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復讐
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「伊んんん!」
握力がさらに増した。力任せに腕を捩じり上げてくる。腕骨をへし折ろうとするかのような、凄まじい力だ。
「教師に向かってその態度はなんだ! 頭が高いぞ! お前のようなやつは――」
「触ってんじゃねぇ、ハゲ」
静電気を流されたように、柘植はイナの手から右手を離した。イナは冷然と顎をしゃくり、
「死ね。苦しみながら死ねよ、このクソゴミ野郎」
柘植は両手で胸を押さえてその場に蹲った。開いた口は、酸素を欲する鯉のそれのようにぱくついている。生え際から生じた汗が顔面を滑り落ち、信じられないほど巨大な染みを次から次へと路面に描く。体はどこか演技性を帯びたような揺れかたで揺れ、顔だけではなく肌全体が青白くなっていく。ただ宛がうだけだった両手が、ワイシャツの胸部を握り潰さんばかりに握った。濁点つきの声が途切れ途切れに口から漏れていたが、
「あ゛っ」
ひときわ大きな、一瞬のうめきが空気を震わせ、眼球が裏返って白目になる。体がゆっくりと右に傾き、アスファルトの大地に横倒しになる。ワイシャツの両胸を掴んだ姿勢のまま、微動だにしない。ズボンの股間が歪な円形に変色し、遅々とした速度で円周を増していく。
「存在がきたねーんだよ。消えろ」
吐き捨てたのが引き金となり、柘植の体から蒸気が立ち昇り始めた。ほのかに濁ったような白く半透明な蒸気だ。立ち昇る総量が増すのに反比例して、彼の体積は減じていく。全身が均等に縮んでいくのではなく、上部から順番に滑らかに削りとられていくように。
「いや、おせーな」
吐き捨てたことで蒸発は加速し、ほどなく柘植の体は消滅した。
試みに、消えるまで柘植が横たわっていた空間を軽く蹴ってみる。空気の感触がした。姿が透明になったのではなく、存在自体が抹消されたのだ。そう心の芯から納得できた。
イナは拍子抜けがした。しかし、拍子抜けしている間に、腹の底で蠢動し、胸の中心へと徐々にせり上がってくるものがある。それに意識を集中させているうちに、その正体が忽然と明らかになった。
ぼくはこの手で、むかつくやつを殺すことができた!
噛みしめれば噛みしめるほど、喜びは濃度を増していく。結果を出せたことも嬉しいが、今後誰かと対立することがあっても、手をこまねくことも、怯えることもなくて済むという確証、それを得られたのがなによりも嬉しい。
ぼくは神に等しい力を持っている。ここはぼくの思い通りになる世界だ。怖いものなんて、もうなにもない。
握力がさらに増した。力任せに腕を捩じり上げてくる。腕骨をへし折ろうとするかのような、凄まじい力だ。
「教師に向かってその態度はなんだ! 頭が高いぞ! お前のようなやつは――」
「触ってんじゃねぇ、ハゲ」
静電気を流されたように、柘植はイナの手から右手を離した。イナは冷然と顎をしゃくり、
「死ね。苦しみながら死ねよ、このクソゴミ野郎」
柘植は両手で胸を押さえてその場に蹲った。開いた口は、酸素を欲する鯉のそれのようにぱくついている。生え際から生じた汗が顔面を滑り落ち、信じられないほど巨大な染みを次から次へと路面に描く。体はどこか演技性を帯びたような揺れかたで揺れ、顔だけではなく肌全体が青白くなっていく。ただ宛がうだけだった両手が、ワイシャツの胸部を握り潰さんばかりに握った。濁点つきの声が途切れ途切れに口から漏れていたが、
「あ゛っ」
ひときわ大きな、一瞬のうめきが空気を震わせ、眼球が裏返って白目になる。体がゆっくりと右に傾き、アスファルトの大地に横倒しになる。ワイシャツの両胸を掴んだ姿勢のまま、微動だにしない。ズボンの股間が歪な円形に変色し、遅々とした速度で円周を増していく。
「存在がきたねーんだよ。消えろ」
吐き捨てたのが引き金となり、柘植の体から蒸気が立ち昇り始めた。ほのかに濁ったような白く半透明な蒸気だ。立ち昇る総量が増すのに反比例して、彼の体積は減じていく。全身が均等に縮んでいくのではなく、上部から順番に滑らかに削りとられていくように。
「いや、おせーな」
吐き捨てたことで蒸発は加速し、ほどなく柘植の体は消滅した。
試みに、消えるまで柘植が横たわっていた空間を軽く蹴ってみる。空気の感触がした。姿が透明になったのではなく、存在自体が抹消されたのだ。そう心の芯から納得できた。
イナは拍子抜けがした。しかし、拍子抜けしている間に、腹の底で蠢動し、胸の中心へと徐々にせり上がってくるものがある。それに意識を集中させているうちに、その正体が忽然と明らかになった。
ぼくはこの手で、むかつくやつを殺すことができた!
噛みしめれば噛みしめるほど、喜びは濃度を増していく。結果を出せたことも嬉しいが、今後誰かと対立することがあっても、手をこまねくことも、怯えることもなくて済むという確証、それを得られたのがなによりも嬉しい。
ぼくは神に等しい力を持っている。ここはぼくの思い通りになる世界だ。怖いものなんて、もうなにもない。
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