少女王とその奴隷

阿波野治

文字の大きさ
28 / 85

セックス

しおりを挟む
 消灯後しばらくが経ち、僕がまどろみはじめたころ、セックスの夜が幕を開けた。

 開始早々からクライマックスのような猛攻を受けながら、シルヴァーはなぜ寝込みを襲うような真似をするのだろう、と考える。
 ふと気を抜くと意識が飛びそうになる性的快感。ぶつかり合う肉と肉の乾いた音。その音の合間に断続的に聞こえてくる喘ぎ声の官能性。それらに猛烈に邪魔されて、思案はままならない。

 前進を実質的に封じられたことで、今宵初めて、シルヴァーのセックスの激しさを客観視する。
 よくぞこうも続くものだと、喘ぎ喘ぎ思う。賞賛するのでもなく、軽蔑するのでもなく、ただそう思う。

 僕が果てるたびに、シルヴァーは決まって僕を罵倒した。吐き散らされる言葉は、子ども同士の喧嘩で飛び交うような幼稚で単純なものばかりだが、一方的に攻められた挙げ句に絶頂に至った直後だけに、心に深く刺さる。
 僕はそれが嫌で、終わる瞬間をなるべく先延ばしにしようと、懸命の努力を重ねてきた。
 しかし今となっては、限界まで耐え凌ぐことに固執しなくてもいいかもしれない、と考えが変わりつつある。天秤にかければ、そちらのほうが楽な気がするし、それに、罵倒が快い気もするのだ。

 快感に転化することで苦痛に対処しようとしているのだろうか?
 もしそれが正しいなら、恐ろしい。無意識に行われたことも。味を占めた心が雪崩れ込むように傾斜していく展開も。

 確かなのは、シルヴァーの攻撃的なセックスのみを切り取れば、文句なしに快感だということだ。
 終わりのない絡み合いにはうんざりするし、疲れる。性の捌け口として使われるのも、能動的な働きかけが禁じられるのも、違うと思う。
 しかし、その一点だけは真実だ。
 だからこそ、僕はまんまと呑まれている。

 それにしても、なぜ寝込みを襲うような真似をするのだろう? 女王なのだから、「セックスをするぞ」と有無を言わさずに命じればいいだろうに。
 少し大人しくなったのかと思うと、急に激しく込み上げてくる快感に邪魔されながら、途切れ途切れに、しかし粘り強く思案する中で、不意に浮かんだ考えがある。

 女王だからこそ、面と向かって命じるのが嫌なのだろうか?
 ひとたび浮かぶと、その説が正しいとしか思えなくなった。
 ようするに、プライドだ。女王であるがゆえに高いプライドが、奴隷相手にセックスを要求することを許さないのだ。

 ……でも。
 でも、なぜ、セックスだけなんだ? 道具を作れだの、「ふたご湖」に行くのに付き合えだの、他の命令ならば臆面もなく投げつけてくるのに、なぜセックスだけは主張を控えるんだ? 女王らしさでいえば、性のはけ口になれと有無を言わさずに命じるほうが、ずっとそれらしいではないか。

「――ああっ」
 やがて呆気なく、僕は今宵七回目の絶頂に至った。
 闇夜の中で荒い呼吸がくり返されている。二人分の呼吸音は半ば融け合い、峻別できない。

「また果ておったか。堪え性のないやつめ」
 一区切りがついて遅れること十数秒後、シルヴァーは僕を小馬鹿にした。歓喜を押し殺しているような声だ。
 僕の呼吸はまだ少し速いというのに、女王は早くも再び動きはじめる。

 まことに、まことに、島の夜は長い。
 記憶を失う前に生きていた僕の世界では、どうだったのだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...