69 / 104
三日目の日記 不登校の日7
しおりを挟む
完璧ではない。でも、いいところもたくさんある。総合的には、文句をつけようがない。本当にとてもいい家族だと思う。
でも、違うのだ。信頼がおける家族なのだから、全幅の信頼をおいて洗いざらい打ち明けるべきだとか、そういうことではなくて、無理なのだ。場面緘黙症の僕が、いじめられていると家族に告白するのは。
けっきょく母さんは引き下がった。根負けしたのではなく、仕事に行かなければならない時間になったから。
言い負かしたわけではない。ましてや、言いくるめたわけでは。
母さんは帰宅次第再び僕の部屋を訪れ、話し合う機会を設け、ずる休みをした理由を訊き出そうとするだろう。出勤前とは違って、帰宅後は時間があり余っている。明日の仕事のことを度外視すれば、夜通し僕の部屋のドアの前で僕に呼びかけ続けることだってできる。聞き流す? 追い払う? 大音声を発生させて掻き消す? いずれも机上の空論、僕には実行できそうにない。
母さんは僕の身に起きたことを他の家族と共有するだろうから、追求の声は三倍になる可能性が高い。父さんが参戦するかは分からないけど、家族の問題を姉さんが放っておくわけがないから、確実に二倍になる。その事実を思うだけで眼球が潤んでくる。
姉さんは母さんよりも果断に踏み込んでくるし、言葉の選びかたも容赦がない。愛情に裏打ちされた厳しさだけに、頭ごなしに怒鳴られるよりも遥かに心に響く。心に刺さる。声を送られてはじめて早々に、きっと僕は泣き出してしまうだろう。
だとしても、言えない。きっと、いや絶対に言えない。姉さんの力をもってしても。板挟みの苦しさ。板挟みから逃れられない絶望。
弱さを打ち明けられる強さがあればどんなによかっただろう!
しゃべるべきことを普通にしゃべれる人間だったらどんなによかっただろう!
目に涙をいっぱいに溜めて嘆きに嘆いたけど、ないものねだりをしてもどうにもならない。なにも変わらない。よい方向にはもちろん、悪い方向にさえも。
僕はトイレ以外の目的でベッドから出ることなく、食事さえとらずに、朝から夕方にかけての時間を過ごした。とてつもなく長かった。ちょっとした考えごとをするだけでも疲れるのに、考えずにはいられなかった。考えるといっても、「どうしよう」とか「もうだめだ」とか、円満な解決策がないことや無力な自分を嘆くつぶやきを漏らすだけ。今自分がもっとも欲しているものを自力で手に入れることを諦めていた感がある。
でも、違うのだ。信頼がおける家族なのだから、全幅の信頼をおいて洗いざらい打ち明けるべきだとか、そういうことではなくて、無理なのだ。場面緘黙症の僕が、いじめられていると家族に告白するのは。
けっきょく母さんは引き下がった。根負けしたのではなく、仕事に行かなければならない時間になったから。
言い負かしたわけではない。ましてや、言いくるめたわけでは。
母さんは帰宅次第再び僕の部屋を訪れ、話し合う機会を設け、ずる休みをした理由を訊き出そうとするだろう。出勤前とは違って、帰宅後は時間があり余っている。明日の仕事のことを度外視すれば、夜通し僕の部屋のドアの前で僕に呼びかけ続けることだってできる。聞き流す? 追い払う? 大音声を発生させて掻き消す? いずれも机上の空論、僕には実行できそうにない。
母さんは僕の身に起きたことを他の家族と共有するだろうから、追求の声は三倍になる可能性が高い。父さんが参戦するかは分からないけど、家族の問題を姉さんが放っておくわけがないから、確実に二倍になる。その事実を思うだけで眼球が潤んでくる。
姉さんは母さんよりも果断に踏み込んでくるし、言葉の選びかたも容赦がない。愛情に裏打ちされた厳しさだけに、頭ごなしに怒鳴られるよりも遥かに心に響く。心に刺さる。声を送られてはじめて早々に、きっと僕は泣き出してしまうだろう。
だとしても、言えない。きっと、いや絶対に言えない。姉さんの力をもってしても。板挟みの苦しさ。板挟みから逃れられない絶望。
弱さを打ち明けられる強さがあればどんなによかっただろう!
しゃべるべきことを普通にしゃべれる人間だったらどんなによかっただろう!
目に涙をいっぱいに溜めて嘆きに嘆いたけど、ないものねだりをしてもどうにもならない。なにも変わらない。よい方向にはもちろん、悪い方向にさえも。
僕はトイレ以外の目的でベッドから出ることなく、食事さえとらずに、朝から夕方にかけての時間を過ごした。とてつもなく長かった。ちょっとした考えごとをするだけでも疲れるのに、考えずにはいられなかった。考えるといっても、「どうしよう」とか「もうだめだ」とか、円満な解決策がないことや無力な自分を嘆くつぶやきを漏らすだけ。今自分がもっとも欲しているものを自力で手に入れることを諦めていた感がある。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる