レム

阿波野治

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会いたい

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 映像が断ち切られ、視界は薄汚れたクリーム色で満たされた。
 まぎれもなく、凪の自室の天井だ。
 天井を見つめたまま、凪はさきほどまでの体験について振り返る。

 夢。

「全然気がつかなかった……」

 夢から覚めるまで、病室での七海とのやりとりが夢だったことには。

 その一つ前に見た市場の夢は、夢の中にいるときこそ自覚しなかったが、覚めてから振り返ってみると、「これは夢だ」と薄々感づいていたような気もする。
 しかし、今回の七海が突然炎に包まれる夢は、まったくの無理解、まったくの無自覚だった。

 ゆっくりと上体を起こす。枕元の携帯電話をとろうとして、その横に赤い物体が置かれていることに気がつく。
 折り鶴だ。燃え盛る炎のように真っ赤な、一羽の折り鶴。

 携帯電話ではなく、そちらを手にとる。手ざわり、重さ、ともに折り鶴のそれだ。鼻先まで近づけ、まじまじと観察する。無駄なしわも折れ目もなく、低いクオリティではないことが素人目にもわかる。
 間違いない。七海が折ったものだ。

 一瞬、炎の中で折られたものかとも思ったが、七海の体が炎上した時点で、凪はすでに夢の中にいたはずだ。

 今度こそ、携帯電話を確認する。現在時刻は、もう午後六時が近い。
 つまり、凪はすでにT市民病院まで行って七海と会い、帰宅している。

 病室で温かな日射しを浴びながら七海と言葉を交わし、折り鶴を作っているうちに、凪は眠ってしまった。七海に揺り起こされた彼は、少し早いが帰ることにした。赤い折り鶴を手土産に帰宅したが、まだ眠気があったので、ベッドで眠った。そして、七海が炎に包まれて焼け死ぬ夢を見た。
 憶測を交えて推察するならば、おそらくそのような経緯だったのだろう。

「――いや、おかしい」

 思わず、声に出してつぶやいていた。
 なにかがおかしい、と思う。しかし、具体的にどこがおかしいのかまではわからない。
 七海の死がテーマという意味では、過去の二つの夢と同じだ。しかし、前の二つは死を匂わせるだけだったが、今回の夢では実際に焼死している。

 七海は今、どこでなにをしているのだろう?

 もう一度携帯電話を確認したが、誰からも連絡は来ていない。
 岩永月夜看護師からのメッセージが届いていないということは、七海の身には何事もないはずだ。それとも、連絡を入れるひまさえないくらい大変な事態が起きている? あるいは、なにか起きたのはたしかだが、岩永がその事実を隠ぺいしている……。
 真相は不明だが、いずれにせよ岩永が鍵を握っている、というのが気がかりだ。なにせあの看護師は、「力」を使って七海を苦しませている犯人かもしれないのだから。

「七海……!」

 居ても立ってもいられず、凪は部屋から飛び出した。
 七海に会いに行こう。一日に二回行くのはこれが初めてだが、そんなちっぽけなことに構っていられない。どうだっていい。

 七海に会いたい。
 一秒でも早く、大好きな人の顔が見たい。
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