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「大変だね。ほんとうに大変な人に大変っていうのも失礼だけど、あたしはその、語彙が貧困だから……」
「そのくらいで気を悪くなんてしないよ」
「思ったんだけど、曽我は受験勉強中なわけだよね。高卒認定試験。受験生に雑務を強要するって、親御さんもなかなか厳しいんだね」
「庭の草刈りはまあ、家族全員の義務みたいなものだからね。僕としては、最初から仕方ないっていう認識だったけど、厳しいといえば厳しいのかな。
親がそういう態度をとるようになったのは、やっぱり、留年までしたのに高校を辞めちゃったのが大きいと思う。高校は私立で学費も高かったのに、無駄にしちゃったから。迷惑をかけたんだから、その分家族のために働けよっていう」
「……そっか」
レイは押し黙る。眉間に生じたしわを見て、こんな話をするんじゃなかった、と悔やむ気持ちが芽生えた。
……巻きこんでしまった。レイと過ごす夕方の一時間は、彼女に嫌な思いをさせるためにあるわけではないのに。
そう、今は夕方の五時過ぎ。
レイは約束の時間になったからこちらまで来たのだ。こうして陰気な言葉をやりとりしているあいだにも、砂時計の砂は落ちつづけている。――急がないと。
「進藤さん、ごめん。草刈り、今日中に済ませておかないと怒られるから、大至急片づける。二十分くらいかかるかな。それまで、悪いけど先に部屋に行って待ってて」
「あたしも手伝う。二人でやったら半分の十分で済む。そうしたほうが絶対にいい」
思いがけない返答だった。
僕を見つめるレイの眼差しは、真っ直ぐだ。どぎまぎしてしまい、すぐには言葉を返せなかったくらいに真っ直ぐだ。有無を言わさない迫力さえ感じる。
「いや、でも、悪いよ。遊びにきてくれた友だちに手伝わせるなんて。疲れるし、汚れるし」
「草刈りなんだから、疲れるのも汚れるのも当たり前。道具、貸して」
僕はうなずいて家の中に入った。軍手と鎌を渡し、さっそく作業に取りかかる。
進藤さんの手を煩わせるのは嫌だし、申し訳ないから、さっさと終わらせてしまおう。
そんな思いとはうらはらな行動を、草刈り再開早々に僕は起こす。
「進藤さんとは、顔を合わせたときは普通に話をしていたから、意外に思うかもしれないけど……。進藤さんとは同じクラスになったことがないから、噂でしか聞いたことがないと思うけど……。僕、昔から人前でしゃべるのにすごく苦労してて」
自らの身の上について語り出したのだ。
我ながら、驚くべき行動だと言わざるを得ない。
「そのくらいで気を悪くなんてしないよ」
「思ったんだけど、曽我は受験勉強中なわけだよね。高卒認定試験。受験生に雑務を強要するって、親御さんもなかなか厳しいんだね」
「庭の草刈りはまあ、家族全員の義務みたいなものだからね。僕としては、最初から仕方ないっていう認識だったけど、厳しいといえば厳しいのかな。
親がそういう態度をとるようになったのは、やっぱり、留年までしたのに高校を辞めちゃったのが大きいと思う。高校は私立で学費も高かったのに、無駄にしちゃったから。迷惑をかけたんだから、その分家族のために働けよっていう」
「……そっか」
レイは押し黙る。眉間に生じたしわを見て、こんな話をするんじゃなかった、と悔やむ気持ちが芽生えた。
……巻きこんでしまった。レイと過ごす夕方の一時間は、彼女に嫌な思いをさせるためにあるわけではないのに。
そう、今は夕方の五時過ぎ。
レイは約束の時間になったからこちらまで来たのだ。こうして陰気な言葉をやりとりしているあいだにも、砂時計の砂は落ちつづけている。――急がないと。
「進藤さん、ごめん。草刈り、今日中に済ませておかないと怒られるから、大至急片づける。二十分くらいかかるかな。それまで、悪いけど先に部屋に行って待ってて」
「あたしも手伝う。二人でやったら半分の十分で済む。そうしたほうが絶対にいい」
思いがけない返答だった。
僕を見つめるレイの眼差しは、真っ直ぐだ。どぎまぎしてしまい、すぐには言葉を返せなかったくらいに真っ直ぐだ。有無を言わさない迫力さえ感じる。
「いや、でも、悪いよ。遊びにきてくれた友だちに手伝わせるなんて。疲れるし、汚れるし」
「草刈りなんだから、疲れるのも汚れるのも当たり前。道具、貸して」
僕はうなずいて家の中に入った。軍手と鎌を渡し、さっそく作業に取りかかる。
進藤さんの手を煩わせるのは嫌だし、申し訳ないから、さっさと終わらせてしまおう。
そんな思いとはうらはらな行動を、草刈り再開早々に僕は起こす。
「進藤さんとは、顔を合わせたときは普通に話をしていたから、意外に思うかもしれないけど……。進藤さんとは同じクラスになったことがないから、噂でしか聞いたことがないと思うけど……。僕、昔から人前でしゃべるのにすごく苦労してて」
自らの身の上について語り出したのだ。
我ながら、驚くべき行動だと言わざるを得ない。
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