わたしの流れ方

阿波野治

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和歌山県のゴミ

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 政府の決定により、日本中の全てのゴミは和歌山県に集約されることになった。
 なぜ和歌山なのか?
 和歌山県民だけではなく、和歌山に縁もゆかりもない人々も首を傾げたに違いない。なにを隠そう、私もその一人だ。
 私が抱く和歌山のイメージは、やはり蜜柑。後は自然が豊かということくらいで、詳しくは知らない、というのが正直なところだ。人口が少ないから、ゴミの一時保管場所として適当という判断が下されたのだろうか? しかし、和歌山よりも人口が少ない地域ならば、日本各地に他にいくらでもある。
 あまりにも気になったので、思い切って、政府に電話をしてみることにした。イエローページに電話番号が載っていたので、その番号にかける。
 コール音が鳴り出した瞬間、縁もゆかりもない和歌山のことでわざわざ電話をするまでもないのでは、という思いが胸を過ぎったが、切るよりも先に繋がった。
「はい。こちら政府ですが」
 応対に出たのは、笑いを堪えているかのような中年男性の声。
「先日政府が決定した、和歌山のゴミの件でお聞きしたいのですが」
「和歌山のゴミの件、とは、どの件のことでしょうか」
「先日政府が決定した、日本中のゴミを和歌山県に集約する件のことです」
「ああ、それね。その件なら、メールでの問い合わせ以外は受け付けていません。お手数ですがメールでお問い合わせ願えますか」
「え、でも、メールアドレスは……」
「インターネットで調べてください。メールアドレスが載っているので」
「ネットで調べれば分かるんですか」
「分かるはずがないでしょう。だって、載っていないんですから」
「えっ?」
「政府の公式ウェブサイトならありますが、メールアドレスは公表していませんよ。バカな文章を送りつけてくるアホがいるので」
「じゃあ、なんでメールアドレスが載っているって言ったんですか」
「『政府の』メールアドレスとは一言も言っていませんよ」
「そんな……。じゃあ、和歌山のゴミの件は、どこに訴えればいいんですか? 電話での問い合わせは受け付けていないんですよね?」
「ネットで見つけた、適当なアドレス宛に訴えればいいんじゃないですか。無視されるか、送る相手を間違っていると指摘されるか、そのどちらかでしょうがね」
「本当に公表していないんですか?」
「探してみればいいじゃないですか。ま、絶対に見つかりませんけどね。だって公表してないんですから」
「では、やはり電話で……」
「尋ねるのは自由ですが、あなたが尋ねた瞬間に通話を切りますからね。何度かけてきたとしても、そのたびに切って差し上げます」
「政府の決定に不満がある人は、泣き寝入りするしかないんですか? 和歌山県民の多くは、この決定に納得していないんじゃないですか?」
「どなたも政府まで押しかけてこないということは、不満に思っている方はいらっしゃらないということじゃないですか。ま、仮に押しかけてきたとしても、電話とは違って相手にすらしませんけどね」
「酷い……。これが民主主義国家の……」
「民主主義も何も、当たり前じゃないですか。あなた、和歌山県の一番の特産品が何か、言ってごらんなさい」
「蜜柑、ですか」
「そう、蜜柑。蜜柑ですよ、蜜柑。あなたね、つまり、そういうことですよ」
 通話が切られた。
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