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赤く蒼い星 二
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「フクシマの立ち入り禁止区域で捕まえた妖精を閉じ込めているんだ」などと主張する、がさがさと揺れる小さな紙箱を抱えた、やけに老け顔の子どもに話しかけられるとか。
目と目の間隔が離れた男の顔写真を胸に抱いた、どこか囚人服を思わせるぶかぶかのオレンジ色の服を着た男が、道端に佇んでいるのを目撃するとか。
ファミレス前の路上で、色も大きさも形もスダチくらいのボールを懐から取り出してはばら撒いている、キツネの面を被った和装の女を見かけるとか。
道中では、そんなちょっと奇妙な光景を立て続けに目撃する、なんていう出来事もあった。
だけど、それらはあくまでも本筋とは無関係の挿話。幻覚アンチのリアリストである母さんに「幻覚でしょ」と一蹴されそうでもあるので、全部すっ飛ばして、スーパーに着いたところから語ろうと思う。
俺は空のかごを手にスーパーマーケットSの店内を歩き回った。あの子が店に来ていないかを探したわけだ。
今になって思えば、Sには割と広めのイートインスペースが用意されているんだから、しかも出入口のすぐそばっていう好立地なんだから、そこで張り込みをしていればよかった。だけど当時はそんなことには気づかずに、店内をただひたすらうろうろ、うろうろしていたよ。
半時間近く歩き回ったんだけど、あの子は見つからなかった。
もちろん落胆したよ。引き下がりたくない気持ちも少なからずあった。でも、今日のところは諦めて帰ることにして、カップ麺やら総菜パンやらを適当にかごに入れて、レジ待ちの列の最後尾についた。
二秒後、俺は我が目を疑った。
床から天井まであるガラス窓に沿ってずらっと続いているサッカー台の隅、電子レンジや電気ポットが置かれている場所で、見覚えのある少女が商品を袋詰めしているんだよ。
肩の長さの少し褪せた黒髪、シャツに穴だらけのジーパンというラフな服装、そこはことなく薄幸そうで怪しげな独特の雰囲気――まぎれもなく昨日のあの子だ。
込み上げてきた歓喜はすさまじかったね。最初に来たのは驚きだったけど、すぐにどこかへ飛び去って、喜びで胸がいっぱいになった。再会を果たせたのもうれしかったし、マイバッグを持参するんじゃなくて、レジで買ったビニール袋に商品を詰めているのにも好感が湧いた。ちっぽけなことだけど、俺もレジ袋は店で買う派だから。
あの子は事務的に袋詰めをすませると、さっさと店を出た。
歩くのは早くない。体の小ささ相応に歩幅も狭くて、むしろ遅いほうなんだけど、淡々としていて動作に無駄がないせいか、実質以上に速く動いているように感じられて、焦燥感が滲み出してきた。
俺はおばさんAとおばさんBに前後を挟まれて身動きがとれない。無意識に、薄汚れたスニーカーの靴底で床を神経質に踏み鳴らしていた。もちろん、列から離脱しようと思えばすぐにでもできたんだけど、焦るあまりその選択肢が頭から抜け落ちていたんだよ。
目と目の間隔が離れた男の顔写真を胸に抱いた、どこか囚人服を思わせるぶかぶかのオレンジ色の服を着た男が、道端に佇んでいるのを目撃するとか。
ファミレス前の路上で、色も大きさも形もスダチくらいのボールを懐から取り出してはばら撒いている、キツネの面を被った和装の女を見かけるとか。
道中では、そんなちょっと奇妙な光景を立て続けに目撃する、なんていう出来事もあった。
だけど、それらはあくまでも本筋とは無関係の挿話。幻覚アンチのリアリストである母さんに「幻覚でしょ」と一蹴されそうでもあるので、全部すっ飛ばして、スーパーに着いたところから語ろうと思う。
俺は空のかごを手にスーパーマーケットSの店内を歩き回った。あの子が店に来ていないかを探したわけだ。
今になって思えば、Sには割と広めのイートインスペースが用意されているんだから、しかも出入口のすぐそばっていう好立地なんだから、そこで張り込みをしていればよかった。だけど当時はそんなことには気づかずに、店内をただひたすらうろうろ、うろうろしていたよ。
半時間近く歩き回ったんだけど、あの子は見つからなかった。
もちろん落胆したよ。引き下がりたくない気持ちも少なからずあった。でも、今日のところは諦めて帰ることにして、カップ麺やら総菜パンやらを適当にかごに入れて、レジ待ちの列の最後尾についた。
二秒後、俺は我が目を疑った。
床から天井まであるガラス窓に沿ってずらっと続いているサッカー台の隅、電子レンジや電気ポットが置かれている場所で、見覚えのある少女が商品を袋詰めしているんだよ。
肩の長さの少し褪せた黒髪、シャツに穴だらけのジーパンというラフな服装、そこはことなく薄幸そうで怪しげな独特の雰囲気――まぎれもなく昨日のあの子だ。
込み上げてきた歓喜はすさまじかったね。最初に来たのは驚きだったけど、すぐにどこかへ飛び去って、喜びで胸がいっぱいになった。再会を果たせたのもうれしかったし、マイバッグを持参するんじゃなくて、レジで買ったビニール袋に商品を詰めているのにも好感が湧いた。ちっぽけなことだけど、俺もレジ袋は店で買う派だから。
あの子は事務的に袋詰めをすませると、さっさと店を出た。
歩くのは早くない。体の小ささ相応に歩幅も狭くて、むしろ遅いほうなんだけど、淡々としていて動作に無駄がないせいか、実質以上に速く動いているように感じられて、焦燥感が滲み出してきた。
俺はおばさんAとおばさんBに前後を挟まれて身動きがとれない。無意識に、薄汚れたスニーカーの靴底で床を神経質に踏み鳴らしていた。もちろん、列から離脱しようと思えばすぐにでもできたんだけど、焦るあまりその選択肢が頭から抜け落ちていたんだよ。
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