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僕はきっと真剣な顔をしているのだろう。スイッチをオンからオフ、あるいはオフからオンにしたように、翡翠も真面目な顔つきになった。
「裕也は、予知能力は本物ではないと考えていたよね。私が自殺願望を抱いているから、自分を殺してくれる人間を探していて、同じ孤独な境遇にいる裕也に白羽の矢を立てた、という説を唱えていた。その前には、単に友達になりたかったからだ、と考えてもいた」
「よく覚えているね。翡翠のおかげで思い出したけど、うん、確かにそうだ。僕はそう考えたし、その考えを翡翠に伝えた。翡翠から自殺願望を取り除きたいというのが、僕が翡翠と一緒に遊ぶようになったきっかけだったね」
「途中からは、私の自殺のことは全然意識していなかったよね。裕也も、私自身も」
「結局、真相はどういうことなの? 僕に『君は私を殺すよ』という言葉をかけた真相は」
「裕也と友達になりたい気持ち、自殺の危機から救ってほしい気持ち、両方あったと思う。でも、それが一番の動機ではなかった。当時は言語化できなかったんだけど」
「うん」
「私の異常性を肯定してくれる人が欲しかったの。教室では生徒とは一切しゃべらない転校生から、下校途中にいきなり、『君は私を殺すよ』なんていう意味不明な言葉をかけられたとしても、異常だと否定したり拒絶したりしない、そんな異常極まる人間と出会いたかった」
二十年の時を経て明かされた事実は、今までに予想したどの可能性とも違っていた。それでいて、二十年前、その言葉をかけられた瞬間に、その正解が分かっていたような気もする。
「異常性を認めてほしいのと、友達になりたいのは同じようなものじゃないか、と思ったかもしれないけど、私の中ではイコールではなかったの。私、父親から虐待されていたでしょう。異常性が肯定された事実を、つらくて苦しくて死にたくなる毎日を乗り越えるための糧にしたかったんだと思う。常に寄り添ってほしい、救いの手を差し伸べてくれる人になってほしい、ということではなくて。だけど、後日裕也が思いがけない提案してくれて、人付き合いが苦手なくせに私はそれに応じて。紆余曲折あって、こうして二人で生きている」
「ということは、予知能力は嘘だったんだね」
「当たり前でしょう。深く考えずに口にした予想が偶然当たったことならあるけど、そんなのは誰にでもあることだし、みんなと比べて的中率が高いわけでもない。予知能力なんて、最初からなかった」
「……そっか。そうなんじゃないかって予想はしていたけど、本人の口からきっぱりと否定されると、変な寂しさがあるね」
「失望した?」
「いや、全く。僕たちの仲人役を務めてくれたんだから、むしろ感謝してる。翡翠がミステリアスな人だったからこそ、柄にもなく積極的になれたんだと思うし」
「今ではすっかり普通の人間になってしまったけど」
「そうだね。でも、普通とか普通じゃないとか、どうでもいいよ。二人でいられるなら、それでいい。それだけでいい」
翡翠は深く頷き、椅子から腰を上げる。
「そろそろ休憩にしない? キャンディを食べながら、リビングでいちゃいちゃしようよ」
「そうしよう」
差し伸べられた翡翠の手を握り、椅子から立ち上がる。寄り添いながら僕たちは書斎を出て行く。
今日は何味のキャンディを食べよう?
選択肢は、ありあまるほどある。
「裕也は、予知能力は本物ではないと考えていたよね。私が自殺願望を抱いているから、自分を殺してくれる人間を探していて、同じ孤独な境遇にいる裕也に白羽の矢を立てた、という説を唱えていた。その前には、単に友達になりたかったからだ、と考えてもいた」
「よく覚えているね。翡翠のおかげで思い出したけど、うん、確かにそうだ。僕はそう考えたし、その考えを翡翠に伝えた。翡翠から自殺願望を取り除きたいというのが、僕が翡翠と一緒に遊ぶようになったきっかけだったね」
「途中からは、私の自殺のことは全然意識していなかったよね。裕也も、私自身も」
「結局、真相はどういうことなの? 僕に『君は私を殺すよ』という言葉をかけた真相は」
「裕也と友達になりたい気持ち、自殺の危機から救ってほしい気持ち、両方あったと思う。でも、それが一番の動機ではなかった。当時は言語化できなかったんだけど」
「うん」
「私の異常性を肯定してくれる人が欲しかったの。教室では生徒とは一切しゃべらない転校生から、下校途中にいきなり、『君は私を殺すよ』なんていう意味不明な言葉をかけられたとしても、異常だと否定したり拒絶したりしない、そんな異常極まる人間と出会いたかった」
二十年の時を経て明かされた事実は、今までに予想したどの可能性とも違っていた。それでいて、二十年前、その言葉をかけられた瞬間に、その正解が分かっていたような気もする。
「異常性を認めてほしいのと、友達になりたいのは同じようなものじゃないか、と思ったかもしれないけど、私の中ではイコールではなかったの。私、父親から虐待されていたでしょう。異常性が肯定された事実を、つらくて苦しくて死にたくなる毎日を乗り越えるための糧にしたかったんだと思う。常に寄り添ってほしい、救いの手を差し伸べてくれる人になってほしい、ということではなくて。だけど、後日裕也が思いがけない提案してくれて、人付き合いが苦手なくせに私はそれに応じて。紆余曲折あって、こうして二人で生きている」
「ということは、予知能力は嘘だったんだね」
「当たり前でしょう。深く考えずに口にした予想が偶然当たったことならあるけど、そんなのは誰にでもあることだし、みんなと比べて的中率が高いわけでもない。予知能力なんて、最初からなかった」
「……そっか。そうなんじゃないかって予想はしていたけど、本人の口からきっぱりと否定されると、変な寂しさがあるね」
「失望した?」
「いや、全く。僕たちの仲人役を務めてくれたんだから、むしろ感謝してる。翡翠がミステリアスな人だったからこそ、柄にもなく積極的になれたんだと思うし」
「今ではすっかり普通の人間になってしまったけど」
「そうだね。でも、普通とか普通じゃないとか、どうでもいいよ。二人でいられるなら、それでいい。それだけでいい」
翡翠は深く頷き、椅子から腰を上げる。
「そろそろ休憩にしない? キャンディを食べながら、リビングでいちゃいちゃしようよ」
「そうしよう」
差し伸べられた翡翠の手を握り、椅子から立ち上がる。寄り添いながら僕たちは書斎を出て行く。
今日は何味のキャンディを食べよう?
選択肢は、ありあまるほどある。
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