黒の創造召喚師 ―Closs over the world―

幾威空

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本編

第013話 界渡りの先②

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ゲートを潜った先に広がっていたのは、時代劇にでも出てくるような屋敷でした」

 などとどこかの物語の冒頭にでも出て来そうなフレーズが思い浮かんだツグナだったが、家の前で、しかもこんな大所帯で突っ立っているのは何かと具合が悪いと考え、その古めかしい木の扉を押し開ける。

 ――ギギィ と音を立てて押し開けたその先には、「どこかの老舗旅館か?」と見紛うほどの風格が漂う家がツグナたちを出迎えていた。

「ここ……なんだよね?」

 横合いからかけられた声に、チラリとツグナが見やると、そこには「纏装の指輪」の効果が発動し、ピンと立つ耳とふさふさの尻尾が消えたソアラがいる。門を潜った際にディエヴスが話していた「若返り」の効果が出たのか、背丈が低くなり、その顔つきに幼さが垣間見える。
 試しに異界の鑑定眼でステータスを確認すると、おおよそ2割くらい数値が減少していた。

「みたいだな。そもそも行き先を指定したのはあのちっこい神様ディエヴスだし、ジェスターが指定先を間違えたことはこれまでに無いしなぁ……」
「それもそうだねぇ……なら、ここであってるんじゃないかな? ツグ兄、とりあえず中に入ってみようよ」
 今度は逆側から黒髪黒目のポニーテイル姿となったアリアがスルリとツグナの腕を抱え「早く行こう」とせがむ。

「お、おい!? ったく、分かった分かった」
 アリアに引っ張られる形で家の扉の前に進んだツグナは、緊張した面持ちで手をかけた。

 カラカラ……と引き戸式の扉開けると、中から爽やかな木の香りが鼻腔を抜けていく。

「ふわああぁぁ……今まで住んでたログハウスの家とは趣きがだいぶ違うね」
「何かしら。厳かで凛とした佇まいね」
 ツグナの後ろから中の様子を見たソアラとキリアがポツリと感想を口にする。
「見た感じ、本当に日本家屋そのものって印象だな。っと、そうだ。中に入る時は靴脱いでからにしてくれよ?」
「ふむ……それはこの地の慣習なのか?」
 ツグナの言葉に、リリアが顎に手をあてがいつつ、物珍しそうに呟く。
「そうだよ。地球でも日本くらいじゃないかな? 珍しい慣習みたいだね」
「なるほど。ツグナが言うのなら仕方がない。ここは従うしかあるまい」
「助かるよ」
 先に上がったツグナに続き、リリアやシルヴィ、ソアラたちも靴を脱いで上がり、板張りの廊下を渡って奥の居間へと進む。

「へぇ……広いリビングだな」
 リビングと接するドアを開けたツグナは、その開放感のある部屋の造りにポロリと言葉を漏らす。
「わぁっ! 窓が大きい! 外の景色もいいね!」
「ふむ……この落ち着いた色調も私好みだな。これは快適に過ごせそうだ」
 続いて入って来た面々も、新たな家に好意的な印象を持ったようで、頬をわずかに緩ませながら嬉しそうに呟いている。

「キッチンも広いわね。収納もたっぷりで使い勝手が良さそうね。見たこともない道具が色々あるわね。どうやって使うのかしら……」
 普段から料理をするシルヴィは、リビングの奥にあるキッチンを早速チェックする。ツグナも軽くチェックしたが、冷蔵庫に食器類、調理道具など料理をするに必要そうな道具は一通り揃っていると思えた。
 ただし、食材がないので後で補充する必要はあるのだが。
(俺を含めて7人……結構な量の食材が必要なんだよなぁ……)
 パッと見る限り、冷蔵庫は大容量タイプのものだったが、ギッチギチに詰め込んでも一週間と経たずに空になるとツグナは頭の中で結果を弾き出す。
 見た目からは想像も出来ないが、メンバーの中でも特にアリアとソアラは大飯食らいなのだ。「食べたものは全てエネルギーに!」というスローガンがそのまま当てはまるように、パーティーの中でも前衛として動く彼女らは、突出して運動量が多い。

(……うん。こっちでは今まで以上にカロリーには気をつけるようにしよう)
「……うん? 何か言った、ツグナ?」
「ツグ兄、大丈夫?」
 そんなツグナの思いなど知る由もなく、二人は新しい家をあちこち見て回っていた。
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