レム

阿波野治

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相合い傘

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 榛葉の手から七海の手へと日傘が渡ったときから、そうなる予感はしていた。

「はい、これ。日傘」

 病院の玄関を出たところで、七海は傘を凪に手渡した。

「わたしじゃなくて、凪くんが差して。相合傘しよう」
「動きづらくない? 僕、この程度の日射しなら平気だよ」
「こっちは病人なんだから、気をつかってよ。腕が疲れたらわたしが代わりに持つから」

 七海は表情を和らげて日傘を一瞥し、凪に顔を戻す。

「迷惑かけてごめんだけど、人助けと思ってお願い。ね?」

 小首を傾げての要求に、凪はうなずいて傘を開く。
 七海の頭上に差しかけようとすると、彼女のほうから体を寄せてきた。石鹸がさわやかに香った。病室から玄関まで歩いていたときと比べても、ずっと距離が近い。吐息の風圧や、息づかいの音さえもはっきりと感じられる。七海といっしょに過ごす時間に早くも慣れつつある凪も、さすがに鼓動が速まった。

「それじゃあ、出発しよう」

 視線を交わし合い、青空の下を歩き出した。

 しばらくは、引きつづき学校のことについて話した。
 凪の中学校生活は、お世辞にも充実しているとはいえない。馬鹿正直にありのままを語って、七海を暗い気持ちにさせたくない。教室の雰囲気や授業内容、定期テストの結果や今後予定されている行事など、当たり障りのない話題を選んで話した。

「やっぱり中学校って、小学校とはずいぶん雰囲気が違うんだね。同じ義務教育なのに、不思議だよね」

 七海は瞳を輝かせている。表情で、声で、ときには仕草で、逐一といってもいい頻度で感心を表明している。彼女は現在学校には通っておらず、最後に登校したのは小学五年生のときらしい。

「そういえば訊いていなかったけど、七海って何歳なの?」
「気になる? それでは、クイズです。わたしは今何歳でしょうか?」
「えっと、十三歳くらい?」
「残念! 正解は、凪くんと同じ十五歳、中三でした」
「そうだったんだ。意外だね。絶対に年下だと思っていたから」
「やっぱり? わたし、みんなからは実年齢よりも低く見られることが多いんだ。体が小さいし、童顔だし、性格だって子どもっぽいしね。小学生に間違われるとか、普通にあるよ。一週間くらい前の話なんだけど、お見舞いに来た人だったのかな、待合室の前を通りかかったときに声をかけられたんだけど――」

 話が学校のことから逸れたので、凪は胸を撫で下ろした。
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