少女王とその奴隷

阿波野治

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夜と朝③

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 何回、いや何十回、したか分からない。
 シルヴァーが鼻歌を歌いながら軽やかな足取りでベッドまで戻り、シーツが微かな音を立てたのまでは覚えている。
 それを確認したのを最後に、僕はなにもかもを放り出して眠りに落ちた。


* * *


 下半身に湿り気を帯びた快さを感じる。
 わけも分からないまま委ねているうちに、股間が集中的に攻め立てられているのが分かった。行為は執拗に、どこか機械的に反復している。
 時間が経つにつれて、というよりも快感が累積するにつれて、意識が明瞭になっていく。ある程度クリアになると同時、舐められているのだと気づく。
 シルヴァーの、舌。

 永遠に続くかと思われるセックスの連続のさなか、体を何百回何千回と舐められたが、一か所だけは頑なに手をつけてこなかった。僕のその部位は、もっぱら一つの役目だけに用いられてきた。
 この状況で例外が適用されたのは、おそらくは奮い立たせるのに最も効果的だと彼女が考えたからだろう。僕はどうやら絶倫らしいが、さすがに十回を超えると使い物にならなくなる。ただし、相手が美貌の少女であれば話は別だが。

 僕はシルヴァーにいとおしさを感じた。女王ともあろう人が、わざわざ奴隷の相手をしてくださるなんて、これ以上にありがたいことはない。気だるい心地よさと幸福感を噛みしめながら、心の底からそう思った。
 やがて力尽きたように喘ぎ、僕は果てた。

 事後特有の物憂さの中、閉ざされたまぶた越しに明るさを感じる。人工ではなく、天然の光。
 朝が来たのだ。島に流れ着いて初めての朝が。

「おい、起きろ。なにを寝ておる。両目を開け」
 シルヴァーの声が降ってきた。笑いを含んだような声だ。
 ……なぜだろう。とても嫌な予感がする。
 笑い。女王が奴隷に対して、その感情を孕んだメッセージを送りつけてきたとき、どんなことが僕の身に起きた?

「さっきまで刺激を感じていた部位をよく見てみろ」

 なにか湿ったものが股間を軽く撫でた。シルヴァーの手、だと思うのだが、なにかが違っている。瞼を開き、床を手で押して上体を起こす。
 僕の腰の左側にシロがいた。
 視線を感じたらしく、シロは僕の股間から顔へと視線を移し、「ワン」とひと声鳴いた。そして、自らの口元を舐めた。僕の腹部を汚しているものに鼻を近づけ、再び口元に舌を這わせる。

 シルヴァーがささやかな笑声を漏らした。
 はっとして声のほうを見た。
 シルヴァーは僕のかたわら――ではなく、ベッドに腰かけている。瞳こそ普段の彼女らしい冷ややかさを宿しているが、口元はにやけている。笑いを抑え込もうとしているが抑えきれていないような、そんな様子に見える。
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