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優ちゃん
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優ちゃんは僕の姉の一人娘で、現在小学二年生。おてんばな性格で、姉曰く、「生まれてからずっと反抗期」。小学校の入学祝いに両親からプレゼントされた子供向けの携帯電話を、「ださいから」という理由で受け取った二分後に破壊した、という伝説の持ち主だ。
優ちゃんは放課後にいつも、僕が住むアパートに遊びに来る。その時間帯、僕は時間を自由に使えるので、思う存分遊んであげられる。優ちゃんは甘いものが好物なので、スイーツは常に冷蔵庫に用意してある。運転免許を持っているので、帰りが遅くなれば車で家まで送ってあげられる。優ちゃんからしてみれば、僕は凄まじく好都合な遊び相手に違いない。「甘やかすな」と姉からはきつく言われているが、僕は子供が好きだし、優ちゃんはかわいい。姉にどやされる日々は、住む家が別々になっても終わりそうにない。
その日も優ちゃんは、学校帰りに僕の部屋まで遊びに来た。
「駐車場の木でセミが鳴いている」と言うので、虫取り網と虫籠を手に外に出る。銀杏の木の幹にセミがいるのを見つけたが、惜しいところで捕り逃がしてしまった。セミの声はもう、どこからも聞こえてこない。優ちゃんは機嫌を損ねてしまった。
優ちゃんをなだめつつ部屋に戻り、気を取り直しておやつを食べることにする。今日のおやつは、近所の洋菓子店で買った十六個入りのシュークリーム。優ちゃんはりんごジュース、僕は紅茶を飲みながら、一口サイズのそれを食べる。取り分は、優ちゃんが十二個で、僕が四個。優ちゃんが多めにとるのが僕たちにとっての半分こなのだ。
食べ終わると、僕たちは公園でサッカーをした。優ちゃんはわざと変な方向に、しかも思い切りボールを蹴飛ばすので、ボールを追いかける僕は息つく暇もない。半べそをかいて走り回る僕を見て、優ちゃんは無邪気に笑い転げている。
姉そっくりの、殺したいくらい憎らしい笑顔で。
優ちゃんは放課後にいつも、僕が住むアパートに遊びに来る。その時間帯、僕は時間を自由に使えるので、思う存分遊んであげられる。優ちゃんは甘いものが好物なので、スイーツは常に冷蔵庫に用意してある。運転免許を持っているので、帰りが遅くなれば車で家まで送ってあげられる。優ちゃんからしてみれば、僕は凄まじく好都合な遊び相手に違いない。「甘やかすな」と姉からはきつく言われているが、僕は子供が好きだし、優ちゃんはかわいい。姉にどやされる日々は、住む家が別々になっても終わりそうにない。
その日も優ちゃんは、学校帰りに僕の部屋まで遊びに来た。
「駐車場の木でセミが鳴いている」と言うので、虫取り網と虫籠を手に外に出る。銀杏の木の幹にセミがいるのを見つけたが、惜しいところで捕り逃がしてしまった。セミの声はもう、どこからも聞こえてこない。優ちゃんは機嫌を損ねてしまった。
優ちゃんをなだめつつ部屋に戻り、気を取り直しておやつを食べることにする。今日のおやつは、近所の洋菓子店で買った十六個入りのシュークリーム。優ちゃんはりんごジュース、僕は紅茶を飲みながら、一口サイズのそれを食べる。取り分は、優ちゃんが十二個で、僕が四個。優ちゃんが多めにとるのが僕たちにとっての半分こなのだ。
食べ終わると、僕たちは公園でサッカーをした。優ちゃんはわざと変な方向に、しかも思い切りボールを蹴飛ばすので、ボールを追いかける僕は息つく暇もない。半べそをかいて走り回る僕を見て、優ちゃんは無邪気に笑い転げている。
姉そっくりの、殺したいくらい憎らしい笑顔で。
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