召喚失敗のレッテルを貼られた聖女はケダモノ辺境伯を溺愛する

第二部

15

　ミミアたちが下がったあと、私たちは寝室へ向かった。
　ベッドサイドに座って、唇を合わせる。
「ん……」
　私の方から彼の唇を舌先でトントンと叩くと、すぐに彼の舌が出てきて絡め取ってくれた。
「ふ、ぅ……」
　舌を絡め合い、こしゅこしゅと擦り合わせる。
「んぅ……」
　私の弱いところ、上顎も舌先でつつっとなぞられてぎゅっと彼の夜着を握りしめる。
「んっ」
　夜着の合わせから彼の大きな手が侵入してきて私の胸を掴む。無骨な手なのにやんわりと優しく私の胸を揉んで下着の中に指を入れてくる。
「ふあっ」
　指先で乳首をぴんっと弾かれて私は顔をそらして口づけから逃れる。銀糸が唇を伝ったがそんなもの見ている余裕などなかった。
　指遊びするように乳首を弾かれてんんっと喉を鳴らす。自分でやったとしたらきっとなんにも感じないだろうにどうしてこの人にされるとこんなにも気持ちが良いのだろう。
「はあ……」
　熱い息を漏らしながらアデミル様の首筋に顔を埋める。かすかな白檀の匂いが今は興奮させてくる。
　帯を解かれて前をくつろげられると胸を弄んでいた指がするすると下りていきショーツの中に入ってくる。
　脚を開かされ、彼の指を受け入れやすくさせられる。
「んっ」
　ぽすんっと後ろに押し倒されてベッドの上に脚もあげさせてくれるのかと思えばそのまま指がにゅくりと入ってきた。
「あ、あんっ」
　節くれだった指が奥へ奥へと入ってきて、内壁をにゅるにゅると擦る。
「アデミ、んう」
　また口付けられて声を奪われる。指は内壁をこすりながら花芯を捉えていた。
「んんっ」
　びくっと私の体が震える。花芯を捉えた指がその腹でくりくりと刺激を与えてくる。
「んっ、んぅう」
　舌を絡め取られてしまって私の喘ぎ声はアデミル様に食べられていく。
「んっ、んんっ、んうぅっ」
　アデミル様の指をぎゅうっと締め付けて私が達すると、ずるりと指が引き抜かれた。
　そうしてショーツを剥ぎ取られてうつ伏せに返される。自然と床に膝がついた。
　アデミル様が背後に周り、私の腰を掴む。もう片方の手が私の割れ目を開くように動いたのがわかった。
　ひたり、と熱いものがそこに押し当てられる。次の瞬間に訪れる衝撃を私はもう理解していた。
「あああっ」
　押し入ってきたその質量に私はシーツをぎゅっと握りしめた。初めて迎え入れるわけでもないのに、もう何百回と受け入れてきたのに未だに私の体は彼を迎え入れるたびに初めてのような顔をする。
「シオリ……！」
　アデミル様の息の詰まった声に彼の感じている快楽の度合いを感じ取って嬉しくなる。
　ゆっくりと始まる腰の動き。押し込まれれば詰めた息でこもった声が漏れ、引き抜かれれば弛んだ私の口からはまた違った声が流れた。
「シオリの喘ぐ声はひとつの曲のようだ。美しくてかわいくて天上へと誘う音色だ」
　アデミル様がそんなことを言いながら腰を振る。そんな良いもんじゃない、と言い返そうにも私の口から漏れるのは嬌声ばかりだ。
「あっ、あっ、アデ、ミルさまっ、あんんっ」
「可愛いシオリ、もっと声を聴かせて」
「あ、あんっ、あっ、あっ」
　ぐぷぐぷと結合部から卑猥な音が響く。それをかき消すように私の嬌声が部屋に響き渡った。
「あ、あっ、アデミル様っ、アデミル様、もう、私……！」
「ああ、一緒にイこう……！」
　がくがくと激しく揺さぶられて私は「あ」しか言えない壊れたロボットのような声を漏らしてぎゅうっと一層強くシーツを握りしめた。
「あああんんっ」
「っ……！」
　ごちゅんっと強く叩きつけるように突かれて私は達し、アデミル様もまた私の最奥でその精を放った。
「はあ、はあ……」
「はー……」
　お互いに息を整えながらアデミル様が背中に覆いかぶさってくるのがわかった。温かい感触にホッとする。
　するとずるりとまだ萎えていないはずのアデミル様のペニスが引き抜かれて私はベッドの上に寝かせられた。
　そして脚を開かされ、抱えあげられる。押し付けられる鋒。
「ああっ」
　ずるりとそれがまた入ってきて私の中を満たしていく。
「シオリ、シオリ……！」
　ごつごつと無遠慮なまでに奥を叩きながらアデミル様が私の中で暴れる。私はただシーツにしがみついて受け止めるだけだ。
「あっ、あっあっ」
　けれどシーツにしがみつくだけでは寂しい。
「あでみるさま、あでみるさま、ぎゅって、あっ、ぎゅってしてっ」
「シオリッ」
　腕を伸ばすとアデミル様が身を屈めて私の体を抱きしめる。ああ、この熱もまた私の欲しいものだ。
「愛しいシオリ、愛している、愛しているんだ」
　腰を打ち付けながらアデミル様が低く言う。
「あ、あっ、わ、たしも、あっ、私もっ」
　愛してます、まで言いたいのにアデミル様のせいで言葉にならない。
「シオリ……！」
　ぎゅうっと抱きしめられて全身が幸福感で満たされる。その感覚と快感が混じり合ってとてつもない充実感をもたらしてくれる。
「あんんっ」
　一度達して敏感になっている体はあっという間に二度目の絶頂を迎えて脱力する。
「ああっ」
　しかしまだ達していないアデミル様ががつがつと私を突くのを止めない。
「まって、アデミル様っ、イッたばかりだからっ」
　いつもなら少し休んでくれるアデミル様。けれど今のアデミル様はぐるるるっと低く喉を鳴らしてますます激しく腰を振る。
　駄目だ、興奮しすぎて我を忘れてる……！
「あっ、あっ、んんんぅ！」
　アデミル様はたまにこうなることがあった。一回目ではなったことが無いが二回目以降になるとたまにこうなる。
「あっあっ、ああっ！」
　強すぎる快感は過ぎれば痛みとなる。
「アデミル様、アデミル様っ！」
　正気に戻ってほしくて名を呼ぶけれど効果は見られない。獣そのもののように腰を振って高みを目指している。もう、私には痛みしか感じない。
「っ」
「ひうっ」
　ごんっと子宮口を叩かれてそこに熱を放たれたのがわかった。お、終わった……。
「はあ、はっ、はっ」
「……っシオリ！」
　我に返ったアデミル様が慌ててペニスを引き抜く。その感触ですらもう私には苦痛だった。脳が快楽を痛みだと勘違いしたままなのだ。
「すまない、大丈夫か」
「は、はい……」
「またやってしまった。本当にすまない……」
　しょんぼりするアデミル様がかわいくて、私はうふふと笑うとその体に抱きついた。
「そんなに私の中は気持ちいいですか？」
「それはもう天にも昇るような心地だ」
「なら、いいです。許します」
　するとアデミル様はしゅんとしたまま回数を減らしたほうが良いのだろうか、と言った。
「それはイヤです」
　私は瞬時に拒絶した。手加減されないセックスは辛いときもある。けれど。
「たくさんするのは好きです。愛されてるって感じるから」
「シオリ……」
　でも、と私は苦笑してみせる。
「今夜もう止めておきましょうね。私の頭の中の回路がぐちゃぐちゃになってるんで」
「ああ、すまない……」
「もう謝らないで。ねえ、お風呂もう一度入りましょう？今度は一緒に」
「っああ！」
「体、洗ってくれますか？」
「もちろんだとも！」
　アデミル様は私を抱き上げると風呂場に向かって歩き出した。
　私はその太い首に腕を回して首筋に顔を埋めてすうっと深呼吸をしたのだった。



（続く）