鏖の季節

阿波野治

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「そういえば、玲奈。玲奈が川真田さんとは別々に昼食をとっていることについて、川真田さんたちからなにか言われてない? こっそりわたしといっしょにお昼を食べていることがばれて、玲奈が酷い目に遭わされるかもしれないと思うと、心配で」

 あるとき、真理愛は前々から抱いていた懸案事項について玲奈に尋ねてみた。いつもの木陰のベンチで、談笑しながら昼食をとっているさなかのことだ。
 真理愛の唐突な発言に玲奈は目を丸くした。しかしすぐに、本日の空模様のように爽やかな笑みを咲かせた。

「大丈夫だよ。全然疑われてない。まりりんとの関係がどうこうとか、今までに一回も言われたことないもん」
「そうなんだ。玲奈が決まっていなくなっているのに、言及はいっさいなしって、逆に不自然なような……」
「樹音はそんな細かいことは気にしないよ。あいつはメンバー一人一人が大事っていうよりも、みんなからちやほやされて、輪の中心で威張り散らせればそれで満足だから。私の代わりに、他のみんなが一生懸命樹音の機嫌をとっているんだって思うと、ざまあみろって感じ」
「それ、なんていうか、さびしいね」
「さびしい? どういうこと?」

 アスパラのベーコン巻きを掴んだばかりの箸を虚空に停止させ、訊き返してきた。真理愛は少し考えてからこう答えた。

「だって、本当の友だちじゃないみたいで」
「樹音とグループの他の女子たちがってこと? そりゃそうでしょ」
「えっ?」
「私もそうだけど、周りは誰も樹音が友だちだとは思っていないよ。つるんでいて楽しいやつだとは思うけど――どう言えばいいのかな。少年漫画とか青春ドラマなんかで描かれているみたいな意味での友だち、という認識はしていないんじゃないかな。そんな爽やかで気持ちいい関係では」

 言葉の続きは、箸につまんだおかずを食べたあとで述べられた。

「樹音のほうでは、私たちとはまた違った認識かもしれないけどね。自分の命令をなんでも聞いてくれる、召使いみたいな人間こそが真の友だちだって思い込んでいるのかもしれない。でも、その友情観は歪んでいるよね。本物じゃない友情。……まりりんが言った『さびしい』の意味、なんとなくわかったかもしれない」
 玲奈は少し黙ったあと、「箸、止まってるよ」と真理愛に指摘し、別のおかずに箸をつける。

 水筒から注いだ茶をちびちびと飲みながら真理愛はこう考えた。
 わたしと玲奈は「真の友だち」だよね? 元はいじめっ子・いじめられっ子の関係だけど、今は立派な友だち同士だよね? トモノリに「友だちだよね?」って確認を求めて、「友だちだよ」と返してもらえなかった過去が頭を過ぎって、もしかしたらっていう思いがあるから、怖くて確認はとれないけど……。
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