43 / 85
役人来島⑧
しおりを挟む
僕をかばう発言を聞いた瞬間、驚愕が胸を襲った。
その強烈な感情は、着弾すると同時に見る見る退潮していき、入れ替わるようにして戸惑いが進出してきた。
しかしその感情も、驚愕と似たような曲線を描きながら萎んでいき、僕の体は芯から温まりはじめた。
モノと出会ったばかりのころは、彼女にはどちらかと言うとネガティブな感情を覚えていた。しかしそれは、モノ個人に対してというよりも、初対面の人間に必然に抱く感情に過ぎなかったのだろう。
女王と奴隷という絶対的な上下関係で結びつけられている限り、絶対に抱くことはないだろう親しみを、僕はモノに抱いた。そのおかげで、荷物を抱えてジャングルを行き来している間、とても穏やかな気持ちでいられた。
革袋を破った失態が尾を引いて、荷物を慎重に扱わなければならないという思いが強かったから、緊張感はほぼ変わらない強さで持続している。モノのほうからなにかしゃべりかけてくるわけではないし、こちらから話しかけることもない。それでも、彼女と過ごす時間は快かった。
「おお、ちょうどよかった。このまま長く待たされるようだったら、お前たちをどうしてやろうかと考えていたところだよ」
「三日月浜」に出た瞬間、空になった絨毯に腰を下ろしたシルヴァーがそう声をかけてきた。
モノが女王へと真っ直ぐに歩み寄り、荷物を全て小屋まで運んだと伝えた。それに続いて、本日三度目となる女性二人きりでの会話になる。
「ああ、そうそう。言い忘れていたが、物資を届ける間隔を変更するように言っておいてくれ。二週間から少し縮めて、十日に」
「クロが島民になったことと関係がおありで?」
「いや、それは無関係だ。二週間は少し長いから、変更するよう伝えたいと前々から思っていたのだよ。なにか不都合はあるか?」
「いえ。私は陛下と大陸とを橋渡しするのが仕事で、陛下の意見に物申す権利はありませんから」
「よくわきまえているじゃないか。そのことと、食料の量を増やすこと、この二つを忘れずに伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
モノはシルヴァーに深々とお辞儀をし、僕に向かってほんの浅く頭を下げ、舟を海上まで押し戻して方向転換させた。舟に乗り込み、シルヴァーに対して再び頭を下げ、オールを漕ぎはじめる。
「さっさと帰るぞ。眠たくなったから昼寝がしたい。お前にしてもらいたい仕事もあるしな」
最短でも舟が見えなくなるまでこの場所にいたかったのに、シルヴァーはさっさと踵を返した。
その強烈な感情は、着弾すると同時に見る見る退潮していき、入れ替わるようにして戸惑いが進出してきた。
しかしその感情も、驚愕と似たような曲線を描きながら萎んでいき、僕の体は芯から温まりはじめた。
モノと出会ったばかりのころは、彼女にはどちらかと言うとネガティブな感情を覚えていた。しかしそれは、モノ個人に対してというよりも、初対面の人間に必然に抱く感情に過ぎなかったのだろう。
女王と奴隷という絶対的な上下関係で結びつけられている限り、絶対に抱くことはないだろう親しみを、僕はモノに抱いた。そのおかげで、荷物を抱えてジャングルを行き来している間、とても穏やかな気持ちでいられた。
革袋を破った失態が尾を引いて、荷物を慎重に扱わなければならないという思いが強かったから、緊張感はほぼ変わらない強さで持続している。モノのほうからなにかしゃべりかけてくるわけではないし、こちらから話しかけることもない。それでも、彼女と過ごす時間は快かった。
「おお、ちょうどよかった。このまま長く待たされるようだったら、お前たちをどうしてやろうかと考えていたところだよ」
「三日月浜」に出た瞬間、空になった絨毯に腰を下ろしたシルヴァーがそう声をかけてきた。
モノが女王へと真っ直ぐに歩み寄り、荷物を全て小屋まで運んだと伝えた。それに続いて、本日三度目となる女性二人きりでの会話になる。
「ああ、そうそう。言い忘れていたが、物資を届ける間隔を変更するように言っておいてくれ。二週間から少し縮めて、十日に」
「クロが島民になったことと関係がおありで?」
「いや、それは無関係だ。二週間は少し長いから、変更するよう伝えたいと前々から思っていたのだよ。なにか不都合はあるか?」
「いえ。私は陛下と大陸とを橋渡しするのが仕事で、陛下の意見に物申す権利はありませんから」
「よくわきまえているじゃないか。そのことと、食料の量を増やすこと、この二つを忘れずに伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
モノはシルヴァーに深々とお辞儀をし、僕に向かってほんの浅く頭を下げ、舟を海上まで押し戻して方向転換させた。舟に乗り込み、シルヴァーに対して再び頭を下げ、オールを漕ぎはじめる。
「さっさと帰るぞ。眠たくなったから昼寝がしたい。お前にしてもらいたい仕事もあるしな」
最短でも舟が見えなくなるまでこの場所にいたかったのに、シルヴァーはさっさと踵を返した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる