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一夜が明けた。
永遠に解き明かすのは不可能だと思えた難問も、いったん距離を置いたうえで見つめ直すと呆気なく正答が判明する、ということがままある。それが隼人の身にも起きた。
両親が眠りに就いた真夜中に決行すればよかったのだ。そうすれば、包丁を持ち出すのも簡単だし、外出したこともばれない。
出発は午前零時半にした。予定ではもう少し遅く出発する予定だったのだが、逸る気持ちを抑えるのが難しかったのだ。
持参する凶器は包丁。同じくキッチンにあった布巾で刃をくるんで保護し、尻ポケットに差す。
軽やかに出かけ、軽やかに殺し、何食わぬ顔で帰宅して眠りに就く。そのつもりでいた。
詳細までは決めていない。どんなふうに刺すか、こう反撃してきたらこう対処する、といったことはまったくの白紙。ただ目的地まで赴いて、ターゲットを刺し殺し、帰宅する。それだけだった。
腹の中で殺意が滾っている。ただ、不思議と高揚感はない。情熱と冷静さを併せ持った現在の心の状態を、隼人は理想的だと認定し、上機嫌になった。それでいて、浮かれすぎるなと己をたしなめるだけの精神的なゆとりがある。
月が雲に隠れた暗い夜だった。人も車もあまり通っていない。隼人は夜間にあまり出歩かないので、普段と比べて多いのか少ないのかは分からないが、どちらにせよ人目が少ないほうが犯行には望ましい。
何事もなく目的地にたどり着いた。
小屋の明かりは点いていなかった。ドアの前まで歩み寄り、顔の右側面を押し当てる。物音も人気も感じられない。風変りな男も夜は普通に眠るらしい。敵の根城に踏み込むのはプレッシャーだが、殺すにあたっては好都合だ。
ドアノブを慎重に回す。鍵はかかっていない。緊張は今や頂点に達している。唾もろとも飲み下し、音を立てないようにドアを開く。
中は真っ暗闇で、その濃密さに軽く気圧された。鉄や木の匂いが複雑に混ざり合った、不愉快ではないが印象的な香気も、心が圧倒された一因かもしれない。
隼人はすぐさま気持ちを立て直し、壁を手探りする。スイッチらしきものを見つけ、多少の躊躇いを感じながらもオンにする。眩しさに一瞬目が眩み、駆け足で順応していく。
視界に飛び込んできた光景に隼人は圧倒された。
空間を埋め尽くす、巨大な物置棚。その棚をほとんど隙間なく埋め尽くす、多種多様な工具や、工具が収納されていると思われる箱の数々。
双眸をしばたたかせながら見とれているあいだ、彼は己の目的を完全に忘れていた。
永遠に解き明かすのは不可能だと思えた難問も、いったん距離を置いたうえで見つめ直すと呆気なく正答が判明する、ということがままある。それが隼人の身にも起きた。
両親が眠りに就いた真夜中に決行すればよかったのだ。そうすれば、包丁を持ち出すのも簡単だし、外出したこともばれない。
出発は午前零時半にした。予定ではもう少し遅く出発する予定だったのだが、逸る気持ちを抑えるのが難しかったのだ。
持参する凶器は包丁。同じくキッチンにあった布巾で刃をくるんで保護し、尻ポケットに差す。
軽やかに出かけ、軽やかに殺し、何食わぬ顔で帰宅して眠りに就く。そのつもりでいた。
詳細までは決めていない。どんなふうに刺すか、こう反撃してきたらこう対処する、といったことはまったくの白紙。ただ目的地まで赴いて、ターゲットを刺し殺し、帰宅する。それだけだった。
腹の中で殺意が滾っている。ただ、不思議と高揚感はない。情熱と冷静さを併せ持った現在の心の状態を、隼人は理想的だと認定し、上機嫌になった。それでいて、浮かれすぎるなと己をたしなめるだけの精神的なゆとりがある。
月が雲に隠れた暗い夜だった。人も車もあまり通っていない。隼人は夜間にあまり出歩かないので、普段と比べて多いのか少ないのかは分からないが、どちらにせよ人目が少ないほうが犯行には望ましい。
何事もなく目的地にたどり着いた。
小屋の明かりは点いていなかった。ドアの前まで歩み寄り、顔の右側面を押し当てる。物音も人気も感じられない。風変りな男も夜は普通に眠るらしい。敵の根城に踏み込むのはプレッシャーだが、殺すにあたっては好都合だ。
ドアノブを慎重に回す。鍵はかかっていない。緊張は今や頂点に達している。唾もろとも飲み下し、音を立てないようにドアを開く。
中は真っ暗闇で、その濃密さに軽く気圧された。鉄や木の匂いが複雑に混ざり合った、不愉快ではないが印象的な香気も、心が圧倒された一因かもしれない。
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空間を埋め尽くす、巨大な物置棚。その棚をほとんど隙間なく埋め尽くす、多種多様な工具や、工具が収納されていると思われる箱の数々。
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