少女王とその奴隷

阿波野治

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初めての狩り③

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 シルヴァーは道なき道を進む。
「外れの浜」からの道は、通り道らしい体裁が最低限整っていたが、今回はただ草むらを突っ切っているだけとしか感じられない。
 女王と愛犬にとっては勝手知ったる道なのだろうが、僕はついていくだけで精いっぱい。道のりの険しさを楽しむように軽快な動きを見せるシロを、心の底から羨ましいと思った。

 にわかにシルヴァーの歩が緩んだ。
 肩越しに前方を窺うと、切り株があった。座るのにちょうどよさそうだと思ったら、案の定、女王はそれの座面を軽く手で払ってから腰を下ろした。

「それではクロ、獲物を狩ってこい」
「この場所で、ですか。ぱっと見、なにもいませんけど」
「たわけが。鳥や獣がわざわざしとめられに来るわけがないだろう。虐待されて喜ぶ変態ではあるまいし」
 ……それもそうだ。

「周りをよく見ろ。たくさんの果物がなっているだろう。それに誘われて鳥が頻繁にやってくる。あたしはそれをここで眺めるのが好きでね。腰かけるのにちょうどいい切り株もあるし」
 四囲を見回すと、確かに、青紫色や赤色の実をつけた樹が至るところに生えている。ただ、今は鳥の姿は見当たらず、鳴き声も聞こえない。

「それでは頑張ってくれ。制限時間は、あたしが飽きて帰るまでだ。この島はそういうふうに時間が流れているからな」
 シルヴァーは薄水色の花の匂いを嗅いでいたシロを呼び寄せ、戯れはじめた。頭をこれでもかというほど撫でてやったあと、僕には聞き取れない小声で話しかけている。シロと遊んでいるときの彼女は、年齢がぐっと幼くなる。

 大物を狩れたら、僕も頭を撫でてもらえるだろうか。たくさん獲物を狩れたら、褒めてくれるだろうか。
 奴隷の身分なのだから多くは望めないにせよ、せめてシロくらいは。

「――よぃ、行こう」
 葉音をできるだけ立てないようにしながら、一人と一匹から遠ざかる。

 手ごろな高さに紫色の果実を見つけ、手を伸ばして一粒ちぎる。少し皮が破れ、微かな甘い匂いが鼻孔に届いた。わずかかばかり露出した果肉は白っぽい黄緑色で、ブドウそっくりだ。
 指の腹で表面をさっと拭い、口に入れる。甘い。皮は柔らかくてそのままで食べられるし、小さな種子の食感も悪くない。昼食が堅いパンだけだった身からすれば、ちょっとした御馳走だ。
 もう一粒、二粒と口に入れて、それ以上はやめておく。
 シルヴァーに見つかったらなにを言われるか分からない。それに、見事に獲物をしとめられれば、ブドウよりも遥かに大きな報酬が得られるはずだ。
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