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五日目 その3
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昼食をとったあと、最初に乗るアトラクションには「ミニミニ機関車」が選ばれた。選んだのは姫だ。園内を網羅するようにレールが張り巡らされているのを見て、好奇心をそそられたらしい。鉄道駅を模した乗り場は、アトラクションを回る過程で見つけていた。
いざ乗り場に来てみると、閑散としていて従業員の姿は見当たらない。入口ゲートを塞ぐように立て看板が設置されている。
『本日は「犬祭り。」開催のため、
ミニミニ機関車の運行は終日見合わせます。
午後二時ちょうどにマジケンが機関車に乗って入園するので、
その模様をみなさまもぜひご覧になってください!』
「マジケンってなに?」
姫が尋ねてきた。「犬祭り。」の概要については説明していたが、マジケンのことは詳しく話していなかった。
「マジケンっていうのは、『マジカルモンスター』っていうテレビゲームに出てくるキャラクターのことだよ。冒険が大好きな獣人の男の子っていう設定で、『マジモン』の中では飛び抜けて人気があるんだ。わたしも子どものころはマジケンのグッズを集めていてね。『マジモン』には他にもたくさんキャラクターがいるのに、マジケンばかり」
時刻を確認すると、午後二時まで十分を切っている。
「もうすぐ二時だから、待ってみようか。マジケンの入園を見たら、三時までアトラクションで遊ぼう」
乗り場の周囲は日向になっている。少し離れた木陰のベンチまで移動し、腰かけて待つ。わたしたちと同様、本日の運行見合わせを知らなかった家族連れなどが乗り場を訪れては、看板の前に佇んでしばし言葉を交わし、乗り場近くのレールの前で待機するか、近くのベンチに座るかした。
何分待っただろう。
突然、園内を流れていたBGMが途絶えた。聞こえるのは人々の声とアトラクションが奏でる音のみとなり、ほどなく人声はざわめきへと変わる。なにが起きたのだろうというよりも、なにが起きるのだろうというふうに、姫は忙しなく左見右見する。携帯電話を確認すると、十四時ちょうどだ。
「マジケンが来るみたい。行こう」
姫の手をとり、レールへと向かう。
そのさなか、急に音楽が流れはじめた。アップテンポで、どこか不穏で、魂の昂ぶりと胸騒ぎを同時に覚えるような曲。
わたしの心は懐かしさに満たされた。
間違いない。『マジケン登場のテーマ』だ。
いざ乗り場に来てみると、閑散としていて従業員の姿は見当たらない。入口ゲートを塞ぐように立て看板が設置されている。
『本日は「犬祭り。」開催のため、
ミニミニ機関車の運行は終日見合わせます。
午後二時ちょうどにマジケンが機関車に乗って入園するので、
その模様をみなさまもぜひご覧になってください!』
「マジケンってなに?」
姫が尋ねてきた。「犬祭り。」の概要については説明していたが、マジケンのことは詳しく話していなかった。
「マジケンっていうのは、『マジカルモンスター』っていうテレビゲームに出てくるキャラクターのことだよ。冒険が大好きな獣人の男の子っていう設定で、『マジモン』の中では飛び抜けて人気があるんだ。わたしも子どものころはマジケンのグッズを集めていてね。『マジモン』には他にもたくさんキャラクターがいるのに、マジケンばかり」
時刻を確認すると、午後二時まで十分を切っている。
「もうすぐ二時だから、待ってみようか。マジケンの入園を見たら、三時までアトラクションで遊ぼう」
乗り場の周囲は日向になっている。少し離れた木陰のベンチまで移動し、腰かけて待つ。わたしたちと同様、本日の運行見合わせを知らなかった家族連れなどが乗り場を訪れては、看板の前に佇んでしばし言葉を交わし、乗り場近くのレールの前で待機するか、近くのベンチに座るかした。
何分待っただろう。
突然、園内を流れていたBGMが途絶えた。聞こえるのは人々の声とアトラクションが奏でる音のみとなり、ほどなく人声はざわめきへと変わる。なにが起きたのだろうというよりも、なにが起きるのだろうというふうに、姫は忙しなく左見右見する。携帯電話を確認すると、十四時ちょうどだ。
「マジケンが来るみたい。行こう」
姫の手をとり、レールへと向かう。
そのさなか、急に音楽が流れはじめた。アップテンポで、どこか不穏で、魂の昂ぶりと胸騒ぎを同時に覚えるような曲。
わたしの心は懐かしさに満たされた。
間違いない。『マジケン登場のテーマ』だ。
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