45 / 107
45
しおりを挟む
隼人としては、トモノリは魯鈍な男だと思い込みたかった。真理愛は己の精神状態を安定あせるために利用しているだけで、十代の少女の恋愛対象には値しない人間だと。
しかし、無理があった。
トモノリは言動にほとんど感情を込めないという意味で、隼人が定義する魯鈍な人間に属する。しかし、工作をする姿は活き活きとしていた。手際がよく、洗練されている印象を受けた。真理愛と会話するさいの、唇が滑らかに動くさまや、彼の発言に対する彼女のリアクションを見た限り、語り口はなかなか巧妙のようだ。
だからこそ、隼人はトモノリに対して攻撃的な気持ちになる。
なにか襤褸を出さないだろうか。たとえば、浅ましい下心から湯田さんに危害を及ぼそうと試みる、だとか。そうすれば、心置きなくあの男に制裁を加えられるのに――。
隼人が真理愛とトモノリを同時に想うとき、決まっておどろおどろしい破壊衝動が伴う。
玲奈にもトモノリにも嫉妬する彼は、行き場のない感情の捌け口を無意識に求めていた。
放課後、真理愛と玲奈ははじめて下校をともにすることになった。樹音が別のクラスの女友だちといっしょに帰るということで、残された玲奈たち取り巻き一同は、相談の結果ばらばらに帰ることになったのだ。
「残りもの同士で集団行動をとるんじゃなくてさ、たまには各自勝手に帰る形式でよくない? どうせ明日以降またいっしょになるんだから」
そう発言して、どっちつかずだった一同の気持ちを確定させたのは、玲奈だった。
玲奈は樹音が不在の場合、リーダー的な役回りを演じることが多い。樹音のように有無を言わさない暴君として振る舞うのではなく、言葉を巧みに操り、みなの言動を自らが望む方向に誘導するのだ。しかもそれを、みなからの恨みを買うことなく、玲奈が犯人だと悟られずにやってのける。彼女のそのような一面を知っている隼人でなければ、場をコントロールしているのが神宮寺玲奈だとはまず気がつけないだろう。
玲奈はこの機会を利用して、真理愛と時間を共有しようとしている。隼人はそう看破した。
先に教室を後にしたのは玲奈で、真理愛に目で合図を送ったのを隼人は見逃さなかった。少し遅れて教室を出た真理愛を追跡すると、案の定、校庭の隅の秘密のベンチへ向かった。そこで玲奈が待っていたのも予想どおりだ。
玲奈はすぐさまベンチから立ち、二人は肩を並べて移動を開始した。自転車通学の真理愛のために駐輪場に寄り、それから正門を潜る。
二人は話に夢中で、後方を含む周囲への注意が疎かになっている。現在は下校時間。同じ方向に向かう生徒であふれていて、流動的な障害物となっている。尾行するにはうってつけの環境というわけだ。
しかし、無理があった。
トモノリは言動にほとんど感情を込めないという意味で、隼人が定義する魯鈍な人間に属する。しかし、工作をする姿は活き活きとしていた。手際がよく、洗練されている印象を受けた。真理愛と会話するさいの、唇が滑らかに動くさまや、彼の発言に対する彼女のリアクションを見た限り、語り口はなかなか巧妙のようだ。
だからこそ、隼人はトモノリに対して攻撃的な気持ちになる。
なにか襤褸を出さないだろうか。たとえば、浅ましい下心から湯田さんに危害を及ぼそうと試みる、だとか。そうすれば、心置きなくあの男に制裁を加えられるのに――。
隼人が真理愛とトモノリを同時に想うとき、決まっておどろおどろしい破壊衝動が伴う。
玲奈にもトモノリにも嫉妬する彼は、行き場のない感情の捌け口を無意識に求めていた。
放課後、真理愛と玲奈ははじめて下校をともにすることになった。樹音が別のクラスの女友だちといっしょに帰るということで、残された玲奈たち取り巻き一同は、相談の結果ばらばらに帰ることになったのだ。
「残りもの同士で集団行動をとるんじゃなくてさ、たまには各自勝手に帰る形式でよくない? どうせ明日以降またいっしょになるんだから」
そう発言して、どっちつかずだった一同の気持ちを確定させたのは、玲奈だった。
玲奈は樹音が不在の場合、リーダー的な役回りを演じることが多い。樹音のように有無を言わさない暴君として振る舞うのではなく、言葉を巧みに操り、みなの言動を自らが望む方向に誘導するのだ。しかもそれを、みなからの恨みを買うことなく、玲奈が犯人だと悟られずにやってのける。彼女のそのような一面を知っている隼人でなければ、場をコントロールしているのが神宮寺玲奈だとはまず気がつけないだろう。
玲奈はこの機会を利用して、真理愛と時間を共有しようとしている。隼人はそう看破した。
先に教室を後にしたのは玲奈で、真理愛に目で合図を送ったのを隼人は見逃さなかった。少し遅れて教室を出た真理愛を追跡すると、案の定、校庭の隅の秘密のベンチへ向かった。そこで玲奈が待っていたのも予想どおりだ。
玲奈はすぐさまベンチから立ち、二人は肩を並べて移動を開始した。自転車通学の真理愛のために駐輪場に寄り、それから正門を潜る。
二人は話に夢中で、後方を含む周囲への注意が疎かになっている。現在は下校時間。同じ方向に向かう生徒であふれていて、流動的な障害物となっている。尾行するにはうってつけの環境というわけだ。
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/31:『たこあげ』の章を追加。2026/1/7の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/30:『ねんがじょう』の章を追加。2026/1/6の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/29:『ふるいゆうじん』の章を追加。2026/1/5の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/28:『ふゆやすみ』の章を追加。2026/1/4の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/27:『ことしのえと』の章を追加。2026/1/3の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/26:『はつゆめ』の章を追加。2026/1/2の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる