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美咲の言葉②
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でも実際に付き合ってみると、弥生ちゃんの態度とか言葉づかいは、第三者として眺めたときの彼女と比べると、ずっと優しかった。怖い人だと思っていたけど実際は、ということじゃなくて、私に対してだけ態度を変えているみたいなの。他の友だちと比べて、言動に明らかに優しさが感じられて。
たとえば、友だちがちょっと失礼なことを言ったりすると、弥生ちゃんはすぐに手を上げるのね。口で言い返すだけじゃなくて、言い返したあとで肩を小突く、みたいな。それから、もちろん親しい人間相手だからこそなんだけど、「死ね」とか「殺す」っていう言葉を平気で使うとか。
だけど私の場合は、少なくとも友だちになりたてのころは、そんなことは全然なかった。罵倒された記憶は、過去をどれだけ入念に探しても見つからない。たぶん、上品ではない言葉が無意識に出そうになったんだろうね。口にしかけた言葉をはっとしたように呑み込んだかと思うと、不自然なくらいにていねいな言葉づかいをする、なんてことが何度もあった。弥生ちゃん、明らかに私に気をつかってくれているの。
私なんかのために申し訳ないなっていう気持ちもあったし、そこまでして私と仲よくなってなんのメリットがあるんだろうって怪訝に思う気持ちもあった。
でも、私は友だちが少ないから、賑やかな弥生ちゃんたちと学校生活を送れる喜びのほうが圧倒的にまさっていた。私、小さいときからずっと近くにいた遼は例外だけど、それまでは自分と似たような性格の人とばかり付き合ってきたから、新鮮で。付き合いを重ねる中で、広い意味で強引で乱暴なところもあるけど、ほんとうは優しくて思いやりのある子なんだ、私に優しくしてくれるのはただそうしたいからであって、悪い企みを抱いているわけではないんだって、理解できたのも大きかったと思う。
ときどきクラスメイトから、「弱みでも握られてるの?」とか「いじめ?」とか、誤解されることもあった。だけど、対等な関係だということは、当事者である私たちが一番よく分かっている。だから、周りの人間からなにを言われても私は動じなかったし、弥生ちゃんもいちいち腹を立てないようにしていたみたい。時間が経つにつれてみんなも、歪んだ絆で結びついているわけではないことを理解してくれたみたいで、あれこれ言ってくることもなくなった。
弥生ちゃんたちのグループってファッションセンスがいい子が多いから、休日にかわいい服を売っているおしゃれなお店に連れていってもらったりとかして、毎日がとても充実していた。世界が確実に広がったし、大人になれたと思う。
たとえば、友だちがちょっと失礼なことを言ったりすると、弥生ちゃんはすぐに手を上げるのね。口で言い返すだけじゃなくて、言い返したあとで肩を小突く、みたいな。それから、もちろん親しい人間相手だからこそなんだけど、「死ね」とか「殺す」っていう言葉を平気で使うとか。
だけど私の場合は、少なくとも友だちになりたてのころは、そんなことは全然なかった。罵倒された記憶は、過去をどれだけ入念に探しても見つからない。たぶん、上品ではない言葉が無意識に出そうになったんだろうね。口にしかけた言葉をはっとしたように呑み込んだかと思うと、不自然なくらいにていねいな言葉づかいをする、なんてことが何度もあった。弥生ちゃん、明らかに私に気をつかってくれているの。
私なんかのために申し訳ないなっていう気持ちもあったし、そこまでして私と仲よくなってなんのメリットがあるんだろうって怪訝に思う気持ちもあった。
でも、私は友だちが少ないから、賑やかな弥生ちゃんたちと学校生活を送れる喜びのほうが圧倒的にまさっていた。私、小さいときからずっと近くにいた遼は例外だけど、それまでは自分と似たような性格の人とばかり付き合ってきたから、新鮮で。付き合いを重ねる中で、広い意味で強引で乱暴なところもあるけど、ほんとうは優しくて思いやりのある子なんだ、私に優しくしてくれるのはただそうしたいからであって、悪い企みを抱いているわけではないんだって、理解できたのも大きかったと思う。
ときどきクラスメイトから、「弱みでも握られてるの?」とか「いじめ?」とか、誤解されることもあった。だけど、対等な関係だということは、当事者である私たちが一番よく分かっている。だから、周りの人間からなにを言われても私は動じなかったし、弥生ちゃんもいちいち腹を立てないようにしていたみたい。時間が経つにつれてみんなも、歪んだ絆で結びついているわけではないことを理解してくれたみたいで、あれこれ言ってくることもなくなった。
弥生ちゃんたちのグループってファッションセンスがいい子が多いから、休日にかわいい服を売っているおしゃれなお店に連れていってもらったりとかして、毎日がとても充実していた。世界が確実に広がったし、大人になれたと思う。
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