少女王とその奴隷

阿波野治

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役人来島⑦

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 頭の中で想念をこね回す中で、気がつく。
 モノについてもっと知りたいことを。
 さらには、モノとの会話を通じて、島の外の世界について知りたいと願っていることを。

 ただ、どう切り出せばいいかが悩ましい。
 というよりも、こちらから切り出すのが怖い。
 なにせ僕が置かれている立場は特殊だし、シルヴァー以外の人間と接するのはこれが初めてだ。モノから話を振ってくれれば楽なのだが、残念ながら、彼女は必要なこと以外はしゃべりたがらない人間らしい。

 気まずくはないが、緊張感が漂う雰囲気だったから、ジャングルを抜けて「まん丸原っぱ」に出たときは、ほっとした。降り注ぐ灼熱の陽光さえ、一種の祝福のように感じられた。

「少し破れている。……ああ、あなたが途中で引っかけた」
 食料品置き場に革袋を置き、さあ小屋から出ようというときに、モノが革袋の一つを指差して言った。僕が枝に引っかけて少し破いてしまった、ソーセージが詰め込まれた革袋だ。
 袋に破れていると知ったら、シルヴァーは怒るかもしれない。遅まきながら、そんな懸念が胸に芽生えた。

 基本的に配膳は僕の役目だが、罰として僕の食事が制限されるなどしたさいには、女王自ら食料をとりに行く。小腹が空いたり喉が渇いたりしたときは、奴隷に声をかけずに食料置き場に単身赴く。
 ソーセージは保存食だから、保管するにあたって支障はないとしても、漏れ出す匂いはどうにもならない。
 もしかすると、事態は僕が考えていた以上に深刻なのでは?

 モノは袋の破れ目を凝然と見つめていたが、おもむろに僕のほうを向き、

「仕方ないから、これは私の過失の結果ということにしておいて。わざわざ自分から申告するのではなくて、追及されたときに弁明する形で大丈夫だと思う。陛下は気まぐれで怒りっぽいけど、細かいことにはそれほどこだわらない人だから」

 予想もしなかった言葉をかけられて、僕はどう返事すればいいか分からない。モノの目つきは、僕に返答を要求している。

「どうして、僕をかばうような真似を?」
「罪を引き受けても私のリスクにはならないから。言ったでしょう、陛下は些事にはさほどこだわらない人だと。食料を台無しにしたならまだしも、袋が少し破れただけなのだから。その程度の過失でも、奴隷のあなたであれば厳しく咎められる可能性もあるけど、私ならその心配はない。だから引き受けたまでのこと」
「でも、僕のせいということにしておいたほうが、リスクを排除するという意味では最善の策ですよね」
「分からない? あなたと私は同じ陛下に仕える身。仲間をかばうのは当然でしょう」

 モノは革袋の一つを、ソーセージの革袋の破れ目が隠れる位置に移動させ、立ち上がる。

「さあ、行こう。二人がかりとはいえ、荷物は決して少なくないのだから」
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