記憶士

阿波野治

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 付き合いが悪いと言われてしまったが、登下校時と放課後と昼休み時間は星羅と過ごす代わりに、それ以外の休み時間はしっかりと三人との時間を確保している。
 日曜日に四人で遊びにいかないか、という誘いに対する最終的な返事をしていなかったので、一時間目が終わったあとの休み時間にした。星羅と遊びに行くから、残念ながら今週の日曜日は無理だ。そうストレートに伝えた。

「そっかぁ。予定があるならしょうがないね」
 日曜日に遊ぶことを提案した張本人である茉麻は、声音に表情に落胆を露わにした。

「最近すっかり仲よしだよね、秋奈と多木さん。秋奈は交友関係を積極的に広げるタイプじゃないのに、珍しいよね」

 結乃はそう言って、星羅の机を一瞥した。釣られて同じ方向を向くと、星羅はつまらなさそうにスマホを弄っている。マンガアプリをいくつかスマホに入れていて、暇つぶしに巡回している、という話をいつかしてくれたことがあった。
 気怠そうにディスプレイを見つめながら、気怠そうに指を動かす姿からは、「趣味」ではなく「暇つぶし」と称した理由が理解できるようだ。わたしと星羅の趣味嗜好は噛み合わないが、星羅がこれという趣味を持たないのも要因の一つだった。

「日曜日、わたし以外は大丈夫なんだよね。だったら三人で遊んできてよ」
 わたしの発言に、三人の視線が一斉にわたしへと注がれる。わたしはにこやかに語を継ぐ。
「わたしの都合でみんなが犠牲になる必要、絶対にないし。仲間外れにされたなんて思わないから、楽しんできてよ。わたしも多木さんと楽しんでくるから」

 場の空気がぎくしゃくしないように、という意図からの発言だったが、犠牲だとか仲間外れだとかいう単語の選び方は少し大げさで、みんなを困惑させてしまったかもしれない。星羅の耳にこの発言が届いたのだとすれば、気持ちに負担を感じたかもしれない、とも考えた。前者の懸念に関しては、あながち的外れではなかったらしく、誰も言葉を返してこない。

「多木さんとはK遊園地に行くつもりだから、お土産を買ってくるね。お返しに土産話でもちょうだい。もちろん、形のあるものだったらもっと嬉しいけど」
「あっ、K遊園地に行くんだ。懐かしいなぁ」

 幸いにも茉麻が食いついたことで、会話は自然な形で別の話題へと移行し、居心地が悪い雰囲気は長引かずに済んだ。茉麻のこういうところがわたしは好きだ。友だちがたくさんいる最大の要因でもあるのだろう。
 四人全員が訪れた経験を持ち、楽しい思い出がいくつも残っているという共通点があったため、一定の盛り上がりを維持して会話は続く。お喋りを楽しみながらも、話が逸れてくれたことにわたしは安堵した。

 現時点では過度に気を配る必要はなさそうとはいえ、どちらも疎かにしてはならないというのは、心が疲れないといえば嘘になる。
 でも、今はただ、自分ができることをやっていくしかない。
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