少女王とその奴隷

阿波野治

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契約①

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「ベンチを作ってくれ。小屋の外に置く用のベンチだ。景色をのんびりと眺めたいときに利用したい」
 朝食を食べてすぐ、シルヴァーは僕に命じた。ひと足先に食事を終え、外に出たがっていたシロを、自らの手でドアを開けて送り出してやりながらの発言だ。
「昨日今日と働いて、腕も少しは上達したんじゃないか? あたしは、午前中は小屋の中でのんびり過ごす。期待はしとらんが、せいぜい頑張れ」

 記憶喪失の身でありながら、槍や弓矢を知っていたように、ベンチがどんなものなのかは覚えている。
 武器よりも大きい。安全面や座り心地にも配慮しなければならない。槍と弓矢と比べて、工作の難易度は格段に跳ね上がる。
 正直言って、満足がいくものを作れる自信はなかった。しかし、命じられた以上は全力を尽くすしかない。

 座板に誂え向きの木板はストックの中にない。調達しようにも、ナイフとハンマーだけではどうしようもない。手持ちの資材でやりくりするしかなさそうだ。
 代案として思い浮かんだのが、筏のように木の枝を繋ぎ合わせて一枚の板状にする、というもの。

 なるべく真っ直ぐで、長さが同じくらいの枝を見繕っては、蔓で結び合わせていく。条件に見合う枝を選ぶ作業、それがすでに一筋縄ではいかない。本数が揃ったところで結びはじめたが、しっかりと固定できず、蔓を何本も無駄にしてしまう。つい力を入れすぎてしまうせいで、枝は次から次へと折れる。
 苦心の末、かろうじて腰かけられるだけの幅の扁平な束が完成した。

 耐久を確かめるために足で思い切り踏みつけると、乾いた音を立てて真っ二つに折れた。半分になった束を足の下に敷いたまま、しばらくの間固まってしまった。
 束を二重にして耐久度を高める、という対策をすぐに思いついたが、骨が折れる作業を二倍こなさなければならないのだと思うと、気が遠くなった。

 失敗が続くせいで材料が不足してきた。ジャングルで新しく材料を調達し、「まん丸原っぱ」に戻ってくる。

 シロがいつの間にか小屋の外にいて、枝の匂いを嗅いでいる。僕に気がつくと、調達してきたばかりのものに興味を示した。手ごろな大きさの枝をかじったり、猫のように前足で転がしたりと、悪戯をする。
 叱ろうかとも思ったが、足りなくなったらまた調達してくればいいのだからと、不問に付して作業に取り組む。
 僕はシルヴァーから犬よりも下に扱われているが、シロを心から憎いと思ったことはない。股間を舐められて射精した件はさすがにダメージが大きかったが、立ち直れないほどではなかった。

 構ってもらえないと悟ったらしく、シロは壁際で丸くなって眠る態勢に入った。僕は笑みをこぼし、作業に戻った。
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