レム

阿波野治

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問答

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「今は折り紙を折りたい気分なの。だから、そうさせて。わたしの意思を尊重して」
「尊重って、そんな場合じゃないだろ。七海は炎に焼かれているんだよ? このままだと、死んでしまう。病気が君の命を奪うよりも先に、炎に奪われてしまう。熱くなくても、痛くなくても、苦しくなくても、死んでしまったら元も子もないよ。だから助けを――」
「必要ないよ。だってわたしは、凪くんが見ている夢。いつか必ず消滅する運命なんだし、生身の人間ではないから苦痛は感じない。そして、わたしは折り鶴を折りたいと思っている。だから、これでいいの。このままでいいの」

 夢? 七海が、僕が見ている夢だって?

「七海、それってどういう……」
「言葉どおりの意味だよ」

 紙を折る手を止め、人間らしい目で凪の顔を見返しながら、七海は答えた。手元の赤い折り紙は、すでにちゃんとした鶴の形に変わっている。

「今まで凪くんがわたしといっしょにいるときに、わたしたちのあいだに起きた出来事の数々、思い出してみて。血を吐いて倒れるとか、ジュースの色が魔法みたいに変わるとか、リアルで残酷な夢を何度も見るとか。どれもこれも現実離れしていたでしょ。ベクトルは違うけど、非現実的という意味では共通していた。
 じゃあ、どうして、そんな出来事が何度も起きたの?
 理由を一言で説明するとね、夢というのはそういうものだからだよ。
 わたしや岩永さんのように、常人離れした『力』を使える人間が普通に存在する。奇妙な夢だって毎日のように見る。矛盾に満ちていて、荒唐無稽で、なんでもあり。それが夢の中というものなの」
「七海、言っている意味が――」
「言葉どおりの意味だよ。わたしたちが過ごした時間は夢の中の出来事であって、現実ではない。ちょっとまぎらわしい言いかたをするなら、夢の中の現実に過ぎなかったというわけ。あれも夢、これも夢、それも夢、どれも夢……」
「嘘だ。夢なんかじゃないよ。夢だなんて、信じられないよ。だって僕は、君の声や表情をこんなにもリアルに感じているし、炎の熱さだって非現実のものとは思えない」
「わたしが言ったばかりの言葉、もう忘れちゃった? そういうものだからだよ。夢っていうのはね、なんでもありなの。そう感じたいと思えば、なんの障害もなくそう感じられる。
 だけねど、凪くん、現実ではないの。あくまでも夢の中の現実であって、現実そのものではない」

 凪は口をつぐんだ。いくら反論しても手応えがなく、食い下がっても無駄だと思ったのだ。

「――というわけで、わたしは死ぬわけだけど」

 七海は炎に焼かれながらほほ笑む。

「凪くんは悲しまないで。こんな言いかたをするのはちょっと悲しいけど、しょせんは夢なんだから。夢だったっていう事実、凪くんには悪いほうじゃなくて、よいほうに解釈してくれるとうれしいかな」
「そんなことを言われても、無理だよ。受け入れられないよ」

 反論ではない。凪はただ、率直な思い吐露しているだけだ。
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