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世界共産党のテーマ
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休み時間、碇たち五人に囲まれた。
「おいこら、面貸せ」
一人に襟首を掴まれ、男子トイレに引きずり込まれる。
「お前、なにやってんだよ。内臓を床に落としたら、みんなに迷惑がかかるだろうが。高校生にもなって、そんなことも分からないのかよ。脳味噌いかれてんのか? ああん?」
わたしは最奥の個室に押しやられた。発言者は、個室の戸口に仁王立ちした、碇。半笑いの表情だ。
碇の後方には、三村、佐藤、坂本の三人が控えている。大兵肥満の高井は、いつものようにトイレの出入り口で見張りだ。
「クラスの連中に迷惑かけた罰として、いつものあれ、やれよ。そうしたら許してやるよ」
碇が発令した瞬間、三人が一斉に、彼の肩越しに個室を覗き込んできた。
「暑苦しいな。うぜぇ」
碇は密着してくる三人を肘で退かそうとするが、三村はただただへらへらするばかりだし、佐藤は逆に碇を手で突いて反撃し、坂本は五秒に一回の頻度で眼鏡のブリッジを中指で押し上げている。出入り口の高井は、聞き耳を立てながら臀部でもかいているに違いない。
わたしは服を脱ぎ始める。揉み合っていた四人の動きが止まり、八本の視線がわたしに注がれる。
ブレザー。ワイシャツ。スカート。ブラジャー。ショーツ。
ブラジャーを取り外した瞬間、坂本の口から「おおお」という声が上がり、眼鏡を押し上げるペースが三秒に一回になった。四人とも、表情の弛緩の程度が悪化した。靴下と靴は脱がない。
碇がスマホを取り出し、慣れた手つきで画面を何回かタップした。『世界共産党のテーマ』が大音量で流れ出した。
『我らは世界共産党
世界の平和を守る党
暴走政権許すまじ
憲法改悪断固阻止――』
音楽に合わせてわたしは踊りを踊る。踊りの様態を言葉で説明するのは難しい。阿波踊りに男踊りと女踊りの違いがあることを知らない人間がでたらめに踊った阿波踊り、とでも言えば、徳島県出身の人間ならば理解してくれるだろうか。
四人の男たちに見守られながら、『世界共産党のテーマ』をなんとか踊りきった。
「なかなか上手いじゃねぇか。調教のたまものだな」
碇が間合いを詰めてきた。射程距離に入った瞬間、いきなりわたしのおっぱいを鷲掴みにする。堰を切ったように三人も続いた。八つの手が独立した生き物のように蠢きながら、剥き出しの脂肪の塊を撫で、押し、潰し、捏ね、捻る。彼らの手つきは執拗で、乱暴だ。
「あー、くそっ。相葉ちゃんとやりたいなぁ。頼んだら一発やらせてくんないかな。ぜってー淫乱だぜ。大人しそうに見えて性欲が強いタイプだよ、あの女は」
「そういえば、いつだったかな。胸元が開いた服を着てきたこと、なかったか?」
「あー、あったな、なんか。屈んだときに谷間ががっつり見えて、マジ勃ったわ、あんときは。毎日ああいう恰好してくれたら最高なのに」
「世界史の授業、週二回しかねーけどな」
「今日もきつそうなスカート穿いてたよな。あんなもん見せられたら、授業に集中したくても集中できないっつうか」
「立ちバックで犯してぇなぁ」
「相葉ちゃんって胸のサイズいくつだっけ」
「さあ。FとかGとか、そのくらいじゃね」
「ああ、くっそー。マジでやりてぇ。乳が貧相で顔もブスな等々力なんかじゃなくてよぉ」
「男いんのかな。毎日やりまくってんのかな」
「いるだろ。いない方が不自然っつーか」
「レズビアンっていう可能性もあるぜ。最初はルームシェアをしているだけの関係だったはずが、いつしか単なるルームメイトを越えた仲に……」
「どっちにせよチャンスねーじゃん。アホくさ」
「『右傾化する日本』に犯られて殺られる前に犯っちゃおうか、なんて」
「ああ、あの殺人鬼ね。レイプしたあとで首切るんだっけ」
「刺すんじゃなかったか」
「どっちでもいいよ。どのみち殺すんだから」
「どっかに落ちてねぇかな。警察に捕まらずに女をやりまくれるマニュアル」
「等々力をやっちまえばいいじゃん」
「こっちから願い下げだよ、こんなブス」
チャイムが鳴るまで、わたしは一方的におっぱいを凌辱され続けた。
ようするに、いつも通りということだ。
* * *
「あら」
男子トイレから出ると、相葉先生にばったりと出くわした。
「もう授業始まってるよー。急いで、急いで」
「分かりました」
歩み去ろうとした瞬間、気がつく。
「相葉先生。口元に……」
「えっ?」
「口元に赤いものがついています。右の方に」
先生は問題の部位に指先を宛がう。柔和な表情が一瞬揺らいだが、手を下ろしたときには元に戻っている。赤いものは手品のように消失していて、わずかな痕跡すらも認められない。
「多分、お菓子の食べかすね。休み時間にこっそり食べたから、そのときについたみたい。教えてくれてありがとう」
教師が生徒に対してするにしては慇懃に頭を下げる。わたしは会釈でそれに応じる。
「あ、でも、授業に遅れるのは感心しないかな。さ、急いで」
「失礼します」
わたしは先生に背を向けて歩き出した。
相葉先生はその場に佇み、遠ざかるわたしの後ろ姿を見送っている。肩越しに振り返ってこの目で確認するまでもなく、そうしていると分かるくらいに、ひしひしと視線を感じる。
先生はなぜ、わたしが男子トイレから出てきたことを追及しなかったのだろう?
「おいこら、面貸せ」
一人に襟首を掴まれ、男子トイレに引きずり込まれる。
「お前、なにやってんだよ。内臓を床に落としたら、みんなに迷惑がかかるだろうが。高校生にもなって、そんなことも分からないのかよ。脳味噌いかれてんのか? ああん?」
わたしは最奥の個室に押しやられた。発言者は、個室の戸口に仁王立ちした、碇。半笑いの表情だ。
碇の後方には、三村、佐藤、坂本の三人が控えている。大兵肥満の高井は、いつものようにトイレの出入り口で見張りだ。
「クラスの連中に迷惑かけた罰として、いつものあれ、やれよ。そうしたら許してやるよ」
碇が発令した瞬間、三人が一斉に、彼の肩越しに個室を覗き込んできた。
「暑苦しいな。うぜぇ」
碇は密着してくる三人を肘で退かそうとするが、三村はただただへらへらするばかりだし、佐藤は逆に碇を手で突いて反撃し、坂本は五秒に一回の頻度で眼鏡のブリッジを中指で押し上げている。出入り口の高井は、聞き耳を立てながら臀部でもかいているに違いない。
わたしは服を脱ぎ始める。揉み合っていた四人の動きが止まり、八本の視線がわたしに注がれる。
ブレザー。ワイシャツ。スカート。ブラジャー。ショーツ。
ブラジャーを取り外した瞬間、坂本の口から「おおお」という声が上がり、眼鏡を押し上げるペースが三秒に一回になった。四人とも、表情の弛緩の程度が悪化した。靴下と靴は脱がない。
碇がスマホを取り出し、慣れた手つきで画面を何回かタップした。『世界共産党のテーマ』が大音量で流れ出した。
『我らは世界共産党
世界の平和を守る党
暴走政権許すまじ
憲法改悪断固阻止――』
音楽に合わせてわたしは踊りを踊る。踊りの様態を言葉で説明するのは難しい。阿波踊りに男踊りと女踊りの違いがあることを知らない人間がでたらめに踊った阿波踊り、とでも言えば、徳島県出身の人間ならば理解してくれるだろうか。
四人の男たちに見守られながら、『世界共産党のテーマ』をなんとか踊りきった。
「なかなか上手いじゃねぇか。調教のたまものだな」
碇が間合いを詰めてきた。射程距離に入った瞬間、いきなりわたしのおっぱいを鷲掴みにする。堰を切ったように三人も続いた。八つの手が独立した生き物のように蠢きながら、剥き出しの脂肪の塊を撫で、押し、潰し、捏ね、捻る。彼らの手つきは執拗で、乱暴だ。
「あー、くそっ。相葉ちゃんとやりたいなぁ。頼んだら一発やらせてくんないかな。ぜってー淫乱だぜ。大人しそうに見えて性欲が強いタイプだよ、あの女は」
「そういえば、いつだったかな。胸元が開いた服を着てきたこと、なかったか?」
「あー、あったな、なんか。屈んだときに谷間ががっつり見えて、マジ勃ったわ、あんときは。毎日ああいう恰好してくれたら最高なのに」
「世界史の授業、週二回しかねーけどな」
「今日もきつそうなスカート穿いてたよな。あんなもん見せられたら、授業に集中したくても集中できないっつうか」
「立ちバックで犯してぇなぁ」
「相葉ちゃんって胸のサイズいくつだっけ」
「さあ。FとかGとか、そのくらいじゃね」
「ああ、くっそー。マジでやりてぇ。乳が貧相で顔もブスな等々力なんかじゃなくてよぉ」
「男いんのかな。毎日やりまくってんのかな」
「いるだろ。いない方が不自然っつーか」
「レズビアンっていう可能性もあるぜ。最初はルームシェアをしているだけの関係だったはずが、いつしか単なるルームメイトを越えた仲に……」
「どっちにせよチャンスねーじゃん。アホくさ」
「『右傾化する日本』に犯られて殺られる前に犯っちゃおうか、なんて」
「ああ、あの殺人鬼ね。レイプしたあとで首切るんだっけ」
「刺すんじゃなかったか」
「どっちでもいいよ。どのみち殺すんだから」
「どっかに落ちてねぇかな。警察に捕まらずに女をやりまくれるマニュアル」
「等々力をやっちまえばいいじゃん」
「こっちから願い下げだよ、こんなブス」
チャイムが鳴るまで、わたしは一方的におっぱいを凌辱され続けた。
ようするに、いつも通りということだ。
* * *
「あら」
男子トイレから出ると、相葉先生にばったりと出くわした。
「もう授業始まってるよー。急いで、急いで」
「分かりました」
歩み去ろうとした瞬間、気がつく。
「相葉先生。口元に……」
「えっ?」
「口元に赤いものがついています。右の方に」
先生は問題の部位に指先を宛がう。柔和な表情が一瞬揺らいだが、手を下ろしたときには元に戻っている。赤いものは手品のように消失していて、わずかな痕跡すらも認められない。
「多分、お菓子の食べかすね。休み時間にこっそり食べたから、そのときについたみたい。教えてくれてありがとう」
教師が生徒に対してするにしては慇懃に頭を下げる。わたしは会釈でそれに応じる。
「あ、でも、授業に遅れるのは感心しないかな。さ、急いで」
「失礼します」
わたしは先生に背を向けて歩き出した。
相葉先生はその場に佇み、遠ざかるわたしの後ろ姿を見送っている。肩越しに振り返ってこの目で確認するまでもなく、そうしていると分かるくらいに、ひしひしと視線を感じる。
先生はなぜ、わたしが男子トイレから出てきたことを追及しなかったのだろう?
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