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解決篇7
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「内容はわたしが書いたのとほぼ同じ。わたしが書いたよりもコンパクトにまとまっていたけど、それでも前日までよりもかなり長くなっていた。なぜかというと、これまでスルーされていて、なおかつわたしが求めていたもの、すなわち駿の感情や考えや思いがしっかり記されていたから。
人通りが少ない時間帯を狙って出歩いていたつもりなのに藤間さんに見られてしまった、死ぬほど恥ずかしい、顔から火が出る思いとはあのことだろう、藤間さんはきっと僕によい感情は持たなかったに違いない、藤間さんはおしゃべり好きだから近所の人に話すに決まっている、それが回り回って母さんの耳に入ったら母さんはどう思うだろう、母さんは僕になにか言ってくるだろうか、言わなかったとしても藤間さんと同じように僕をよくは思わないだろう、接しかたにも変化があるかもしれない、僕はなぜ事前にもっとよく考えてから行動に移らなかったのだろう、散歩なんて行くべきじゃなかった、間違った判断だった、死ぬわけじゃあるまいし息苦しさくらい我慢すればよかったんだ、不登校でひきこもりの分際でみだりに外出してはいけないんだ、もう二度と散歩には行けない、あらゆる意味で恥ずかしくて仕方ない、自分が情けなくてたまらない――。
きりがないからこのへんでやめておくけど、とにかく、そういうことが延々と書き連ねてあるの。同じような文章がループするとかして、文法もちょっとおかしくなって、意味を読み取るのに支障はないんだけど、かなり読みにくくて。
でも、どう言えばいいのかな。それが逆に生身の感情を、弟を、宇山駿っていう一人の人間を感じさせて。ああ、これは駿が書いたものなんだなって。駿の本心本音が忠実に文章に変換されているんだなって。
弟は家族相手にはしゃべってくれるけど、気軽に口をきいてくれるわけではなくて。しかも、年齢を重ねるにつれてしゃべらなくなる傾向が強くなっていって。だから、貴重な駿の心の中を知ることができたのがうれしくて。だけど、言及しているのは自分が悲しい思いをしたことについてだから、切なくもあって。読めば読むほど心が不安定になっていって、感情を鎮めるためにくり返し立ち止まらなければいけなかった。何度も何度も読み返した。文章量が膨大で、精神的にはかなりしんどかったけど、でもやめられなかった」
詩帆は一回小さく洟をすすり、押し黙った。事務所内は深更のような静けさに満たされている。美澄はたっぷりと間を置いたうえで問うた。
人通りが少ない時間帯を狙って出歩いていたつもりなのに藤間さんに見られてしまった、死ぬほど恥ずかしい、顔から火が出る思いとはあのことだろう、藤間さんはきっと僕によい感情は持たなかったに違いない、藤間さんはおしゃべり好きだから近所の人に話すに決まっている、それが回り回って母さんの耳に入ったら母さんはどう思うだろう、母さんは僕になにか言ってくるだろうか、言わなかったとしても藤間さんと同じように僕をよくは思わないだろう、接しかたにも変化があるかもしれない、僕はなぜ事前にもっとよく考えてから行動に移らなかったのだろう、散歩なんて行くべきじゃなかった、間違った判断だった、死ぬわけじゃあるまいし息苦しさくらい我慢すればよかったんだ、不登校でひきこもりの分際でみだりに外出してはいけないんだ、もう二度と散歩には行けない、あらゆる意味で恥ずかしくて仕方ない、自分が情けなくてたまらない――。
きりがないからこのへんでやめておくけど、とにかく、そういうことが延々と書き連ねてあるの。同じような文章がループするとかして、文法もちょっとおかしくなって、意味を読み取るのに支障はないんだけど、かなり読みにくくて。
でも、どう言えばいいのかな。それが逆に生身の感情を、弟を、宇山駿っていう一人の人間を感じさせて。ああ、これは駿が書いたものなんだなって。駿の本心本音が忠実に文章に変換されているんだなって。
弟は家族相手にはしゃべってくれるけど、気軽に口をきいてくれるわけではなくて。しかも、年齢を重ねるにつれてしゃべらなくなる傾向が強くなっていって。だから、貴重な駿の心の中を知ることができたのがうれしくて。だけど、言及しているのは自分が悲しい思いをしたことについてだから、切なくもあって。読めば読むほど心が不安定になっていって、感情を鎮めるためにくり返し立ち止まらなければいけなかった。何度も何度も読み返した。文章量が膨大で、精神的にはかなりしんどかったけど、でもやめられなかった」
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