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あっ!という間にヴィルフォア辺境領へ行く日になって馬車で移動した。
馬車、と言っても街道をがたごとと行くわけじゃない。
なんと、空を駆けるのだ。
魔法で馬ごと馬車を浮かせて空を駆けていく。ここ三十年くらいで実用化されたものらしい。
これもまたきっかけは先代聖女の「空飛べば速いじゃない」の一言だったそうだ。
特殊訓練を積んだ御者と馬に飛翔の魔石の組み込まれた馬車。安全性、御者や馬の訓練、運賃などの問題から三十年経ってようやく富裕層が気軽に使えるくらいになったくらいの普及率だがそれでも高い金を払ってでも乗る価値はある。
通常の馬車だとどうしてもある程度の速度でしか走れないが空なら馬が全速力で走っても揺れないのだ。そのあたりの制御も魔石で行われており、安全性も今では抜群である。
そしてそれだけのスピードで走れるということは長距離もあっという間に移動できるわけで。
通常の馬車だと十日かかる王都からヴィルフォア辺境領まで、この天空馬車だと二日で行けるのだ。
それも朝出発して二日目の昼には到着する。実質一日半だ。
ということで私とアリス、そしてレーネを始めとする数名のメイドさんがヴィルフォア辺境領へとたどり着いた。
「おかえりなさいませ、アリス様。ようこそおいでくださいました、ヒナコ様」
大・豪・邸。うわあ。今まで王城で暮らしてたから麻痺してたけどその私でもわかる。これ凄い大豪邸だよね。
「ちょっと、アリスこんな大きな家で育ったの?」
案内されながらひそひそと問いかけるとそうだが?と当たり前のように返される。
「おばあさまが稼ぎに稼いだから金の使い所がなくてな。税金として国に納めるくらいならと屋敷をその都度広くしていたらこうなった。屋敷が広くなればその分使用人も雇えるからな。金の使い所ができるというわけだ」
あ、と足を止めた。アリスも足を止める。
そこには大きな肖像画があった。
白虎の獣人と穏やかな表情をした女性と三人の子どもたち。
「アデンミリヤムおじいさまとシオリおばあさま、そしてその長男のアインダルバスおじいさまと長女のエヴァナスカーヤおばあさま、次男のセレスティノおじいさまだ。アインスおじいさまの息子が私の父のアレキラーゼンで現辺境伯になる」
「先代、本当になんていうか……穏やかそうな女性ね」
「基本的に私たちには優しい方だったが敵対するものには冷酷な面も持ち合わせていた。死の謁見事件やラルディクスの夜事件は習っただろう」
「ああ、問答無用虐殺事件ね」
「おばあさまは舐められるのが何より嫌いな方だった。異世界の女だからと甘く見られるのがたまらなく腹がたつのだそうだ」
「私もやろうと思えば同じことできるみたいだけど使わないで済めばいいな」
「今のところ我が国に敵対しようとする国はいないから大丈夫だろう」
「煙が立てば駆り出されるってこと?」
「その可能性は高いだろうな。王はおそらくそういう意味でもきみを頼りにしている。おばあさまがそうだったように」
「やだなあ」
「それが嫌なら他で功績をたてるしか無い」
「そのための聖女だもんねえ」
「辛いが、私にはそればかりはどうしてやりようもない。バランのように王子であったならもう少しやりようがあったかもしれないが」
「いいよ、もう覚悟はできてるから」
だから、と私はアリスを見上げる。
「そうなったら、私を守ってね」
「勿論だ」
そうして私たちは辺境伯の元へと向かった。
時間的にティータイムを一緒にすることになったのだが、アレキラーゼン辺境伯は人間の姿のアリスによく似ていた。
それとアインダルバス前辺境伯も同席した。エヴァナスカーヤ様はパレヴィスにいるとのことで居らず、セレスティノ様は昔から気ままに旅をしているそうで今どこにいるのか生きているのか死んでいるのかすらわからないのだという。
「ヒナコ殿はアリスのどこに惚れたのかな」
アレキラーゼン様が穏やかに聞いてくる。私は流石にゲームで好きになりましたとは言えないので一目惚れです、と答えた。
「毛並みが黒曜石のように美しかったので一目で好きになりました」
「獣人であることはあなたの恋の妨げにはならなかった?」
「獣人である彼に惹かれたので人間だったら好きになってなかったかもしれません」
「ヒナコ殿はシオリおばあさまと同じニホン人だと聞きましたがニホンの方は獣人に対して寛容なんですか?」
「うーん、獣人自体がいないので逆に物珍しいのはあるかもしれません。だからするっと受け入れられるのかも」
するとそれまでにこにこと話を聞いていたアインダルバス様が口を開いた。
「母上も父上にそういう印象を抱いていたと言っておったわ。あのふたりは本当に仲の良い夫婦だった。ふたりにもそんなふうになってほしいと願っておるよ」
「ありがとうございます」
そんなかんじでまあいい感じでティータイムは終わり、私たちはふたりで教会へと向かった。
予め準備してきた婚姻届を提出しておめでとうございますの言葉をもらって私たちは夫婦となった。
夫婦になるときってこんなにあっさりなるもんなんだな、と思った。
こちらには結婚式という文化は無いそうだ。おばあさまは流行らせなかったのだろうか、と思ったのだが、アリスに聞いたら先代は結婚式は好きじゃない、ということだった。
まあ分かる。たった一日のために半年とか前から準備して呼ばれる方も服どうしようとか迷って。
わかる、私も結婚式はどっちかといえば否定派だ。なくていい。
そしてその足で郊外の墓地へ向かい、先代とその旦那さん、ひいては代々の方々の眠るヴィルフォア家の墓に祈りを捧げ、そこで指輪をはめてもらって屋敷に戻った。
屋敷では当然のようにふたりひと部屋だった。
「ここが私の育った部屋だ。まずは風呂に入ってくると良い」
「う、うん」
アリスも私もどこかぎこちない。まあそうだろう、だって初夜なのだ。緊張しないほうがおかしい。
風呂場に案内してもらって、先に風呂を済ませる。
「ねえレーネ」
風呂から上がり、生活魔法で髪を乾かしてくれているレーネに尋ねる。
「なんでございましょう」
「レーネは始めてのとき痛かった?」
「まあ、それなりには」
「それなり?それなりで終わる?」
「入ってしまえばあとはなんとでもなります」
た、頼もしい。レーネって本当に頼もしいな。
「よし、頑張るね!」
「はい」
意気込む私にレーネが私とアリスの場合は体格差があるからなあと思っていたというのは後で聞いた話である。
ふたりともお風呂から上がって、ベッドに並んで座る。メイドたちはもう下がってもらっていた。
「……ヒナ」
「は、はい」
「その、いい、か?」
「……はい」
くいっと顎先を持ち上げられてちゅっと口付けられる。そして彼の薄い舌がちょんと私の唇をつついて開くように促してくる。
それに従って唇を薄っすらと開くとぬるっと舌が入ってきて舌を絡められた。
「ん……」
唇を角度を変えて合わせたりしながらベッドの上に押し倒される。
バスローブをはだけられて下着があらわになる。下着は今日のために選んだ黒地にピンクのリボンが通された可愛らしいものだ。
「かわいい。ヒナ、かわいい」
アリスもお気に召してくれたようでちゅっちゅとキスをしながらホックを外す。
ショーツもすぐに剥がれてしまった。
「きれいだ」
恥ずかしさをこらえてアリスを見上げると、アリスが私の胸に手を添える。
「可愛いサイズだな」
「そりゃこの世界の人と比べたら小さいわよ」
むすっとするとそんな顔をしないでくれ、と笑われた。
「かわいくてすきだ」
くにんと尖りをつままれて甘い声が鼻を抜けていく。
もう片方をぺちゃりと舐められて吸われる。はじめての感覚に下肢がずんと重くなった。
舌先でころころとそれを転がされながら私は彼の右手が下肢に降りていくのを感じていた。
「あっ」
茂みを通り過ぎてぬるんとそこに指が滑った。私、濡れてる。マジか。いやまあそういうことをしてるんだけど。恥ずかしい。
指はぬるぬると入り口をなぞったあと、アリスが挿れてもいいか、と聞いてきた。
「ん」
私がこくりと頷くとつぷりと指が入ってきた。アリスの手は少し私たちより体温が低くて、だからか指が入ってきた少し体温が低くて、冷たくはないんだけどどこかなんというか、ここにありますよ、と言っているようで必要以上に意識してしまった。
ぬくぬくと抜き差しされて私は身を捩りながらあ、あと声を漏らす。
「きもちいいか?」
「きもちい、あっ、あんっ」
それから暫くの間アリスはそこをほぐすことに熱心で、三本入るようになるまでやめようとしなかった。
「アリス……きて」
私はもうお腹の奥が切なくてそう訴えると、彼はこくりと喉を鳴らして指を引き抜くとバスローブを脱いだ。
「……でかっ」
「まあ、獣人だしな」
「そうだよね、体おっきいもんね、思い至るべきだった……!」
そそり立つそれの大きさにビビっているとアリスが耳をへちょりとさせて今日はやめておくか?と聞いてきた。
「怖ければ慣れるまで待つが……」
私は良いわよ別に、と脚を立てた。
「怖くなんて無いわよ。ちょっとびっくりしただけ。だから挿れて」
「ヒナ……!愛してる」
「私も愛してるわ」
ひたりと熱が押し当てられる感触がして、アリスがキスをしてきた。
「んんんっ」
ぐいっと押し込まれていくそれの衝撃に喉を鳴らす。
い、痛い……!
けれどずるんっとたぶん嵩の張った部分が入り込んだのがわかるとあとは衝撃の残滓だけでずるずると奥へと入り込んできた。
とん、と体の奥に当たった感触がして侵攻が止まった。
「……はあ」
アリスが気持ちよさそうな吐息を漏らした。
「きもちいい?」
「きもちがいい……熱くて狭くて、すぐに持っていかれてしまいそうだ」
「よかった」
「ヒナは?痛くないか?」
「ん、ちょっと痛いけどでも平気。おなかのなか、アリスでいっぱいだあ」
えへへと笑うと中でアリスのものがむくっと更に大きくなったのがわかった。
「おっきくなったね」
「ヒナが挑発するからだ」
恥ずかしそうに言うアリスに私はちゅっとキスをして動いていいよと囁いた。
「ゆっくり、動くからな。痛かったら言うんだぞ」
「うん」
ずる、と少しだけ引き抜かれてまたとちゅんと奥に押し込まれる。それを何度も繰り返して少しずつ引き抜く長さが広がっていってスピードも速くなっていく。
「あ、あっ」
「……っふ、ヒナ、イッていいか、出していいか」
「いいよ、イッて、中で出して……!」
そう言うと同時に今まで以上に動きが速くなりがくがくと揺さぶられる。
「あ、あ、あー!」
「っく」
私がびくびくとつま先をぴんと伸ばして達すると同時にアリスが私の中で熱を放った。
息を乱して抱き合っていると、あれ、と思う。
「アリス……イッたよね?」
「すまない、すぐ萎える」
恥ずかしそうにしているアリスに私はいいよ、と笑った。
「少しだけ待って?そうしたらもう一回しよう?」
「!ああ!」
私は敏感になった体が鎮まるまでアリスとキスをしたり体を触り合ったりして時間を潰した。
そして二回どころか三回もすることになるとは思わなかったのだった。
夢を見た。
あの肖像画の女性が穏やかな笑みをたたえて立っていた。
ありがとう、と彼女は言った。
破滅の運命にあったあの子を救ってくれてありがとうと。
あのゲームは本当にあるはずだったこと?
そう問うと、悲しいけれどそのはずだった、と彼女は言った。
けれどあなたが変えてくれた。アリスを選んでくれた。
ありがとう。私の大切な子とどうか幸せになってね。
そう笑って彼女は消えていった。
私はとても清々しい思いで目を覚ました。
「起きたか」
視線の先には愛しい人の優しい眼差し。
「おはよう、アリス」
「おはよう、ヒナ」
当たり前のように口づけを交わして。笑い合って。
全ては悪役令息キャラに惚れてこの人を幸せにしたいと思ったのが始まり。
今はもう、ひとりの人間として愛している。
ああ、私はこの人と生きていくのだ。
そう、改めて確信した。
「しあわせになろうね」
「ああ、努力していこう」
先代に負けないくらい、仲の良い夫婦だったと言われるくらいになろう。
私はそう心に誓ったのだった。
(終)
馬車、と言っても街道をがたごとと行くわけじゃない。
なんと、空を駆けるのだ。
魔法で馬ごと馬車を浮かせて空を駆けていく。ここ三十年くらいで実用化されたものらしい。
これもまたきっかけは先代聖女の「空飛べば速いじゃない」の一言だったそうだ。
特殊訓練を積んだ御者と馬に飛翔の魔石の組み込まれた馬車。安全性、御者や馬の訓練、運賃などの問題から三十年経ってようやく富裕層が気軽に使えるくらいになったくらいの普及率だがそれでも高い金を払ってでも乗る価値はある。
通常の馬車だとどうしてもある程度の速度でしか走れないが空なら馬が全速力で走っても揺れないのだ。そのあたりの制御も魔石で行われており、安全性も今では抜群である。
そしてそれだけのスピードで走れるということは長距離もあっという間に移動できるわけで。
通常の馬車だと十日かかる王都からヴィルフォア辺境領まで、この天空馬車だと二日で行けるのだ。
それも朝出発して二日目の昼には到着する。実質一日半だ。
ということで私とアリス、そしてレーネを始めとする数名のメイドさんがヴィルフォア辺境領へとたどり着いた。
「おかえりなさいませ、アリス様。ようこそおいでくださいました、ヒナコ様」
大・豪・邸。うわあ。今まで王城で暮らしてたから麻痺してたけどその私でもわかる。これ凄い大豪邸だよね。
「ちょっと、アリスこんな大きな家で育ったの?」
案内されながらひそひそと問いかけるとそうだが?と当たり前のように返される。
「おばあさまが稼ぎに稼いだから金の使い所がなくてな。税金として国に納めるくらいならと屋敷をその都度広くしていたらこうなった。屋敷が広くなればその分使用人も雇えるからな。金の使い所ができるというわけだ」
あ、と足を止めた。アリスも足を止める。
そこには大きな肖像画があった。
白虎の獣人と穏やかな表情をした女性と三人の子どもたち。
「アデンミリヤムおじいさまとシオリおばあさま、そしてその長男のアインダルバスおじいさまと長女のエヴァナスカーヤおばあさま、次男のセレスティノおじいさまだ。アインスおじいさまの息子が私の父のアレキラーゼンで現辺境伯になる」
「先代、本当になんていうか……穏やかそうな女性ね」
「基本的に私たちには優しい方だったが敵対するものには冷酷な面も持ち合わせていた。死の謁見事件やラルディクスの夜事件は習っただろう」
「ああ、問答無用虐殺事件ね」
「おばあさまは舐められるのが何より嫌いな方だった。異世界の女だからと甘く見られるのがたまらなく腹がたつのだそうだ」
「私もやろうと思えば同じことできるみたいだけど使わないで済めばいいな」
「今のところ我が国に敵対しようとする国はいないから大丈夫だろう」
「煙が立てば駆り出されるってこと?」
「その可能性は高いだろうな。王はおそらくそういう意味でもきみを頼りにしている。おばあさまがそうだったように」
「やだなあ」
「それが嫌なら他で功績をたてるしか無い」
「そのための聖女だもんねえ」
「辛いが、私にはそればかりはどうしてやりようもない。バランのように王子であったならもう少しやりようがあったかもしれないが」
「いいよ、もう覚悟はできてるから」
だから、と私はアリスを見上げる。
「そうなったら、私を守ってね」
「勿論だ」
そうして私たちは辺境伯の元へと向かった。
時間的にティータイムを一緒にすることになったのだが、アレキラーゼン辺境伯は人間の姿のアリスによく似ていた。
それとアインダルバス前辺境伯も同席した。エヴァナスカーヤ様はパレヴィスにいるとのことで居らず、セレスティノ様は昔から気ままに旅をしているそうで今どこにいるのか生きているのか死んでいるのかすらわからないのだという。
「ヒナコ殿はアリスのどこに惚れたのかな」
アレキラーゼン様が穏やかに聞いてくる。私は流石にゲームで好きになりましたとは言えないので一目惚れです、と答えた。
「毛並みが黒曜石のように美しかったので一目で好きになりました」
「獣人であることはあなたの恋の妨げにはならなかった?」
「獣人である彼に惹かれたので人間だったら好きになってなかったかもしれません」
「ヒナコ殿はシオリおばあさまと同じニホン人だと聞きましたがニホンの方は獣人に対して寛容なんですか?」
「うーん、獣人自体がいないので逆に物珍しいのはあるかもしれません。だからするっと受け入れられるのかも」
するとそれまでにこにこと話を聞いていたアインダルバス様が口を開いた。
「母上も父上にそういう印象を抱いていたと言っておったわ。あのふたりは本当に仲の良い夫婦だった。ふたりにもそんなふうになってほしいと願っておるよ」
「ありがとうございます」
そんなかんじでまあいい感じでティータイムは終わり、私たちはふたりで教会へと向かった。
予め準備してきた婚姻届を提出しておめでとうございますの言葉をもらって私たちは夫婦となった。
夫婦になるときってこんなにあっさりなるもんなんだな、と思った。
こちらには結婚式という文化は無いそうだ。おばあさまは流行らせなかったのだろうか、と思ったのだが、アリスに聞いたら先代は結婚式は好きじゃない、ということだった。
まあ分かる。たった一日のために半年とか前から準備して呼ばれる方も服どうしようとか迷って。
わかる、私も結婚式はどっちかといえば否定派だ。なくていい。
そしてその足で郊外の墓地へ向かい、先代とその旦那さん、ひいては代々の方々の眠るヴィルフォア家の墓に祈りを捧げ、そこで指輪をはめてもらって屋敷に戻った。
屋敷では当然のようにふたりひと部屋だった。
「ここが私の育った部屋だ。まずは風呂に入ってくると良い」
「う、うん」
アリスも私もどこかぎこちない。まあそうだろう、だって初夜なのだ。緊張しないほうがおかしい。
風呂場に案内してもらって、先に風呂を済ませる。
「ねえレーネ」
風呂から上がり、生活魔法で髪を乾かしてくれているレーネに尋ねる。
「なんでございましょう」
「レーネは始めてのとき痛かった?」
「まあ、それなりには」
「それなり?それなりで終わる?」
「入ってしまえばあとはなんとでもなります」
た、頼もしい。レーネって本当に頼もしいな。
「よし、頑張るね!」
「はい」
意気込む私にレーネが私とアリスの場合は体格差があるからなあと思っていたというのは後で聞いた話である。
ふたりともお風呂から上がって、ベッドに並んで座る。メイドたちはもう下がってもらっていた。
「……ヒナ」
「は、はい」
「その、いい、か?」
「……はい」
くいっと顎先を持ち上げられてちゅっと口付けられる。そして彼の薄い舌がちょんと私の唇をつついて開くように促してくる。
それに従って唇を薄っすらと開くとぬるっと舌が入ってきて舌を絡められた。
「ん……」
唇を角度を変えて合わせたりしながらベッドの上に押し倒される。
バスローブをはだけられて下着があらわになる。下着は今日のために選んだ黒地にピンクのリボンが通された可愛らしいものだ。
「かわいい。ヒナ、かわいい」
アリスもお気に召してくれたようでちゅっちゅとキスをしながらホックを外す。
ショーツもすぐに剥がれてしまった。
「きれいだ」
恥ずかしさをこらえてアリスを見上げると、アリスが私の胸に手を添える。
「可愛いサイズだな」
「そりゃこの世界の人と比べたら小さいわよ」
むすっとするとそんな顔をしないでくれ、と笑われた。
「かわいくてすきだ」
くにんと尖りをつままれて甘い声が鼻を抜けていく。
もう片方をぺちゃりと舐められて吸われる。はじめての感覚に下肢がずんと重くなった。
舌先でころころとそれを転がされながら私は彼の右手が下肢に降りていくのを感じていた。
「あっ」
茂みを通り過ぎてぬるんとそこに指が滑った。私、濡れてる。マジか。いやまあそういうことをしてるんだけど。恥ずかしい。
指はぬるぬると入り口をなぞったあと、アリスが挿れてもいいか、と聞いてきた。
「ん」
私がこくりと頷くとつぷりと指が入ってきた。アリスの手は少し私たちより体温が低くて、だからか指が入ってきた少し体温が低くて、冷たくはないんだけどどこかなんというか、ここにありますよ、と言っているようで必要以上に意識してしまった。
ぬくぬくと抜き差しされて私は身を捩りながらあ、あと声を漏らす。
「きもちいいか?」
「きもちい、あっ、あんっ」
それから暫くの間アリスはそこをほぐすことに熱心で、三本入るようになるまでやめようとしなかった。
「アリス……きて」
私はもうお腹の奥が切なくてそう訴えると、彼はこくりと喉を鳴らして指を引き抜くとバスローブを脱いだ。
「……でかっ」
「まあ、獣人だしな」
「そうだよね、体おっきいもんね、思い至るべきだった……!」
そそり立つそれの大きさにビビっているとアリスが耳をへちょりとさせて今日はやめておくか?と聞いてきた。
「怖ければ慣れるまで待つが……」
私は良いわよ別に、と脚を立てた。
「怖くなんて無いわよ。ちょっとびっくりしただけ。だから挿れて」
「ヒナ……!愛してる」
「私も愛してるわ」
ひたりと熱が押し当てられる感触がして、アリスがキスをしてきた。
「んんんっ」
ぐいっと押し込まれていくそれの衝撃に喉を鳴らす。
い、痛い……!
けれどずるんっとたぶん嵩の張った部分が入り込んだのがわかるとあとは衝撃の残滓だけでずるずると奥へと入り込んできた。
とん、と体の奥に当たった感触がして侵攻が止まった。
「……はあ」
アリスが気持ちよさそうな吐息を漏らした。
「きもちいい?」
「きもちがいい……熱くて狭くて、すぐに持っていかれてしまいそうだ」
「よかった」
「ヒナは?痛くないか?」
「ん、ちょっと痛いけどでも平気。おなかのなか、アリスでいっぱいだあ」
えへへと笑うと中でアリスのものがむくっと更に大きくなったのがわかった。
「おっきくなったね」
「ヒナが挑発するからだ」
恥ずかしそうに言うアリスに私はちゅっとキスをして動いていいよと囁いた。
「ゆっくり、動くからな。痛かったら言うんだぞ」
「うん」
ずる、と少しだけ引き抜かれてまたとちゅんと奥に押し込まれる。それを何度も繰り返して少しずつ引き抜く長さが広がっていってスピードも速くなっていく。
「あ、あっ」
「……っふ、ヒナ、イッていいか、出していいか」
「いいよ、イッて、中で出して……!」
そう言うと同時に今まで以上に動きが速くなりがくがくと揺さぶられる。
「あ、あ、あー!」
「っく」
私がびくびくとつま先をぴんと伸ばして達すると同時にアリスが私の中で熱を放った。
息を乱して抱き合っていると、あれ、と思う。
「アリス……イッたよね?」
「すまない、すぐ萎える」
恥ずかしそうにしているアリスに私はいいよ、と笑った。
「少しだけ待って?そうしたらもう一回しよう?」
「!ああ!」
私は敏感になった体が鎮まるまでアリスとキスをしたり体を触り合ったりして時間を潰した。
そして二回どころか三回もすることになるとは思わなかったのだった。
夢を見た。
あの肖像画の女性が穏やかな笑みをたたえて立っていた。
ありがとう、と彼女は言った。
破滅の運命にあったあの子を救ってくれてありがとうと。
あのゲームは本当にあるはずだったこと?
そう問うと、悲しいけれどそのはずだった、と彼女は言った。
けれどあなたが変えてくれた。アリスを選んでくれた。
ありがとう。私の大切な子とどうか幸せになってね。
そう笑って彼女は消えていった。
私はとても清々しい思いで目を覚ました。
「起きたか」
視線の先には愛しい人の優しい眼差し。
「おはよう、アリス」
「おはよう、ヒナ」
当たり前のように口づけを交わして。笑い合って。
全ては悪役令息キャラに惚れてこの人を幸せにしたいと思ったのが始まり。
今はもう、ひとりの人間として愛している。
ああ、私はこの人と生きていくのだ。
そう、改めて確信した。
「しあわせになろうね」
「ああ、努力していこう」
先代に負けないくらい、仲の良い夫婦だったと言われるくらいになろう。
私はそう心に誓ったのだった。
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