。お姉様。私の事をちゃんと見て、私の事をちゃんと考えてください。お姉様を大好きで、大嫌いな私の話をちゃんと聞いてください。”今のお姉様”なら私の言うことをきいてくれますよね?」
お姉様は私の視線が怖かったのか、こくこくと頷く。
その表情は怯えがある。……お姉様が私をこんな風に見てくれるなんて、ゾクゾクする。だって今までお姉様は私を取るに取らない存在と思っていたから。
「では――皆さま、私とお姉様はこれで失礼します。皆さま、此処までの協力を感謝いたします。皆さま本来のパーティーに参加していただければと思います。また、感謝の品はまた後日お渡しいたしますわ」
私はそう言ってカッテシーをして、混乱した表情のお姉様を連れてその場を後にする。デル兄様に視線を向ければ、デル兄様は頷いてくれていた。
――あとは任せた、とでもいう風に。
デル兄様の心がまだお姉様にあって、お姉様との婚約を続けていくつもりならば――、このままデル兄様は一緒に来ただろう。だけどもうデル兄様とお姉様の間には深い溝が出来ている。――だからこそ、デル兄様はこのままヒーナと共に居る。
多分、告白でもそのままするのではないかな。
ありがとうの気持ちを込めて、デル兄様にお辞儀をした。デル兄様との、義理の兄妹のような関係もこれで途切れる。……私とデル兄様の仲が崩れるわけではないけれど、これで完全にデル兄様とお姉様の婚約関係は無くなったのだ。
お姉様を連れて向かったのは空き部屋である。
此処は教師の方に話を通して取ってもらっている。ちなみにウーログとラス兄様も一緒に此処にいてくれている。ラス兄様に関してはお姉様がこのような状況になっても、お姉様が何かやらかすのではないかという不安からここに来たらしい。
……ラス兄様はおかしくなってからのお姉様しか知らない。
お母様が亡くなる前の、優しくて自慢だったお姉様を知らないからだ。ラス兄様にとってずっとお姉様はおかしな人だったからだろう。お姉様がちゃんと現実を見てくれるようになって、ラス兄様とも仲良くなれたらいいのにと思う。それはラス兄様とお姉様次第だけど。
私はお姉様に視線を向ける。
椅子に座り込んだお姉様の身体は震えている。
「さて、改めましてお姉様、何が起こっているかわかりますか?」
お姉様は首を横に振る。
「――お姉様は私にざまぁされました。私が全部整えました。お姉様は……衝撃を与えれば今の状態になると思ったから。良かったです。今のお姉様は私の話をちゃんと聞いてくれて」
「……ざまぁって、イエルノは、私と一緒?」
「いいえ、違います。私はそのお姉様が思い込んでいた世界の事を正しく知っているわけではありません。ただ私の婚約者はお姉様と同じでした。だから……お姉様のノートを見て、私はお姉様が何故こうなったのかを理解しました」
お姉様は「婚約者……?」と呟いてウーログの姿をその目に捕らえる。
ウーログの事が今まで視界に入っていなかったらしい。本当にお姉様は、仕方がないほど馬鹿だ。
「アクノール様、俺はウーログ・カイドィシェフですよ。イエルノの婚約者の。アクノール様にとっては俺の事なんて全く視界には入っていなかったかもしれませんが……、俺はイエルノと一緒に貴方を見てましたよ。俺のことも、イエルノのことも、そしてラスタ様のことも、全員見ていないからこの状況に陥っているのはわかりますか? ラスタ様なんて俺がびっくりするぐらい貴方を警戒している」
「……え」
ウーログの言葉を聞いて、お姉様は驚いたようにラス兄様を見る。ラス兄様は、睨みつけるような鋭い眼光で、お姉様を見ていた。お姉様が怯えたような表情をする。
ああ、もう本当にお姉様は私たちのことなど何一つ見ていなかったのだ。何一つ見ていなかったからこそ、何でラス兄様にこんな表情を向けられるか分かっていない。
お姉様の頭の中では、ラス兄様とも仲良く付き合っていたつもりらしいし……。本当にどういう思い込みだったのだろうか。
「ラ、ラスタ」
「……アクノール様。貴方は本当に、イエルノが言うように全く今まで俺のことも見ていなかったんですね。よく分からない事ばかり言っていて、俺やイエルノがどんな態度を取っても何かにとりつかれたように行動を改めなかった貴方がこんな態度を俺に向けていることに俺は驚いています」
ラス兄様の言葉に、意味が分からないといった様子を見せるお姉様。ラス兄様は、お姉様に対して良い感情何て欠片もないのだ。それこそヒーナが言っていたようにラス兄様の姿こそ、本当にお姉様に一欠けらも心を砕いていない姿なのだろう。
「貴方は最初から俺に対しての様子がおかしかった。俺のことを見ていないのに、俺のことを知っている様子を見せた。そしてイエルノに対してもそうだ。貴方の中にあるイエルノしか見ていなくて、実際に目の前にいるイエルノの事を貴方は見ていなかった。
――俺は、イエルノやウーログと違って、貴方がどうしてそんな風になっていたのかも、何故今になって俺のことをちゃんと見るようになっているかもー―分からない。それに知りたくもない。けど……イエルノはずっと貴方を見てましたよ。貴方が自分の事を見ていなくても、ずっとイエルノは貴方の事を見ていたんだ」
ラス兄様は、そう言ってお姉様の目を真っ直ぐに見ていた。
「お姉様は馬鹿ですね。馬鹿なお姉様……。私はお姉様のこと、大好きよ。でも――大嫌いよ」
「……イ、イエルノ?」
ああ、もう馬鹿なお姉様。
まったく此処まで来ても私の言葉を理解出来ないといった様子のお姉様に私は笑ってしまう。
「――ねぇ、お姉様。お姉様は私の事を全く見ていないでしょう。私が何を好きか、私が何を思っていたか。私が……どうしてお姉様を大嫌いなのか。それも全く考えてこなかったでしょう。――だから、お姉様、お話しましょう」
「え……えっと」
お姉様はうろたえている。
お姉様は乙女げぇむという思い込みが崩れてきている。ざまぁという衝撃で、私がまさかこんなことをするなんて思っていなかったからこそ――お姉様は私をようやく見てくれている。
「……いいから行きましょう。お姉様。私の事をちゃんと見て、私の事をちゃんと考えてください。お姉様を大好きで、大嫌いな私の話をちゃんと聞いてください。”今のお姉様”なら私の言うことをきいてくれますよね?」
お姉様は私の視線が怖かったのか、こくこくと頷く。
その表情は怯えがある。……お姉様が私をこんな風に見てくれるなんて、ゾクゾクする。だって今までお姉様は私を取るに取らない存在と思っていたから。
「では――皆さま、私とお姉様はこれで失礼します。皆さま、此処までの協力を感謝いたします。皆さま本来のパーティーに参加していただければと思います。また、感謝の品はまた後日お渡しいたしますわ」
私はそう言ってカッテシーをして、混乱した表情のお姉様を連れてその場を後にする。デル兄様に視線を向ければ、デル兄様は頷いてくれていた。
――あとは任せた、とでもいう風に。
デル兄様の心がまだお姉様にあって、お姉様との婚約を続けていくつもりならば――、このままデル兄様は一緒に来ただろう。だけどもうデル兄様とお姉様の間には深い溝が出来ている。――だからこそ、デル兄様はこのままヒーナと共に居る。
多分、告白でもそのままするのではないかな。
ありがとうの気持ちを込めて、デル兄様にお辞儀をした。デル兄様との、義理の兄妹のような関係もこれで途切れる。……私とデル兄様の仲が崩れるわけではないけれど、これで完全にデル兄様とお姉様の婚約関係は無くなったのだ。
お姉様を連れて向かったのは空き部屋である。
此処は教師の方に話を通して取ってもらっている。ちなみにウーログとラス兄様も一緒に此処にいてくれている。ラス兄様に関してはお姉様がこのような状況になっても、お姉様が何かやらかすのではないかという不安からここに来たらしい。
……ラス兄様はおかしくなってからのお姉様しか知らない。
お母様が亡くなる前の、優しくて自慢だったお姉様を知らないからだ。ラス兄様にとってずっとお姉様はおかしな人だったからだろう。お姉様がちゃんと現実を見てくれるようになって、ラス兄様とも仲良くなれたらいいのにと思う。それはラス兄様とお姉様次第だけど。
私はお姉様に視線を向ける。
椅子に座り込んだお姉様の身体は震えている。
「さて、改めましてお姉様、何が起こっているかわかりますか?」
お姉様は首を横に振る。
「――お姉様は私にざまぁされました。私が全部整えました。お姉様は……衝撃を与えれば今の状態になると思ったから。良かったです。今のお姉様は私の話をちゃんと聞いてくれて」
「……ざまぁって、イエルノは、私と一緒?」
「いいえ、違います。私はそのお姉様が思い込んでいた世界の事を正しく知っているわけではありません。ただ私の婚約者はお姉様と同じでした。だから……お姉様のノートを見て、私はお姉様が何故こうなったのかを理解しました」
お姉様は「婚約者……?」と呟いてウーログの姿をその目に捕らえる。
ウーログの事が今まで視界に入っていなかったらしい。本当にお姉様は、仕方がないほど馬鹿だ。
「アクノール様、俺はウーログ・カイドィシェフですよ。イエルノの婚約者の。アクノール様にとっては俺の事なんて全く視界には入っていなかったかもしれませんが……、俺はイエルノと一緒に貴方を見てましたよ。俺のことも、イエルノのことも、そしてラスタ様のことも、全員見ていないからこの状況に陥っているのはわかりますか? ラスタ様なんて俺がびっくりするぐらい貴方を警戒している」
「……え」
ウーログの言葉を聞いて、お姉様は驚いたようにラス兄様を見る。ラス兄様は、睨みつけるような鋭い眼光で、お姉様を見ていた。お姉様が怯えたような表情をする。
ああ、もう本当にお姉様は私たちのことなど何一つ見ていなかったのだ。何一つ見ていなかったからこそ、何でラス兄様にこんな表情を向けられるか分かっていない。
お姉様の頭の中では、ラス兄様とも仲良く付き合っていたつもりらしいし……。本当にどういう思い込みだったのだろうか。
「ラ、ラスタ」
「……アクノール様。貴方は本当に、イエルノが言うように全く今まで俺のことも見ていなかったんですね。よく分からない事ばかり言っていて、俺やイエルノがどんな態度を取っても何かにとりつかれたように行動を改めなかった貴方がこんな態度を俺に向けていることに俺は驚いています」
ラス兄様の言葉に、意味が分からないといった様子を見せるお姉様。ラス兄様は、お姉様に対して良い感情何て欠片もないのだ。それこそヒーナが言っていたようにラス兄様の姿こそ、本当にお姉様に一欠けらも心を砕いていない姿なのだろう。
「貴方は最初から俺に対しての様子がおかしかった。俺のことを見ていないのに、俺のことを知っている様子を見せた。そしてイエルノに対してもそうだ。貴方の中にあるイエルノしか見ていなくて、実際に目の前にいるイエルノの事を貴方は見ていなかった。
――俺は、イエルノやウーログと違って、貴方がどうしてそんな風になっていたのかも、何故今になって俺のことをちゃんと見るようになっているかもー―分からない。それに知りたくもない。けど……イエルノはずっと貴方を見てましたよ。貴方が自分の事を見ていなくても、ずっとイエルノは貴方の事を見ていたんだ」
ラス兄様は、そう言ってお姉様の目を真っ直ぐに見ていた。
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