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本編
第010話 下準備は抜かりなく③
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「えへへ、ツグ兄とお揃いかぁ~」
「ふむ、とんだ駄目神かと思いましたが、どうやら素晴らしいアイデアの一つは捻り出せるみたいですね。さすが神様」
「ちょっと! それ、褒めてるんだよね! ね!」
「えぇ、もちろん。他意ないですよ」
これまでのディエヴスの態度にフラストレーションが溜まっていたのか、リーナはしれっと毒を吐きつつ彼の指摘をサラリと躱す。
「えぇっと、最後は学校か。これはシルヴィとリリアを除いたメンバーが対象なんだが、この神様の要望により、なんと学校に通うことになった。これは俺もこの中に入ってる」
「えぇっ!? 学校って……あの学校だよね?」
ソアラの驚く声に、ツグナは「学校に『あの』とか『この』とこないから!」という突っ込みの言葉をかける余裕もなく、ただ声のトーンを落として呟く。
「それは……私たちが学生になるということかしら? でも何故?」
眉根を寄せて問いかけるキリアに、ツグナに代わってディエヴスが話を続ける。
「それはボクから説明するよ。さっきも言ったと思うけど、地球から異世界に召喚される人間は、十代――ティーンエイジャーが多いんだ。その年齢層をさらに調べると、特に15,16歳の子が多いことご分かった。また、召喚された場所を確認すると、どうやら学校にいる時に召喚術式が発動するケースが多い傾向にあることも分かったんだよ。もちろんこれに当てはまらない事例もあるけどね」
「それで学校ですか……要は私たちに潜入調査をしろ、ということですか」
「まぁ端的に言えばね」
リーナの発言に、ディエヴスは頷きながらそれを肯定する。
「でもさぁ、私たちって……もう学生ってのが通用するとは思えないんだけど?」
ソアラが不意に自分の両手を見ながら呟く。キリアやシルヴィ、リリアといった妖精族は、長命種たるその種族特性故に数年ではパッと見の外見的変化は見出しづらい。しかし、ソアラやリーナ、アリアといった獣人族や人族は、数年の間に背が伸びたり体格が変化したりなど外見的変化が大きい。現にソアラもツグナと出会った頃より頭一つ分は背が伸びているのだ。
そんな自分に、学生としての生活が満足に送れるはずもないだろうというのがソアラの意見でもあった。
「うん。それはボクも重々承知してるさ。だから――向こうに送る際にちょうどその頃の年齢に戻してあげるよ」
「あらっ? でも、外見を変えるなら、別にそれくらいの年齢の容姿に合わせればいいんじゃない? わざわざ実年齢まで戻す必要性が感じられないけど?」
ディエヴスの発言に、隣で聞いていたキリアがもっともな質問を投げかける。だが、ディエヴスは彼女の問いかけに対し、頭を横に振って答える。
「言ったでしょ、向こうには魔法という技術がないって。それは何故だか分かるかい? それは、魔力という、この世界の魔法を行使する上で重要なファクターがほぼ無いに等しいからなんだよ。後でまた説明はするけれど、キミたちの外見の偽装は魔道具で行う。この魔道具は同時に戦闘用の装備に換装できるような仕様にしている。これはもしものための保険のようなものなんだけど、正直このギミックを組み込むだけでギリギリなんだ。さっき、外見の変更内容をツグナから聞いたと思うけど、顔のパーツの一部を隠したり、色味を変えたりする程度だったでしょ? 外見を全部変えようとすると、たちまちキャパオーバーになるんだよ。時折こっちに来て魔力を補充してもらえてやっと、という具合なんだよ」
「そうなのね……やっぱり、魔力のない世界って色々不都合なことご多いのね」
ディエヴスの説明を受け、キリアが納得顔で頷きながら率直な感想を口にする。
「まぁ確かにキリアの言う通り、色々不便だなーとは思うけどね。でもさぁ……それってつまり――若返る……ってこと、だよね?」
「「「――――っ!?」」」
ソアラの言葉に、リーナとアリア、キリアが目を見開いて驚く。一方、問われたディエヴスは「さすがこういうところに反応するのは女性ならではなのかな?」と思い、苦笑しながら答える。
「有り体に言えばね。ただし、戻すに当たってステータスの何割かは失うことになるよ。ツグナは『亜神』っていう神が付く種族だからステータスの減少は無いけど……キミたちは違うでしょ? あくまでもボクが施すのは肉体的な若返りだけ。こればかりは対価無しには出来ないんだよ」
「ステータスと引き換え……ですか。しかし――」
発言を聞いたリーナが、軽く握った手を顎に当ててブツブツと呟きながら思考を巡らせる。
ここまで苦労して伸ばした各種のステータスは、まさに自分の努力の証たるものだ。それを何割かとはいえ、失うのは惜しいという気持ちがあるのは否めない。
(うぅ……悩ましいわね。若返って兄さんと一緒に……というのは大変魅力的だし……)
一人考え込むリーナをよそに、今度は妹のアリアがディエヴスに訊ねる。
「ステータスと引き換えに若返る……ってのは分かったけど、それによる影響はないの?」
「肉体的な影響は無い、と断言するよ。そこは神様としてのボクの力を信じてもらうしかないけどね。ただ、向こうへ行ってしばらくは、ステータス減少に伴う違和感はあるとは思うよ? それでも、今までは普通にできてたことが、少し時間がかかると思うくらいだろうけど。その辺りは個人差もあるから、何とも言えないよね。慣れてもらうしかないよ、残念ながらね」
「そっか。まぁ確かにどう感じるかは人によるもんね」
「私とアリアは前衛だから身体をよく動かしてたもんねぇ……どんな感じになるのかイマイチ分からないけど、そこは仕方がないよね」
アリアの言葉に、ソアラも頷きながら賛同する。
「日常生活では支障はないはずだよ。後は慣れの問題だね」
「なるほど。個人差はあれど、肉体的な影響はない、と。それならまぁ……問題ないですね」
半ば場の空気に押されながらも、最終的にはリーナもこの条件を飲み、この日の話し合いは終わったのだった。
「ふむ、とんだ駄目神かと思いましたが、どうやら素晴らしいアイデアの一つは捻り出せるみたいですね。さすが神様」
「ちょっと! それ、褒めてるんだよね! ね!」
「えぇ、もちろん。他意ないですよ」
これまでのディエヴスの態度にフラストレーションが溜まっていたのか、リーナはしれっと毒を吐きつつ彼の指摘をサラリと躱す。
「えぇっと、最後は学校か。これはシルヴィとリリアを除いたメンバーが対象なんだが、この神様の要望により、なんと学校に通うことになった。これは俺もこの中に入ってる」
「えぇっ!? 学校って……あの学校だよね?」
ソアラの驚く声に、ツグナは「学校に『あの』とか『この』とこないから!」という突っ込みの言葉をかける余裕もなく、ただ声のトーンを落として呟く。
「それは……私たちが学生になるということかしら? でも何故?」
眉根を寄せて問いかけるキリアに、ツグナに代わってディエヴスが話を続ける。
「それはボクから説明するよ。さっきも言ったと思うけど、地球から異世界に召喚される人間は、十代――ティーンエイジャーが多いんだ。その年齢層をさらに調べると、特に15,16歳の子が多いことご分かった。また、召喚された場所を確認すると、どうやら学校にいる時に召喚術式が発動するケースが多い傾向にあることも分かったんだよ。もちろんこれに当てはまらない事例もあるけどね」
「それで学校ですか……要は私たちに潜入調査をしろ、ということですか」
「まぁ端的に言えばね」
リーナの発言に、ディエヴスは頷きながらそれを肯定する。
「でもさぁ、私たちって……もう学生ってのが通用するとは思えないんだけど?」
ソアラが不意に自分の両手を見ながら呟く。キリアやシルヴィ、リリアといった妖精族は、長命種たるその種族特性故に数年ではパッと見の外見的変化は見出しづらい。しかし、ソアラやリーナ、アリアといった獣人族や人族は、数年の間に背が伸びたり体格が変化したりなど外見的変化が大きい。現にソアラもツグナと出会った頃より頭一つ分は背が伸びているのだ。
そんな自分に、学生としての生活が満足に送れるはずもないだろうというのがソアラの意見でもあった。
「うん。それはボクも重々承知してるさ。だから――向こうに送る際にちょうどその頃の年齢に戻してあげるよ」
「あらっ? でも、外見を変えるなら、別にそれくらいの年齢の容姿に合わせればいいんじゃない? わざわざ実年齢まで戻す必要性が感じられないけど?」
ディエヴスの発言に、隣で聞いていたキリアがもっともな質問を投げかける。だが、ディエヴスは彼女の問いかけに対し、頭を横に振って答える。
「言ったでしょ、向こうには魔法という技術がないって。それは何故だか分かるかい? それは、魔力という、この世界の魔法を行使する上で重要なファクターがほぼ無いに等しいからなんだよ。後でまた説明はするけれど、キミたちの外見の偽装は魔道具で行う。この魔道具は同時に戦闘用の装備に換装できるような仕様にしている。これはもしものための保険のようなものなんだけど、正直このギミックを組み込むだけでギリギリなんだ。さっき、外見の変更内容をツグナから聞いたと思うけど、顔のパーツの一部を隠したり、色味を変えたりする程度だったでしょ? 外見を全部変えようとすると、たちまちキャパオーバーになるんだよ。時折こっちに来て魔力を補充してもらえてやっと、という具合なんだよ」
「そうなのね……やっぱり、魔力のない世界って色々不都合なことご多いのね」
ディエヴスの説明を受け、キリアが納得顔で頷きながら率直な感想を口にする。
「まぁ確かにキリアの言う通り、色々不便だなーとは思うけどね。でもさぁ……それってつまり――若返る……ってこと、だよね?」
「「「――――っ!?」」」
ソアラの言葉に、リーナとアリア、キリアが目を見開いて驚く。一方、問われたディエヴスは「さすがこういうところに反応するのは女性ならではなのかな?」と思い、苦笑しながら答える。
「有り体に言えばね。ただし、戻すに当たってステータスの何割かは失うことになるよ。ツグナは『亜神』っていう神が付く種族だからステータスの減少は無いけど……キミたちは違うでしょ? あくまでもボクが施すのは肉体的な若返りだけ。こればかりは対価無しには出来ないんだよ」
「ステータスと引き換え……ですか。しかし――」
発言を聞いたリーナが、軽く握った手を顎に当ててブツブツと呟きながら思考を巡らせる。
ここまで苦労して伸ばした各種のステータスは、まさに自分の努力の証たるものだ。それを何割かとはいえ、失うのは惜しいという気持ちがあるのは否めない。
(うぅ……悩ましいわね。若返って兄さんと一緒に……というのは大変魅力的だし……)
一人考え込むリーナをよそに、今度は妹のアリアがディエヴスに訊ねる。
「ステータスと引き換えに若返る……ってのは分かったけど、それによる影響はないの?」
「肉体的な影響は無い、と断言するよ。そこは神様としてのボクの力を信じてもらうしかないけどね。ただ、向こうへ行ってしばらくは、ステータス減少に伴う違和感はあるとは思うよ? それでも、今までは普通にできてたことが、少し時間がかかると思うくらいだろうけど。その辺りは個人差もあるから、何とも言えないよね。慣れてもらうしかないよ、残念ながらね」
「そっか。まぁ確かにどう感じるかは人によるもんね」
「私とアリアは前衛だから身体をよく動かしてたもんねぇ……どんな感じになるのかイマイチ分からないけど、そこは仕方がないよね」
アリアの言葉に、ソアラも頷きながら賛同する。
「日常生活では支障はないはずだよ。後は慣れの問題だね」
「なるほど。個人差はあれど、肉体的な影響はない、と。それならまぁ……問題ないですね」
半ば場の空気に押されながらも、最終的にはリーナもこの条件を飲み、この日の話し合いは終わったのだった。
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