5 / 129
本編
第004話 大戦のあとにもたらされた神様の依頼④
しおりを挟む
穏やかな気持ちで朝を迎え、奇跡的とも言える確率で全員揃っての朝食を終えた矢先。
「さて、それじゃあ食後の時間をまったりと過ごそうか」と上機嫌で食器を片付け終えたツグナたちの耳に、突如として「バタン!」と豪快に開け放たれる扉の音が届けられる。
「うん? ――一体なんなん……」
穏やかな気分を掻き乱すその聞こえてきた音に、わずかに眉根を寄せてピクリと反応したツグナが声を漏らす。そして玄関に続く扉の方へと目を向けたその時、
「ツ、ツ、ツ、ツゥ~~~グナくぅ~~~ん! た、た、た、大変なんだよ! このままじゃあボク、神様の座を降ろされるかもしれないんだ! 割とマジで助けてよぉ~!」
泣きそうな――いや、実際に目の端に涙を溜めている神様であるディエヴスが、リビングの扉を勢いよく開けてツグナに飛び込んでくる。
それを、ツグナはスッと席から立ち、ディエヴスが彼の胸に飛び込む――寸前で避けた。
「ぐべっ!?」
するりと脇を抜けるように綺麗に避けられたディエヴスは、そのまま床に強かに顔を打ってしまう。
「くぅ~~っ! な、なんでそこで避けるかなぁ!」
倒れたままツグナに顔だけ向けたディエヴスは、わずかに赤らむ鼻をさすりながら凄む。幸い鼻血が出るほどの事態には至らなかったものの、なかなか消えないその鼻の赤みが衝撃の強さを暗に物語っていた。
「いや、だって危ないし」
「避けなくても受け止められるよね! キミのステータスなら!」
しかし、ツグナも慣れたもので、ディエヴスの言葉などサラリと聞き流し、むしろ床に転がった神様の不様な姿に、わずかに肩を揺らして笑いを堪える。
「あっはっは。これがホントの神回避ってか?」
「意味全然違うから! ……ったく、もう。くだらないこと言ってないで、真面目に聞いてよね!」
ガバリと起き上がったディエヴスは、頬を膨らませて不快感を露わにする。一方のツグナは、「はいはい」と喚くディエヴスを宥めつつ席に座るように促した。
「それで? いきなり神様がウチに突撃かましてどうしたんだよ? 何やら『神の座を降ろされる』って穏やかじゃないことを言ってたみたいだけど?」
ツグナはディエヴスと真向かいの席に腰を下ろすと、シルヴィが淹れてくれた紅茶を流し込みながら訊ねる。
「そ、そうなんだよ! このままじゃあ、ボクは神の座から降ろされ、新たに着任する神の小間使いとして働かなくてはならなくなるんだよ……」
「いや、それのどこが悪いんだ? 神様って基本見るだけの存在なんだろ? 俺たちにとって神様ってのは雲の上の存在だ。神様が交代しようが何しようが、直接は影響ないだろ。それに、小間使いとはいえ、仕事がある分、日々の生活にメリハリが出来ていいんじゃないのか?」
ふとツグナはこの地に転生した時のことを脳裏に思い出しながら訊ねる。地球で「神様の手違い」によりその短い生涯を閉じた少年――佐伯継那は、今目の前に座る神であるディエヴスの力によって今いる世界に転生を果たした。
その際、神様は「数多くの世界を見ているだけの存在だ」と聞かされる。神は管理する世界に対して干渉はできない。幾百ともある世界を、ただ見ているだけの存在なのだと聞かされたツグナは、その寂しい存在である彼に「ディエヴス」の名を送った。
「そうだよ。キミの言う通り、神はただ世界を見ているだけの存在さ。仮に交代だけなら話は簡単なんだけれど、今回の事態はいよいよもってマズイんだよ……」
「はぁ? ちょっと待て、未だ要領が――」
ふと顔を下に向けたディエヴスは、やおら親指の爪を噛み始めると、急にガリガリと頭を掻き出した。その切迫詰まったただならぬ様子に、ツグナは「これはヤバイ」と声をかけようとした時。
「だから、キミに行って欲しいんだ――地球に」
呼び止めようとした声に被さるようにして発せられたディエヴスの言葉に、その場にいた全員の声が消えた。
「さて、それじゃあ食後の時間をまったりと過ごそうか」と上機嫌で食器を片付け終えたツグナたちの耳に、突如として「バタン!」と豪快に開け放たれる扉の音が届けられる。
「うん? ――一体なんなん……」
穏やかな気分を掻き乱すその聞こえてきた音に、わずかに眉根を寄せてピクリと反応したツグナが声を漏らす。そして玄関に続く扉の方へと目を向けたその時、
「ツ、ツ、ツ、ツゥ~~~グナくぅ~~~ん! た、た、た、大変なんだよ! このままじゃあボク、神様の座を降ろされるかもしれないんだ! 割とマジで助けてよぉ~!」
泣きそうな――いや、実際に目の端に涙を溜めている神様であるディエヴスが、リビングの扉を勢いよく開けてツグナに飛び込んでくる。
それを、ツグナはスッと席から立ち、ディエヴスが彼の胸に飛び込む――寸前で避けた。
「ぐべっ!?」
するりと脇を抜けるように綺麗に避けられたディエヴスは、そのまま床に強かに顔を打ってしまう。
「くぅ~~っ! な、なんでそこで避けるかなぁ!」
倒れたままツグナに顔だけ向けたディエヴスは、わずかに赤らむ鼻をさすりながら凄む。幸い鼻血が出るほどの事態には至らなかったものの、なかなか消えないその鼻の赤みが衝撃の強さを暗に物語っていた。
「いや、だって危ないし」
「避けなくても受け止められるよね! キミのステータスなら!」
しかし、ツグナも慣れたもので、ディエヴスの言葉などサラリと聞き流し、むしろ床に転がった神様の不様な姿に、わずかに肩を揺らして笑いを堪える。
「あっはっは。これがホントの神回避ってか?」
「意味全然違うから! ……ったく、もう。くだらないこと言ってないで、真面目に聞いてよね!」
ガバリと起き上がったディエヴスは、頬を膨らませて不快感を露わにする。一方のツグナは、「はいはい」と喚くディエヴスを宥めつつ席に座るように促した。
「それで? いきなり神様がウチに突撃かましてどうしたんだよ? 何やら『神の座を降ろされる』って穏やかじゃないことを言ってたみたいだけど?」
ツグナはディエヴスと真向かいの席に腰を下ろすと、シルヴィが淹れてくれた紅茶を流し込みながら訊ねる。
「そ、そうなんだよ! このままじゃあ、ボクは神の座から降ろされ、新たに着任する神の小間使いとして働かなくてはならなくなるんだよ……」
「いや、それのどこが悪いんだ? 神様って基本見るだけの存在なんだろ? 俺たちにとって神様ってのは雲の上の存在だ。神様が交代しようが何しようが、直接は影響ないだろ。それに、小間使いとはいえ、仕事がある分、日々の生活にメリハリが出来ていいんじゃないのか?」
ふとツグナはこの地に転生した時のことを脳裏に思い出しながら訊ねる。地球で「神様の手違い」によりその短い生涯を閉じた少年――佐伯継那は、今目の前に座る神であるディエヴスの力によって今いる世界に転生を果たした。
その際、神様は「数多くの世界を見ているだけの存在だ」と聞かされる。神は管理する世界に対して干渉はできない。幾百ともある世界を、ただ見ているだけの存在なのだと聞かされたツグナは、その寂しい存在である彼に「ディエヴス」の名を送った。
「そうだよ。キミの言う通り、神はただ世界を見ているだけの存在さ。仮に交代だけなら話は簡単なんだけれど、今回の事態はいよいよもってマズイんだよ……」
「はぁ? ちょっと待て、未だ要領が――」
ふと顔を下に向けたディエヴスは、やおら親指の爪を噛み始めると、急にガリガリと頭を掻き出した。その切迫詰まったただならぬ様子に、ツグナは「これはヤバイ」と声をかけようとした時。
「だから、キミに行って欲しいんだ――地球に」
呼び止めようとした声に被さるようにして発せられたディエヴスの言葉に、その場にいた全員の声が消えた。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?
サクラ近衛将監
ファンタジー
会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。
睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?
そんな男の二重生活の冒険譚です。
毎週水曜日午後8時に投稿予定です。
才能は流星魔法
神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。
そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。
流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。
ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。
井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。
山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。
井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。
二日に一度、18時に更新します。
カクヨムにも同時投稿しています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる