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証言と考察⑤
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「……俺、今回の件で全然役に立っていないですよね」
会話の切れ目に遼がつぶやいた。
言葉をやりとりしているさなかもそうだったが、声に少し元気がない。視線の方向は草太朗ではなく、自らのつま先だ。
「美咲のおばさんだって、俺じゃなくて草太朗さんのほうばかり見て話していましたもんね。十六歳の高校生って、大人から見るとそんなに頼りないものなんでしょうか」
「頼りになる・ならないの問題じゃなくて、依頼をこなす人間が僕だから、僕を見ながら話す時間が長かっただけだと思うよ。気に留める必要はないんじゃないかな」
慰める調子が出すぎないように注意を払いながら、草太朗は言葉を返す。
「遼くんはそう言うけど、美咲ちゃんのお母さん、遼くんにも結構注目していたよ。遼くんのリアクションにもしっかりと注目してた」
「無理にいいですよ、慰めなんて」
「事実を言っているだけだよ。どういうことかというとね、美咲ちゃんのお母さんにとって、切言屋を名乗っている僕は赤の他人だけど、遼くんは娘の幼なじみで、大親友なわけでしょ。ようするに、僕と比べてはるかに信頼が置ける人間だ。だから、僕の発言に対する遼くんのリアクションを見て、僕が信頼できる人間かどうかを判断しようとしていたんだと思う。美咲ちゃんのお母さんが話しかける相手は主に僕だったかもしれないけど、遼くんのこともしっかり見ていたよ。ちゃんと見ていた」
遼はゆっくりと顔を上げた。目をしばたたかせながら、草太朗の横顔を食い入るように見つめる。
「遼くんは以前に一度、美咲ちゃんのご両親から美咲ちゃんのことを相談されたんだよね。同じ話をまた聞くとなると、どんなに大切な話だとしても集中力を保つのが難しいものだけど、遼くんはすごく真剣に聞いていたよね。ただ座っているだけじゃなくて、とても真剣に僕と美咲ちゃんのお母さんとの対話を聞いてくれた。お母さんに宛てた僕の発言に対して、僕の横顔を見つめながら相槌を打つとかして。武元草太朗は信頼できる人間だってお母さんが納得したのは、遼くんのそういう態度が決め手になったんだと思うよ」
「……そうでしょか」
「そうだよ。さり気なく観察していた僕が言うんだから、絶対に間違いない。僕は仕事柄そういうのが得意で、人と話しながらでもこなせる人間だからね」
「つまり僕は役に立った、と」
「立ったよ。むちゃくちゃ立った。
そもそも、遼くんが貼り紙を見てうちのドアをノックしていなければ、こうして二人で夜道を歩く今はなかったわけだからね。『説得交渉承ります』だなんて言っても、実際にどんな商売をやっているかは分かったものじゃないのに、勇気を出してノックしてくれた。
遼くんの働きは素晴らしい! 申し分ないよ。だから、胸を張ろうぜ。堂々と胸を張ろう。……ね?」
遼と目を合わせ、緩みきった笑みを浮かべてみせる。
遼の唇が綻んだ。それに少し遅れて、瞳にも笑みが波及する。若干のぎこちなさを残しながらも、その要素のおかげでかえって少年らしい瑞々しさを強く感じさせる、魅力的なほほ笑みだ。
やっぱり、遼くんは笑顔のほうが断然似合っている。
こんな笑顔を何度も、何度でも見られるように、大人の僕ががんばらないと。
会話の切れ目に遼がつぶやいた。
言葉をやりとりしているさなかもそうだったが、声に少し元気がない。視線の方向は草太朗ではなく、自らのつま先だ。
「美咲のおばさんだって、俺じゃなくて草太朗さんのほうばかり見て話していましたもんね。十六歳の高校生って、大人から見るとそんなに頼りないものなんでしょうか」
「頼りになる・ならないの問題じゃなくて、依頼をこなす人間が僕だから、僕を見ながら話す時間が長かっただけだと思うよ。気に留める必要はないんじゃないかな」
慰める調子が出すぎないように注意を払いながら、草太朗は言葉を返す。
「遼くんはそう言うけど、美咲ちゃんのお母さん、遼くんにも結構注目していたよ。遼くんのリアクションにもしっかりと注目してた」
「無理にいいですよ、慰めなんて」
「事実を言っているだけだよ。どういうことかというとね、美咲ちゃんのお母さんにとって、切言屋を名乗っている僕は赤の他人だけど、遼くんは娘の幼なじみで、大親友なわけでしょ。ようするに、僕と比べてはるかに信頼が置ける人間だ。だから、僕の発言に対する遼くんのリアクションを見て、僕が信頼できる人間かどうかを判断しようとしていたんだと思う。美咲ちゃんのお母さんが話しかける相手は主に僕だったかもしれないけど、遼くんのこともしっかり見ていたよ。ちゃんと見ていた」
遼はゆっくりと顔を上げた。目をしばたたかせながら、草太朗の横顔を食い入るように見つめる。
「遼くんは以前に一度、美咲ちゃんのご両親から美咲ちゃんのことを相談されたんだよね。同じ話をまた聞くとなると、どんなに大切な話だとしても集中力を保つのが難しいものだけど、遼くんはすごく真剣に聞いていたよね。ただ座っているだけじゃなくて、とても真剣に僕と美咲ちゃんのお母さんとの対話を聞いてくれた。お母さんに宛てた僕の発言に対して、僕の横顔を見つめながら相槌を打つとかして。武元草太朗は信頼できる人間だってお母さんが納得したのは、遼くんのそういう態度が決め手になったんだと思うよ」
「……そうでしょか」
「そうだよ。さり気なく観察していた僕が言うんだから、絶対に間違いない。僕は仕事柄そういうのが得意で、人と話しながらでもこなせる人間だからね」
「つまり僕は役に立った、と」
「立ったよ。むちゃくちゃ立った。
そもそも、遼くんが貼り紙を見てうちのドアをノックしていなければ、こうして二人で夜道を歩く今はなかったわけだからね。『説得交渉承ります』だなんて言っても、実際にどんな商売をやっているかは分かったものじゃないのに、勇気を出してノックしてくれた。
遼くんの働きは素晴らしい! 申し分ないよ。だから、胸を張ろうぜ。堂々と胸を張ろう。……ね?」
遼と目を合わせ、緩みきった笑みを浮かべてみせる。
遼の唇が綻んだ。それに少し遅れて、瞳にも笑みが波及する。若干のぎこちなさを残しながらも、その要素のおかげでかえって少年らしい瑞々しさを強く感じさせる、魅力的なほほ笑みだ。
やっぱり、遼くんは笑顔のほうが断然似合っている。
こんな笑顔を何度も、何度でも見られるように、大人の僕ががんばらないと。
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