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力について
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咲子はおもむろに真一を正視した。
「その力は今すぐに行使できますか? 対象に会って呪文をかけるとか、そういう工程を挟まないと無理?」
「力を使うには、エネルギーですね。ええと、これは誰にでも分かりやすい言葉をあえて使っているのですが、とにかくエネルギーを溜めないことには始まりません。前例を鑑みるに、充電に要する時間は約三日。つまり、非常に申し訳ないのですが、三日間はまったくみなさまのお役に立てない、単なる食客としてこの地区で過ごさせていただく形になりますね。はい」
力の説明は全てアドリブだ。不自然だと思われていないだろうか? のちのち自分の首を絞めるようなことを口走らなかっただろうか? クーラーがきいていなければ滝のように汗をかいていたに違いない。
「つまり三日間待ちさえすれば、確実に虎を殺してもらえるということですね?」
「はい。一言に要約すればそうなります」
「なるほど。よくわかりました」
地区長は唇を閉ざして自らの膝頭に目を落とす。長考の気配をひしひしと感じる。早く楽にしてくれ、と真一は心の中でつぶやく。テレパシーが届いたとでもいうように咲子は顔を上げた。
「それでは三日間、沖野さんは地区の住人の家に寝泊まりをして、虎を殺すための準備を整えてください。小毬には宿泊施設がないので、申し訳ないですが」
「よろしいんですか?」
「もちろんです。虎退治は私の、というよりも小毬地区の住人全員の悲願ですから。……まあ、全員というのは語弊があるけど」
表情が陰ったようにも見えたが、すぐに微笑が取って代わった。真一の目には、ひょっとすると自分よりも年下かもしれないと感じさせる、若々しく魅力的なほほ笑みだ。
「助かります、地区長さま。金銭を持ち歩かない身ゆえに、食事と宿の確保には日々苦労しているので。ほんとうに、ほんとうに、ありがたいです」
「助けてもらう立場として当然のことをしたまでです。さっそくですが家まで案内しますね。沖野さんはお疲れのようなので、今日のところは全てを忘れてゆっくりお休みください」
二人はソファから立つ。真一はグラスをあおって空にし、輪袈裟を身に着けながら、
「私が世話になるお家には、どのようなかたがお住まいなのですか。まだ許可はとっていませんが、許諾してくださるでしょうか」
「心配はご無用です。あいつに拒む権利なんてないから」
「えっ?」
「いえ、こちらの話です。……ああ、笠と杖を忘れないでくださいね」
「その力は今すぐに行使できますか? 対象に会って呪文をかけるとか、そういう工程を挟まないと無理?」
「力を使うには、エネルギーですね。ええと、これは誰にでも分かりやすい言葉をあえて使っているのですが、とにかくエネルギーを溜めないことには始まりません。前例を鑑みるに、充電に要する時間は約三日。つまり、非常に申し訳ないのですが、三日間はまったくみなさまのお役に立てない、単なる食客としてこの地区で過ごさせていただく形になりますね。はい」
力の説明は全てアドリブだ。不自然だと思われていないだろうか? のちのち自分の首を絞めるようなことを口走らなかっただろうか? クーラーがきいていなければ滝のように汗をかいていたに違いない。
「つまり三日間待ちさえすれば、確実に虎を殺してもらえるということですね?」
「はい。一言に要約すればそうなります」
「なるほど。よくわかりました」
地区長は唇を閉ざして自らの膝頭に目を落とす。長考の気配をひしひしと感じる。早く楽にしてくれ、と真一は心の中でつぶやく。テレパシーが届いたとでもいうように咲子は顔を上げた。
「それでは三日間、沖野さんは地区の住人の家に寝泊まりをして、虎を殺すための準備を整えてください。小毬には宿泊施設がないので、申し訳ないですが」
「よろしいんですか?」
「もちろんです。虎退治は私の、というよりも小毬地区の住人全員の悲願ですから。……まあ、全員というのは語弊があるけど」
表情が陰ったようにも見えたが、すぐに微笑が取って代わった。真一の目には、ひょっとすると自分よりも年下かもしれないと感じさせる、若々しく魅力的なほほ笑みだ。
「助かります、地区長さま。金銭を持ち歩かない身ゆえに、食事と宿の確保には日々苦労しているので。ほんとうに、ほんとうに、ありがたいです」
「助けてもらう立場として当然のことをしたまでです。さっそくですが家まで案内しますね。沖野さんはお疲れのようなので、今日のところは全てを忘れてゆっくりお休みください」
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