56 / 77
徳川埋蔵金の発掘
しおりを挟む
道をぶらぶらと歩いている最中、急に友人が、
「埋蔵金発掘しに行こうぜ。徳川埋蔵金」
などと言い出したものだから、わたしはたまげた。確かにわたしたちは道をぶらぶらと歩くほど暇を持て余しているが、まさか徳川埋蔵金の発掘とは。
「別にいいけど、埋蔵金なんてどこに埋まってるんだよ」
「正確には分からないけど、多分、この近くにあると思う」
「この近くって、お前、ここは四国だぜ。徳川埋蔵金なんだから、東京か、愛知か、どちらかじゃないのか」
「阿呆。徳川家康は天下統一を果たしたんだぜ。全国各地に埋蔵金が埋まっているに決まっているだろう」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
「でも、埋まっている正確な場所は分からないんだろう。どうやって見つけるんだ?」
「阿呆。探している人間が『ここにある』と思った場所に決まっているだろう。そんなことも分からないのか」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
道中、友人は徳川埋蔵金についてではなく、先週末にマッサージ店でマッサージを受けた時の話をした。そこは簡易な性的なサービスも行う店だったのだが、サービスがマッサージのみの店に行きたかったが、入ってみるといかがわしい店だった、ではなく、友人は最初から性的なサービスも込みのマッサージが目的でその店を訪れたという。
友人曰く、その店では焦らしのテクニックを効果的に駆使したらしい。初めから店員が脱いだり、客の股間を触ったりするのではなく、徐々に脱いでいき、徐々にマッサージする箇所を股間に近づけていったのだそうだ。
友人は自らが受けたマッサージの模様を、マッサージ室に入った場面から順に語り始めた。臨場感溢れる語り口だったが、友人は致命的なミスを犯していた。詳細に語りすぎたのだ。あまりにも細かな部分まで語ったため、必然に話は冗長になった。わたしは次第に退屈になってきた。
必死にあくびを噛み殺していると、友人の足が止まった。目の前には薬屋があった。いかにも昭和という感じの、古めかしい、掘立小屋に近い造りの建物だ。
「入ろうぜ。埋蔵金発掘に役立つものが売っているかもしれない」
友人にしては的外れな発言だと思ったが、退屈から逃れたい一心で、後に続いて入店する。
店内は薄暗く、埃っぽく、狭かった。中央の棚には液体や粉末が入った小瓶が、内壁に沿って設えられた棚には武器の類が、それぞれ陳列されている。
「へえ。薬だけじゃなくて、武器まで売っているのか。面白いなぁ」
「レアものが多いな。図鑑でした見たことない武器ばかりだ」
わたしも友人も、薬よりも武器を熱心に見た。個性的な形状のものが多く、大いに目を楽しませてくれたが、武器というよりは拷問器具に属する商品が多いのが少し気になる。
「一つ買いたいものがあるんだが、店員がいないなぁ」
レジカウンターの前まで来たタイミングで友人が呟いた。カウンターの内側は無人だった。
「仕方ない。埋蔵金を探しに行こう」
店を出た直後、友人の服の内側からなにかが滑り落ちた。「あ」と小さく呟き、落ちたものを素早く拾い上げ、再び服の内側へ。
わたしたちは黙して見つめ合う。
不意に意味深に微笑んだかと思うと、友人はわたしに背を向け、全速力で走り始めた。
「おい、待て! さっき落としたものはなんだ!」
わたしは友人を追いかけた。友人は足を止めるどころか、ぐんぐん加速する。距離は見る見る開いていく。
友人が盗んだのは、武器なのか、薬なのか。盗んだか盗んでいないかよりも、そちらの方が問題に思えた。
「埋蔵金発掘しに行こうぜ。徳川埋蔵金」
などと言い出したものだから、わたしはたまげた。確かにわたしたちは道をぶらぶらと歩くほど暇を持て余しているが、まさか徳川埋蔵金の発掘とは。
「別にいいけど、埋蔵金なんてどこに埋まってるんだよ」
「正確には分からないけど、多分、この近くにあると思う」
「この近くって、お前、ここは四国だぜ。徳川埋蔵金なんだから、東京か、愛知か、どちらかじゃないのか」
「阿呆。徳川家康は天下統一を果たしたんだぜ。全国各地に埋蔵金が埋まっているに決まっているだろう」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
「でも、埋まっている正確な場所は分からないんだろう。どうやって見つけるんだ?」
「阿呆。探している人間が『ここにある』と思った場所に決まっているだろう。そんなことも分からないのか」
なるほど。流石、友人は頭がいい。
道中、友人は徳川埋蔵金についてではなく、先週末にマッサージ店でマッサージを受けた時の話をした。そこは簡易な性的なサービスも行う店だったのだが、サービスがマッサージのみの店に行きたかったが、入ってみるといかがわしい店だった、ではなく、友人は最初から性的なサービスも込みのマッサージが目的でその店を訪れたという。
友人曰く、その店では焦らしのテクニックを効果的に駆使したらしい。初めから店員が脱いだり、客の股間を触ったりするのではなく、徐々に脱いでいき、徐々にマッサージする箇所を股間に近づけていったのだそうだ。
友人は自らが受けたマッサージの模様を、マッサージ室に入った場面から順に語り始めた。臨場感溢れる語り口だったが、友人は致命的なミスを犯していた。詳細に語りすぎたのだ。あまりにも細かな部分まで語ったため、必然に話は冗長になった。わたしは次第に退屈になってきた。
必死にあくびを噛み殺していると、友人の足が止まった。目の前には薬屋があった。いかにも昭和という感じの、古めかしい、掘立小屋に近い造りの建物だ。
「入ろうぜ。埋蔵金発掘に役立つものが売っているかもしれない」
友人にしては的外れな発言だと思ったが、退屈から逃れたい一心で、後に続いて入店する。
店内は薄暗く、埃っぽく、狭かった。中央の棚には液体や粉末が入った小瓶が、内壁に沿って設えられた棚には武器の類が、それぞれ陳列されている。
「へえ。薬だけじゃなくて、武器まで売っているのか。面白いなぁ」
「レアものが多いな。図鑑でした見たことない武器ばかりだ」
わたしも友人も、薬よりも武器を熱心に見た。個性的な形状のものが多く、大いに目を楽しませてくれたが、武器というよりは拷問器具に属する商品が多いのが少し気になる。
「一つ買いたいものがあるんだが、店員がいないなぁ」
レジカウンターの前まで来たタイミングで友人が呟いた。カウンターの内側は無人だった。
「仕方ない。埋蔵金を探しに行こう」
店を出た直後、友人の服の内側からなにかが滑り落ちた。「あ」と小さく呟き、落ちたものを素早く拾い上げ、再び服の内側へ。
わたしたちは黙して見つめ合う。
不意に意味深に微笑んだかと思うと、友人はわたしに背を向け、全速力で走り始めた。
「おい、待て! さっき落としたものはなんだ!」
わたしは友人を追いかけた。友人は足を止めるどころか、ぐんぐん加速する。距離は見る見る開いていく。
友人が盗んだのは、武器なのか、薬なのか。盗んだか盗んでいないかよりも、そちらの方が問題に思えた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる